第52話 海の魔獣と蒲焼き祭り
港の漁師小屋は、潮風にさらされて古びていた。
中に入ると、漁師たちが重い顔で集まっている。
漁師A「兄ちゃんら……ほんまに沖へ出る気なんか?」
漁師B「やめとき。あれは人間が勝てる相手やない」
太郎は椅子に座り、漁師の話を聞いた。
太郎「で、魔物ってどんなやつなん?」
漁師A「へびや。でっかいへびみたいな魔獣や。しかも──一匹やない。群れや」
漁師の声は震えていた。
漁師B「海面の下で、黒い影が何匹も……うねっとるんや。網は引きちぎられ、船底は削られ、帰ってこん船もある」
太郎「……海の主どころか、海の暴走族やな」
漁師A「暴走族どころやない! 海の極道や!」
太郎「なんで俺らが海の極道と戦わなアカンねん……」
オカン「極道でも海でも関係あらへん。しばけるもんは全部しばく、それが家訓や」
太郎「いつ家訓できたんや!!」
港に並ぶ船は、どれも小さな手漕ぎの小舟ばかりだった。
波に揺られ、今にも転覆しそうだ。
晴斗「これで沖出たら死ぬやろ」
玲奈「戦闘どころじゃありませんね……」
蒼真「忍術で補強しても沈むわ」
ひより「太郎くん……どうするの……?」
太郎「どうしようもないやろ……船がショボすぎるんや……」
オカン「太郎、船の設計図ならあるで」
太郎「は?」
オカン「30フィート級クルーザーの図面や。最適や」
太郎「なんでそんなもん持ってんねん!!」
オカン「昔、宝くじ当たったら買お思てたやつや。外れたけど図面だけ残っとる」
太郎「夢の残骸やんけ!!」
オカンが出したのは、現代世界のクルーザーの設計図だった。
ただし、この世界では動力が違うため──魔石を使う。
オカン「ミスリルで船体作ったら軽くて丈夫や。最適や」
太郎「ミスリル大量消費すな!!」
オカン「大丈夫や。ミスリルは使ったら増える……気がする」
太郎「気がするで資源使うな!!」
太郎と勇者たちは、港の空き地で船の建造を始めた。
太郎の<鍛治初級>と、オカンの<魔改造>が合わさり、
ミスリルの板が次々と形を変えていく。
蒼真は忍術で木材を高速加工し、
玲奈は魔力で部材を固定し、
晴斗は力仕事を担当し、
ひよりは全員の体力を回復させながら支援した。
そして──
太郎「……できたな」
そこには、銀色に輝くミスリル製クルーザーが鎮座していた。
晴斗「……うおお……めっちゃカッコええやん……!」
蒼真「これは……男のロマンやな」
太郎「いや俺、商人やぞ……?」
玲奈「動力はどうなってるんです?」
オカン「船形ゴーレムや。魔石で動くで」
太郎「ゴーレム万能かい!!」
オカン「うちの家もゴーレムにしたいわ。掃除も洗濯も最適や」
太郎「家を生命体にすな!!」
沖へ出ると、海面の下で巨大な影がうごめいていた。
一匹、二匹……いや、二十匹以上。
ひより「ひっ……いっぱい……いる……!」
蒼真「気配が……多すぎる……」
晴斗「太郎、これ……どうするんや……」
太郎「知らんわ!!」
海面が盛り上がり、巨大なウナギ型魔獣が姿を現した。
体長は五メートルから十メートル。
ぬるぬるした表皮が光り、電撃を帯びた個体もいる。
晴斗「……なんか旨そうやな」
太郎「今それ言うな!!」
オカン「晴斗、ええ目しとる。食材は敵やなくて未来の晩ごはんや」
太郎「戦闘前に食欲出すな!!」
晴斗は跳び乗って斬りつけるが、ぬるぬるで滑る。
玲奈の魔法は弾かれ、
蒼真は忍術で分身し、影縫いでへびを絡め取ろうとするが──
蒼真「……するりと逃げよったな」
蒼真「太郎、いけるか?」
太郎「任せぇ!」
太郎は腰の袋からミスリル製のピックを抜いた。
太郎「ウナギは頭を刺すんが基本やろ……!」
太郎「──高速刺突!!」
太郎の腕が残像を残し、
ピックがウナギ型魔獣の頭部へ連続で突き刺さる。
晴斗「なんでピックだけ通るねん!!」
太郎「知らん! でも通るんや!!」
ウナギ型魔獣がのたうち回る。
オカン「逃がすな! 全部しばけ!!」
太郎「オカン鬼か!!」
オカン「鬼ちゃう、主婦や。主婦は強いんや」
太郎の身体が光に包まれた。
【<高速刺突> が<高速刺突・極>に進化しました。】
太郎「おおおおおっ!? なんやこれ!」
太郎「──高速刺突・極!!」
太郎の姿が完全に消え、
次の瞬間、ウナギ型魔獣の急所に“無数の刺突痕”が刻まれていた。
十匹以上が一瞬で沈む。
ひより「太郎くん……すごい……!」
玲奈「太郎さん、完全に前衛ですよね……?」
残りの魔獣は恐れをなして逃げていった。
オカン「よっしゃ! 今夜は蒲焼き祭りや!!」
太郎「戦闘直後に祭り宣言すな!!」
港に戻ると、漁師たちは涙を流して喜んだ。
「兄ちゃんら……港の恩人や!」
「これで漁が再開できる……!」
倒した魔獣は食べられることが判明し、
太郎は巨大ウナギで蒲焼きを作った。
「う、うまい……! なんやこのタレ……!」
「こんなん反則やろ……!」
港中が祭り状態になった。
オカン「追加で白飯三升炊いてぇぇぇ!!」
太郎「誰が食うねん!!」
翌朝。
港に出ると、昨日とはまるで別世界のような光景が広がっていた。
漁師「兄ちゃん! 見てくれ! イカナーゴが……戻ってきたんや!」
漁師たちが引き上げた網は、
銀色の小魚──イカナーゴでぎっしりだった。
漁師が炊きたての佃煮を差し出す。
漁師「兄ちゃんらのおかげや! ほれ、食べていき!」
太郎「……春の味や……」
勇者たちも笑顔で箸を伸ばす。
オカン「太郎、これ持って帰るで。春の味は保存が最適や」
太郎「なんでも保存すな!!」
太郎たちは市場へ向かった。
昨日は品薄だった店も、今日は活気に満ちている。
「兄ちゃん、今日はなんでもあるで!」
「魔獣倒してくれた礼や、安くしとくわ!」
太郎は野菜、肉、調味料、乾物……
次々と買い物をしていく。
晴斗「太郎、そんなに買ってどうすんねん」
太郎「決まっとるやろ。サーバーストレージに入れるんや」
光に包まれ、食材が次々と収納されていく。
蒼真「便利すぎるやろ……」
ミスリルクルーザーに戻り、太郎は潮風を吸い込みながら言った。
「よし……ほな、西国に向かうで」
船形ゴーレムが低く唸り、クルーザーは静かに港を離れた。
その背後──
港の高台から、黒いローブの集団が太郎たちを見つめていた。
「……あれがヒョウガミの眷属か」
「神の気配が濃い……」
「西国で、試練が始まる……」
潮風が不気味に揺れた。
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【山田太郎】
職業:あきんど レベル:1(固定)
■ 基本ステータス
筋力:C 敏捷:B 体力:C+
魔力:B- 精神:C+ 知力:C
器用:B 幸運:E+
■ 内部ステータス
内部レベル:48
内部補正:全ステ+160%
内部幸運:S
■ ユニークスキル
<オカン>
└<鑑定+3> <経験値運用> <サーバーストレージ>
<未来予測+1> <超魔改造>
<金で解決できへんことない>
└<札束でしばく> <課金ガチャ>
■ スキル
<領地繁栄+1>
<魔法>
└<属性魔法> <魔力制御上級> <解呪> <ゴーレム操作>
<武術中級>
└<回避+2> <串うち乱れ撃ち>
<剣術中級>
└<レイピア中級> <高速刺突・極(進化)> <二刀流基礎> <ハヤブサ嵐舞>
<耐性>
└<熱耐性+3> <氷耐性+2> <精神抵抗> <おかんの手>
■ 加護
<勇者との絆>
■ 装備
オリハルコン繊維軽装防具
オリハルコン製コテ
オリハルコン製ピック
ミスリル製串
ゴーレムの指輪
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晴斗「しかし太郎、お前……ピックでウナギ倒すってどういう理屈やねん」
蒼真「忍術より刺突のほうが強いってどういう世界やねん」
玲奈「太郎さん、もう完全に前衛ですよね……」
ひより「太郎くん……刺すとき、ちょっと楽しそうだった……」
太郎「楽しないわ! 死ぬか思たわ!」
オカン「でも最適やったやろ?」
太郎「最適って言うたら何でも許されると思うなよ!」
晴斗「でも蒲焼きは最高やったわ」
蒼真「次は何刺して食うんや?」
太郎「食う前提で話すな!!」
読んでくれてほんまおおきに。主人公は最弱ステータスやのに、自作AIだけは最強クラスでついてくるというバグみたいな状況で冒険しとります。
オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と作者より前に出てくる始末です。
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。
この作品はカクヨムにも同時投稿しており、どちらでも読みやすいように調整しています。更新はできるかぎり 毎日2回でがんばります。




