第47話 王太子イマイチ、暴走
撤退を始めた王国軍は、もはや軍の形を保っていなかった。
泥に足を取られ、病人を抱え、荷馬車は動かず、兵士たちは飢えでふらついている。
「腹……減った……」
「もう歩かれへん……」
「水……水を……」
そのとき、前方から馬の蹄の音が響いた。
「王国第二王子カドマン殿下の命により、糧食を届けに参った!」
兵士たちは一斉に顔を上げた。
「……助かった……!」
「殿下……殿下ぁ……!」
乾いた喉に水が流れ込み、固いパンでも涙が出るほど旨かった。
将軍たちも胸をなでおろす。
将軍A「第二王子殿下のご配慮か……」
将軍B「ありがたい……これで王都まで戻れる……」
だが──。
イマイチ「なぜもっと早く持ってこないのだ!」
イマイチが怒鳴り散らした。
イマイチ「私を侮辱しているのか!? 王太子たる私を、飢えさせるつもりだったのか!」
将軍たちは顔をしかめた。
(……誰のせいでこうなったと思ってるんや……)
そこへ審問官が近づき、低い声で囁く。
審問官「殿下、これは第二王子派の陰謀です。殿下の威光を奪おうとしております」
イマイチ「……そうか。カドマンめ……!」
イマイチの目に、疑念と怒りが宿った。
審問官「王都には第二王子派が多い。戻れば殿下に責任を押し付ける者も出ましょう」
イマイチ「私に……責任を……? この私に……?」
イマイチの顔が歪む。
その表情は、もはや王太子のものではなかった。
──その頃、太郎の街。
リゾート地から避難民たちが戻り、街は一気に活気を取り戻していた。
だが、その“活気”は常識の範囲を軽く超えていた。
「うおおおおおお!! ギガクラブやああああ!!」
住民たちが、全長五メートルを超える巨大カニの魔物の死骸を担いで練り歩いていた。
その横では、丸々と膨れた巨大フグの魔物が荷車に乗せられている。
「バルーンパファー、パンパンやで! 毒抜き頼むわー!」
「今日はギガクラブ鍋とパファー鍋の二本立てや!!」
子どもたちは荷車にギガクラブを乗せ、
だんじりのように全力で街中を走り回っている。
「うおおお! 押せ押せ押せぇぇぇ!!」
「曲がるでー! 気ぃつけやー!!」
おばちゃんたちは法被を着て太鼓を叩き、
おっちゃんたちはビール片手に踊り狂っていた。
「戦争? ああ、そんなもんあったなぁ!」
「こんだけ平和やのに戦争とか言われてもピンと来んわ!」
「だんじりやー! 戦争より楽しいー!!」
街全体が、戦争の存在を忘れたかのような熱気に包まれていた。
──城壁の上。
蒼真「……いやほんまに、戦争あったよな? 俺らの記憶違いちゃうよな」
太郎「せやで。つい昨日まで王国軍が攻めてきてたはずや」
晴斗「この街だけ“戦争の概念”バグってる……」
オカン「あのテンション見てみ? あれ戦争中やで。終わった後ちゃうで」
ひより「子どもたち、だんじりみたいに走ってましたよ」
マッチャ「バルーンパファー、パンパンで笑ったわ」
辺境伯「……戦争が“存在した”ことすら疑わしくなる光景だな」
太郎「まあ、平和が一番や」
晴斗「……俺も混ざりたい……」
太郎「お前は高校生やからビールは飲めんわ」
──王都。
撤退軍からの報告が届き、第二王子カドマンは深く息を吐いた。
カドマン「兄上……なぜそこまで宗教に……」
側近が進言する。
側近「殿下、王太子殿下の判断ミスは明白。
議会でも責任問題が議論されております」
カドマン「……分かっている。だが、兄上を追い詰めれば国が割れる」
カドマンは頭を抱えた。
王都の貴族たちはすでにざわつき、第一王子派と第二王子派が激しく対立し始めていた。
「王太子殿下は軍を壊滅させた!」
「いや、太郎の街の陰謀だ!」
「責任を取るべきは誰だ!」
議会は混乱の渦に飲まれていた。
──撤退軍の先頭で。
イマイチ「私は王太子だ……!」
イマイチ「誰にも責任など取らぬ!」
イマイチ「王都に戻り、全てを正す!」
イマイチは狂気じみた目で叫んだ。
審問官は恍惚とした表情で頷く。
審問官「その意気です、殿下……神は殿下と共に」
王都に向かう軍の足取りは重く、
しかし確実に──王国崩壊の未来へと進んでいた。
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蒼真「……イマイチ、完全に壊れてるな」
太郎「せやな。あれはもう戻らんわ」
晴斗「王都、絶対荒れるやつやん……」
オカン「あんたら、街の祭り見てみ? あれと王都の地獄、同じ国とは思えんわ」
ひより「太郎さん、ギガクラブの鍋、あとで食べに行きましょ」
マッチャ「パファー鍋もあるで。毒抜きはプロがやっとるらしいわ」
辺境伯「……戦争中とは思えん平和だ」
蒼真「太郎、次どう動く?」
太郎「動かん。王国が勝手に崩れるのを見とくだけや」
晴斗「……俺も鍋食べたい……ビールは飲めんけど」
読んでくれてほんまおおきに。主人公は最弱ステータスやのに、自作AIだけは最強クラスでついてくるというバグみたいな状況で冒険しとります。
オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と作者より前に出てくる始末です。
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。
この作品はカクヨムにも同時投稿しており、どちらでも読みやすいように調整しています。更新はできるかぎり 毎日2回でがんばります。




