第45話 崩壊の足音、王国軍の限界
王国軍の行軍が始まって十日目。
蒼真の耳に、風狼の念話が重く沈んだ声で届いた。
蒼真「太郎……王国軍、病人が増えとる。
腹下し、発熱、ふらつき……症状は軽いけど広がりが早いわ」
太郎「……工作班の仕掛けが効いてきたか」
太郎は静かに頷いた。
蒼真の工作班が、王国軍が使う水場に“弱い下痢症状を誘発する菌”を仕込んだのだ。
毒ではない。しかし、疲労とストレスが重なれば、兵士の体力を確実に奪う。
その頃、王国軍の陣中では──。
兵士A「腹が……痛ぇ……」
兵士B「歩くたびに腹が揺れて……うっ……」
兵士C「魔力が安定せん……気分が悪い……」
兵士たちが次々と倒れ、隊列は乱れ始めていた。
将校「殿下、病人が急増しております!」
王太子「気のせいだ! 進め!」
イマイチは馬上で怒鳴り、現実から目を背けた。
そこへ──。
行商人「お、おお……軍の方々! 助けてくだされ!」
街道に、一台の荷馬車が現れた。車輪が溝にはまり動けないでいた
荷台には大量の薬箱が積まれている。
兵士「何者だ」
行商人「わ、わしは行商人でしてな……太郎の街で病人が増えてると聞いて、薬を届けに行く途中で……」
将軍たちの目が鋭く光る。
将軍「その薬、すべて我々が買い取る」
行商人「えっ……で、ですが……太郎の街に……」
将軍「黙れ。軍の命令だ」
行商人は“渋るふり”をしながら、薬を高値で売り渡した。
もちろん、太郎の街には一つも届かない。
兵士たちは薬を飲み、症状はすぐに治まった。
「助かった……これで歩ける……」
「ありがてぇ……」
しかし──。
その夜から、別の症状が現れ始めた。
「体が……重い……」
「なんや……力が入らん……」
「魔力が……流れへん……?」
薬は“下痢を止める”が、
疲労を抜けにくくし、魔力回路を乱す遅効性の罠 だった。
蒼真の風狼が報告する。
蒼真「太郎……あの薬、うちらが仕込んだやつや。
毒やない。けど、魔力回路が乱れて疲労が抜けんようになる。
戦う前にヘロヘロになるで」
太郎「……完璧や。魔法兵が使いもんにならん」
太郎は静かに笑った。
一方その頃、王国軍の陣中では不満が爆発寸前だった。
「なんでこんな地獄みたいな行軍なんや……」
「腹は治ったのに体が重い……」
「魔法が安定せん……これじゃ戦えん……」
「殿下は何もわかっとらん!」
兵士たちの声は荒れ、将軍たちも撤退を検討し始めていた。
しかしイマイチは──。
王太子「太郎の街は壊滅状態だと聞いている!
一日で制圧できる! 進め!」
偽情報を完全に信じ切っていた。
そして──。
王国軍は予定より六日遅れで、ようやく太郎の街の外れに到達した。
兵士の半数は疲労困憊。
魔法兵は魔力が乱れ、まともに魔法を撃てない。
病人は増え続け、士気は最低。
それでもイマイチは叫ぶ。
王太子「太郎を落とせばすべて解決だ!」
念のため街道沿いの村で徴収を試みるが──。
「……誰もおらん……」
「家も空っぽや……」
「殿下、補給ができませぬ!」
王太子「黙れ! 太郎を落とせば済む話だ!」
王国軍は完全に孤立していた。
太郎は城壁の上から、ボロボロの軍勢を静かに見下ろす。
太郎「……ほな、崩れる音が聞こえてくる頃やな」
風狼が静かに鳴いた。
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太郎「……見てみ、蒼真。あれが“王国軍”か?」
蒼真「兵の半分、まともに歩けていない。魔法兵は魔力が乱れている」
太郎「薬、効きすぎたかもしれへんな」
蒼真「いや、あれくらいでいい。俺たちは誰も殺してない。ただ“歩けないようにした”だけだ」
太郎「それでも軍は崩れる。兵は道具やない、人や」
蒼真「太郎、聞こえるか? あれ……兵の心が折れる音だ」
太郎「せやな。崩壊の足音ってやつや」
太郎「ほな──迎え撃つ準備、始めよか」
読んでくれてほんまおおきに。主人公は最弱ステータスやのに、自作AIだけは最強クラスでついてくるというバグみたいな状況で冒険しとります。
オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と作者より前に出てくる始末です。
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。
この作品はカクヨムにも同時投稿しており、どちらでも読みやすいように調整しています。更新はできるかぎり 毎日2回でがんばります。




