第44話 商人の戦い方、武力にあらず
王国軍が出発して数日。
蒼真の耳に、風狼の念話が湿った風のように流れ込んできた。
蒼真「太郎……王国軍、三週間分の兵糧積んで出発したで。
途中での徴収はせぇへん言うてる。
王太子が“民心がどうのこうの”言うて、将軍の助言も聞かん」
太郎「……人気取りか。アホやなぁ」
太郎は地図を広げ、街道の線を指でなぞった。
王国軍は太郎の街まで二週間。
戦闘は一日で終わると本気で思っている。
だから兵糧は三週間分で十分だと判断したのだ。
しかし──。
蒼真「太郎、道がぬかるんどる。
荷馬車が泥にハマって進まんらしいで」
蒼真の声は、どこか呆れを含んでいた。
太郎「雨の影響か……いや、運が悪いだけやないな」
太郎は地図を折り、窓の外に目を向けた。
遠くの空には、まだ雨雲の名残が薄く漂っている。
その頃、王国軍の行軍はすでに遅れ始めていた。
ぬかるんだ街道に、兵士たちの足がずぶりと沈む。
荷馬車の車輪は泥に埋まり、馬は苦しげに鼻息を荒げる。
魔法障壁部隊は、泥の跳ね返りを防ぐために余計な魔力を使い、疲労の色を濃くしていた。
将校「殿下、行軍速度が落ちております」
王太子「構わん! 太郎など弱小だ。ゆっくりでよい!」
イマイチは余裕の笑みを浮かべ、馬上で胸を張る。
将軍たちは顔を見合わせ、深いため息をついた。
さらに追い打ちをかけるように、蒼真の工作班が動いた。
蒼真「太郎……橋、壊したで。
けどな……王国軍の間者は“自然に崩れた”思っているみたいだ。
先日の大雨で傷んだと」
太郎「なんやそれ……でも、迂回は確定か」
蒼真「そうだ。結果は同じだ」
太郎は小さく笑った。
しかし、迂回ルートは地獄だった。
森の中を抜ける細い道は、雨でぬかるみ、足を踏み入れるたびに泥が跳ねる。
兵士たちは疲労で顔を歪め、荷馬車は何度も横転しそうになり、魔法兵は魔力切れで膝をつく。
兵士A「なんでこんな道通るんや……」
兵士B「太郎の街、ほんまに弱小なんか……?」
不満は静かに積み重なり、軍全体に重苦しい空気が漂い始めていた。
一方その頃、太郎の街は──。
街の人たちが
「海だ! 海があるぞ!」
「おい見ろ、砂浜やぞ……なんでダンジョンに砂浜が……」
「ここ天国か?」
氷のダンジョンのリゾートエリアでは、避難民たちが笑顔を取り戻していた。
青く澄んだ人工の海が広がり、波の音が心地よく響く。
子どもたちは水しぶきを上げて走り回り、大人たちは温泉に浸かり、老人たちは砂浜の上で日向ぼっこをしている。
街の市場も普段通りに賑わい、ゴーレムが規律正しく巡回していた。
「……これ、ほんまに戦争前なん?」
「王都より暮らしええやん……」
太郎は街の様子を聞いて、静かに頷いた。
太郎「よし。こっちはこっちで準備万端や」
商人ギルドと連携し、情報戦も本格化する。
「太郎の街は魔道具暴走で壊滅寸前らしい」
「帝国軍が太郎を見捨てたとか……」
「内部で反乱が起きてるって話も……」
偽情報が王国軍に流れ込み、判断を鈍らせる。
将校「殿下、太郎の街は壊滅しているとの噂が……」
王太子「なら急ぐ必要はないな!」
イマイチの判断ミスは、もはや誰にも止められなかった。
蒼真は城壁の上に立ち、風狼の念話を受け取る。
蒼真「太郎……王国軍、予定より遅れてる。
このままだと……自滅するぞ」
太郎「……せやろな」
太郎は静かに街を見下ろした。
太郎「攻めへん。守るだけで勝つ。 これが商人の戦いや」
その目は、揺るぎなかった。
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蒼真「太郎、……このまま自滅するぞ、あいつら」
太郎「せやろ? 攻めんでも勝手に転ぶんや」
オカン「あんた、ほんま性格悪……いや、賢いわ」
太郎「今“悪い”言いかけたやろ」
オカン「ステータス 知力Cやからな。内部補正でさらにあがって軍師並みやな」
マッチャ「太郎はん、敵さんよりうちの避難民のほうが元気ですわ」
ひより「太郎さん、海で遊んでる子どもら見ました? めっちゃ笑顔でした」
辺境伯「……戦前とは思えん光景だな」
太郎「せやろ。これが“守る戦い方”や」
オカン「ほな次は、敵さんが勝手に倒れるの見届けるだけやな」
太郎「……オカン、それ言い方よくないで」
読んでくれてほんまおおきに。主人公は最弱ステータスやのに、自作AIだけは最強クラスでついてくるというバグみたいな状況で冒険しとります。
オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と作者より前に出てくる始末です。
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。
この作品はカクヨムにも同時投稿しており、どちらでも読みやすいように調整しています。更新はできるかぎり 毎日2回でがんばります。




