第4話 狂気の修行とタコ焼き屋台、そしてヒョウガミの眷属疑惑
翌朝。
宿屋の部屋で目を覚ました瞬間、俺は後悔した。
全身が筋肉痛だ
目の前にはオカン妖精が浮かんでる
「太郎、起きるで。修行開始や」
「……オカン、まだ夜明け前なんだけど」
「早起きは命を救うんや。異世界では寝坊は死に直結するで」
「脅しが雑!」
外に出ると、まだ薄暗い。
街の人々は寝静まり、鳥の声すら聞こえない。
「ほな、走り込み10kmいくで」
「……マジでやるのか」
「マジや。太郎、死にたくなかったら走り」
仕方なく走り出す。
石畳の道を、息を切らしながらひたすら走る。
途中、早朝のパン屋の前を通りかかると、店主が目を丸くした。
「お、お前……何してんだ?」
「修行です……」
「修行って……その速度で!? 朝から!?」
俺は必死に走り続ける。
通りすがりの人々が、まるで珍獣を見るような目で俺を見ていた。
「太郎、ええペースや。あと8kmや」
「まだ8km!?」
「何言うてんねん。始まったばっかりや」
「鬼か!」
「オカンや」
「そういう意味じゃねぇ!」
*
午前中は素振り1000回。
昼は魔物狩り。
午後は筋トレ。
夕方は魔力操作訓練。
街の人々の視線は、日に日に変わっていった。
「おい、あの少年……また素振りしてるぞ」
「昨日もやってたよな?」
「いや、一昨日も見たぞ」
「なんか……狂ってないか?」
「修行ってレベルじゃねぇ……」
完全に“ヤバいやつ”扱いだ。
「太郎、気にせんでええ。努力はいつか実るんや」
「実る前に死ぬわ!」
「死なん死なん。太郎はやればできる子や」
「根拠は!?」
「オカンの勘や」
「勘かよ!」
*
そんなある日、オカンが言った。
「太郎、今日はタコール狩り行くで」
「タコール?」
「タコつぼ背負ったヤドカリ型モンスターや。食感がタコに近いんや」
「……タコ焼き作る気だな?」
「せや」
「異世界でタコ焼き屋台やるの!?」
「大阪人の魂やろ」
「俺、大阪人じゃないんだけど」
「細かいことはええねん」
森の奥へ向かうと、いた。
丸いタコつぼを背負い、カサカサと動くヤドカリのような魔物。
触手が二本だけ生えていて、妙に愛嬌がある。
「うわ……なんか可愛いな」
「情けは無用や。食材やで」
「言い方!」
タコールは意外と素早く、逃げ回る。
だが、オカンの指示が飛ぶ。
「太郎、右! 次、左! 飛びかかってくるで!」
「え、ちょ、待っ――」
タコールが跳ねた瞬間、俺は反射的に短剣を構えた。
刃が走り、タコールが地面に転がる。
べちっ。
「……倒した?」
「倒したで。おおきに、太郎」
「なんでお礼言うんだよ!」
「食材確保やからな」
「食材扱いかよ!」
サーバーストレージにタコールを保存し、街へ戻る。
*
街へ戻る途中、オカンが言った。
「太郎、タコ焼き作るには“鉄板”が必要や」
「……そんなもん、この世界にあるのか?」
「あるで。鍛冶屋に頼んだら作ってくれる。
ほら、あそこや」
オカンが指した先には、煙突から黒煙を上げる鍛冶屋があった。
店主は筋骨隆々のドワーフだった。
「なんだ兄ちゃん、武器か? 防具か?」
「えっと……丸い穴がいっぱい“くぼんだ”鉄板を作ってほしいんですけど」
「……は?」
ドワーフは眉をひそめた。
「丸い穴がくぼむ? どういう形だ?」
「えっと……こういう感じで……」
俺は紙と炭筆を借り、
丸い“くぼみ”が並んだ鉄板の絵 を描いた。
● ● ● ●
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「こんな感じの“くぼみ”がいっぱいある鉄板です」
ドワーフは目を細めて絵を覗き込む。
「……武器じゃねぇな。防具でもねぇ。
なんだこれは、料理道具か?」
「はい。丸い食べ物を焼くんです」
「丸い食べ物……? 想像つかねぇが……面白ぇ!」
オカンがすかさず口を挟む。
「太郎、絵うまいやん。
あんた、こういうとこだけ器用やな」
「“だけ”言うな!」
結局、ドワーフは興味本位で通常の半額にしてくれた。
「兄ちゃん、その鉄板……完成したら食べさせてくれよ。
何を焼くのか気になる」
「ありがとうございます!」
こうして、
異世界製たこ焼き鉄板(特注品)
が手に入った。
*
宿屋の厨房を借りて、タコ焼きを作ることにした。
オカンのレシピ指示が脳内に流れ込む。
「まずは出汁や。昆布と鰹……はないから、代わりにこの草や。旨味成分似とる」
「そんな適当な……」
「大丈夫や。味覚データで確認済みや」
「ほんとに!?」
「ほんまや」
粉を溶き、タコールを刻み、鉄板に流し込む。
じゅわぁぁ……と香ばしい匂いが広がる。
「……うまそう」
「せやろ? 太郎、ひっくり返し!」
「はい!」
くるっ、くるっ、と丸くなっていくタコ焼き。
その動きは、まるで魔力を糸のように操る繊細な作業だった。
【スキル:<魔力制御基礎>が<魔力制御初級>に進化しました】
「え、進化!?」
「せや。タコ焼きは魔力の流れ読むんが大事や」
「そんなタコ焼き聞いたことねぇ!」
さらに、ピックで細かく刺して形を整えると――
【スキル:<刺突(new)>を習得しました】
【スキル:<レイピア基礎(new)>を習得しました】
「なんでタコ焼きでレイピアスキルが上がるんだよ!」
「ピックの動きはレイピアの基本や。突きの精度が上がるで」
「理屈はわかるけど納得はできねぇ!」
さらに包丁でタコールを刻むとき、猫の手で指を守ると――
【スキル:<武術基礎(new)>を習得しました】
「包丁で武術上がるの!?」
「猫の手は武術の基本構えに通じるんや。知らんけど」
「知らんのかい!」
*
屋台を出すと、すぐに人が集まった。
「なんだこの匂い……!」
「丸い……食べ物?」
「うまそう……!」
一口食べた客が叫ぶ。
「うまっっっ!!!」
「なにこれ!? 初めての味だ!」
「外カリッ、中トロッ……!」
「タコールってこんなに美味かったのか!?」
あっという間に行列ができた。
「太郎、商売繁盛やな」
「オカン、これ……すごいぞ!」
「せやろ? 大阪の味は世界を救うんや」
「異世界だけどな!」
*
しかし、問題が起きた。
屋台の後ろで、オカンのホログラムがふわっと現れたのだ。
豹柄のあっぱっぱ、パーマ、腰に手を当て、
手には金色のおたま。
「太郎、ソース追加や!」
「オカン!? 出てくんなって!」
だが、客たちはざわついた。
「……あれは……」
「ヒョウ柄……?」
「まさか……ヒョウガミの眷属……!?」
「ヒョウガミ?」
「この地方に伝わる“豹柄の守護神”や。商売繁盛と家庭円満の神様や」
「なんでそんな神様いるんだよ!」
「知らんけど、似てるんやろ」
客たちはオカンに手を合わせ始めた。
「ヒョウガミ様……!」
「どうか我が家にも福を……!」
「商売繁盛を……!」
「太郎、なんか拝まれてるで」
「オカンのせいや!」
「まあええやん。人気出るで」
「そういう問題じゃねぇ!」
*
売り上げはかなりの額になった。
だが――
「太郎、必要経費以外は全部投資に回すで」
「また運用するのか……」
「当たり前や。金は寝かせたらアカン」
「異世界でも投資するのかよ!」
「世界が変わっても、金の流れは変わらんのや」
「名言っぽいけど怖い!」
*
その日の夜、ギルドに行くと、受付嬢が声をかけてきた。
「太郎くん、依頼が来てるわよ」
「依頼?」
「あなたに、ぜひお願いしたいって」
「俺に……?」
胸が高鳴る。
「どんな依頼なんですか?」
「それは――明日説明するわ」
こうして、俺の冒険者としての第一歩が始まろうとしていた。
【山田太郎】
職業:あきんど レベル:1(固定)
■基本ステータス
筋力:E↑ 敏捷:E↑ 体力:E↑
魔力:F 精神:E 知力:E+
器用:D- 幸運:F
■内部ステータス
内部レベル:12
内部補正:全ステ+30%
内部幸運:D
■ユニークスキル
<オカン>
└<鑑定+3> <経験値運用> <サーバーストレージ> <未来予測>
■スキル
<魔力制御初級(進化)> <武術基礎(new)>
<剣術基礎>
└<刺突(new)> <レイピア基礎(new)>
■装備
短剣
冒険初心者装備(軽装)
太郎「……オカン、内部レベルだけ伸びすぎやろ。外側とのギャップ詐欺やぞ」
オカン「太郎、外側は“パッケージ”や。中身は“本体”や」
太郎「パッケージFランクで中身だけ高性能って、開封したらクレーム来るやつやん」
オカン「せやから今は“外装アップデート待ち”や。中身が育ったら勝手に外も追いつく」
太郎「勝手にって言うなよ……俺の身体やぞ」
オカン「太郎は“伸びしろの塊”や。外見は後からついてくるんや」
太郎「その理屈で納得できるかは別問題やぞ」
オカン「まあまあ、心配せんでええ。太郎はまだ“下準備”の段階や」
太郎「料理比喩やめぇ!」
オカン「ほな次は味付けや」
太郎「進めんな!」
読んでくれてほんまおおきに。主人公は最弱ステータスやのに、自作AIだけは最強クラスでついてくるというバグみたいな状況で冒険しとります。
オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と作者より前に出てくる始末です。
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。
この作品はカクヨムにも同時投稿しており、どちらでも読みやすいように調整しています。更新はできるかぎり 毎日2回(朝6時/夜20時)でがんばります。




