第16話 ダンジョン突入前夜 ― オカンの守銭奴魂
太郎は地面に大の字で倒れていた。
背中は真っ赤、服は穴だらけ、魂は半分抜けている。
「……もう無理や……背中で太陽育ててもうた……」
ひよりが泣きそうな顔で治癒魔法をかけ続ける。
その手は震えていた。
けれど、触れた瞬間――
太郎の背中に、じんわりとした温もりが広がった。
まるで、凍えた心に春の陽だまりが差し込むような、
そんな優しい温度だった。
「太郎くん……こんなに……痛かったよね……」
ひよりの声は震えていた。
涙がぽたりと太郎の肩に落ちる。
その涙が触れた場所から光が広がり、太郎の痛みを溶かしていく。
(……なんやこれ……心まで癒されていく……)
ひよりの祈りは、ただの治癒魔法やなかった。
太郎の胸の奥にまで染み込み、張り詰めていたものをほどいていく。
「太郎くん……もう無茶しないで……お願いだから……」
光が収まると、太郎はなんとか息を吹き返した。
だが、その瞬間。
「太郎、次は“地下ダンジョン”や」
オカンの声が脳内に響いた。
「いや休ませろや!! 今の俺、HP1やぞ!!」
「大丈夫や。ひよりちゃんが治してくれたやろ」
「精神力が死んどるんや!!」
しかしオカンは容赦しない。
「街の地下に古代文明の“試練のダンジョン”が眠っとる。
太郎、あんたの修行に最適や」
「最適って言うな!!」
勇者たちが駆け寄ってくる。
晴斗「太郎、一緒に行くぞ」
蒼真「危険すぎる」
玲奈「太郎くん一人は無理だよ」
ひより「……今回は行けないの……でも、応援してる」
太郎は心強さを感じ、思わず言いかけた。
「ほな、みんなで――」
その瞬間、オカンの声が脳内に突き刺さる。
(太郎、断り。勇者らと行ったら経験値も宝も割れるやろ。
ウチらの取り分が減るで)
「……守銭奴か!!」
太郎は涙目で勇者たちに向き直る。
「みんなが入ると……難易度が狂うらしい。これは俺専用の修行なんや……」
勇者たちは一斉に眉をひそめた。
「……なんか嘘くさい」
ひよりが震える手で大量のアイテムを差し出す。
「太郎くん……これ全部持っていって……
ポーション、解毒薬、包帯、魔力回復薬……
ぜ、全部……!」
太郎は受け取り、サーバーストレージに収納した。
シュンッ。
晴斗「……今、どこに消えた?」
蒼真「空間魔法か?」
玲奈「魔力の流れが全然ない……?」
太郎「サーバーストレージや」
勇者たち「……何それ?」
太郎「ネットワーク上の倉庫みたいなもんや」
勇者たち「……余計わからん」
オカンが補足する。
「ちなみに容量は30ペタバイトまでや。予算の関係でな」
太郎「30ペタって……何入れても余るやろ……!」
オカン「せやけど、問題は“処理速度”のほうや」
太郎「そこなんかい!!」
オカン「せやけど、あんたの荷物は無駄に重いんや。
鉄板とか、鉄板とか、鉄板とか」
太郎「鉄板多いな!!」
太郎の服は穴だらけだった。
背中は焼け、布は溶け、もはやボロ雑巾。
職人が新しい防具を持ってきた。
「ミスリル繊維の軽装防具や。丈夫で軽いで」
太郎「おお、めっちゃええやん!」
職人は胸を張る。
「魔法軽減はAランク、物理軽減はBランク。
斬撃にも刺突にも強いし、魔力干渉にも耐える。
耐久性は普通の鉄の十倍以上や」
太郎「めっちゃ優秀やん!!」
オカン「熱は通すで」
太郎「意味ないやん!!!」
さらに“かっこいい肩当て”も渡される。
見た目は勇者装備のように立派だが――
太郎「……これ、重っ!!」
オカン「飾りや。重いだけや」
太郎「知ってた……」
街の地下に巨大な古代遺跡の扉が現れる。
中央には“転送宝珠”が浮かんでいた。
オカン「まずは“炎の試練”や」
太郎「よりによって炎かい!!」
勇者たちが見守る中、太郎は宝珠に手を伸ばした。
手が触れた瞬間、宝珠が強く光り出す。
太郎「うおっ……!」
光が太郎を包み込み、姿が消えた。
――炎のダンジョンへ。
太郎の視界が白く染まり、次の瞬間――
灼熱の空気が肌を刺した。
「……あっつ!!!!!」
地面は赤く脈打ち、壁は溶岩のように光り、
空気そのものが熱で揺らいでいる。
太郎「……あれ? なんか前よりマシな気が……?」
オカン「太郎、熱耐性が+1に“進化”しとるで」
太郎「そら背中で鉄板焼いてたら上がるわ!!」
【山田太郎】
職業:あきんど レベル:1(固定)
■基本ステータス
筋力:E 敏捷:E+ 体力:E
魔力:E- 精神:E+ 知力:E+
器用:D+ 幸運:F
■内部ステータス
内部レベル:34
内部補正:全ステ+84%
内部幸運:A(オカン補正)
■ユニークスキル
<オカン>
└<鑑定+3> <経験値運用> <サーバーストレージ>
<未来予測> <魔改造>
<金で解決できへんことない>
└<札束でしばく>
■スキル
<魔法>
└<魔力制御上級> <解呪> <ゴーレム操作>
<街づくり>
└<開拓> <防衛構築>
<武術基礎>
└<回避>
<剣術基礎>
└<高速刺突> <レイピア中級><ハヤブサ乱舞> <二刀流基礎>
<生産技術初級>
└<鍛治初級> <調理初級>
<工作物魔改造>
<熱耐性+1(進化)>
■加護
<勇者との絆>
■装備
ミスリル繊維の軽装防具
重いだけの肩当て
ミスリル製コテ
ミスリル製ピック
ゴーレムの指輪
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太郎「……明日、ほんまに行くんか……炎の試練……」
オカン『行くに決まっとるやろ。あんたの成長はウチの財布に直結するんや』
太郎「財布基準やめろや!!」
晴斗「太郎、無理なら言えよ」
太郎「言いたいけど言われへん空気やねん……」
蒼真「まあ、君ならなんとかするだろう」
玲奈「ひよりちゃん、まだ泣いてるよ……」
ひより「だ、だって……太郎くん、また燃えちゃうかも……」
オカン『燃えてもええけど、装備だけは守りや。高かったんやから』
太郎「俺より装備の心配すんな!!」
読んでくれてほんまおおきに。主人公は最弱ステータスやのに、自作AIだけは最強クラスでついてくるというバグみたいな状況で冒険しとります。
オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と作者より前に出てくる始末です。
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。
この作品はカクヨムにも同時投稿しており、どちらでも読みやすいように調整しています。更新はできるかぎり 毎日2回(朝6時/夜20時)でがんばります。




