第112話 帝都の静謐と、教育という火種
帝都中央区。
行政庁舎の最上階――モンドの執務室は、昼下がりの光を受けて静かに輝いていた。
壁一面の書架には帝国の地図や統計資料が整然と並び、窓の外には帝都の街並みが広がる。
静謐な空気が漂うその部屋に、重厚な扉がノックされた。
オニキス、コハク、マッチャが姿を見せる。
モンドは書類から顔を上げ、淡い微笑を浮かべた。
その表情は柔らかいが、感情の揺れはほとんど見えない。
モンド「遠征ご苦労だったね。サガノ領はどうだった?」
オニキスが一歩進み、丁寧に報告書を差し出す。
オニキス「社は無事に建立され、門前町の基礎も整いつつあります」
コハク「温泉も湧きましてえ。観光地として発展しそうどす」
マッチャ「殿下もご満足どす」
モンドは静かに頷く。
そして、ほんのわずかに目を伏せた。
モンド「……メノウ姉様は、無事だったかい?」
その声は淡々としているが、家族を案じる温度がわずかに滲んでいた。
コハクが柔らかく微笑む。
コハク「ええ、メノウ姉様も娘のオパール様も、お元気どすえ」
マッチャ「サガノ領での滞在も、穏やかでございました」
モンドの目がわずかに細くなる。
それは安堵の色だが、表情としてはほとんど揺れない。
モンド「……そうか。ありがとう」
オニキスが懐から小箱を取り出す。
オニキス「こちらがサガノ領の新名物、八つ橋です」
モンド「噂の……八つ橋か。いただこう」
モンドは一枚を口に運び、ほんの少しだけ目を見開いた。
モンド「……うまい。これは帝都でも流行るだろうね」
コハク「太郎様が作らはりましたえ」
マッチャ「殿下もお気に入りどす」
モンドは満足げに頷き、報告書をめくる。
モンド「龍公女ともつながりができたのだろう? それは帝国にとって大きい。サガノ公爵領までの鉄道延伸は許可しよう」
オニキス「感謝いたします」
モンドは八つ橋の箱を閉じ、指先で机を軽く叩いた。
その仕草は思考の深まりを示している。
モンド「しかし……太郎殿が帝都に滞在すると、なぜ神々とのつながりが強まり、経済まで発展するのだろうね?」
オニキスは少し考え、答える。
オニキス「神々とのつながりは……ヒョウガミが関与していると思います」
オニキス「経済発展は、太郎殿が“平民を活用している”からです」
モンド「平民を……?」
コハク「太郎様は、身分に関係なく人を使いはりますえ」
マッチャ「教育水準を上げて、貴族だけでは成しえないことを平民にも担わせてはります」
モンドは椅子にもたれ、静かに息を吐いた。
モンド「教育か……」
オニキス「帝国にも貴族向け学院はありますが……正直、見劣りします。貴族としては良いですが、革新はできないでしょう」
モンドは目を閉じ、短く思案する。
そして静かに言った。
モンド「……一石を投じるのも、面白いかもしれないね」
その声は淡々としているが、
確かに帝国の未来を動かす“何か”を思いついた響きがあった。
帝都商会街区。
ヒョウガミ商会の会議室では、ティナが資料を広げていた。
太郎、オカン、玲奈、ひよりが席につき、報告を聞いている。
ティナ「ひより様から提案されていた貧民街救済案ですが……すでに実施されています」
太郎「おお、どうなったん?」
ティナ「フードコート2号店を貧民街に出店しました。こちらは安価で提供し、福祉的な役割を果たしています」
ひよりは胸に手を当て、ほっと息をつく。
ひより「……よかった……」
ティナはページをめくりながら続ける。
ティナ「識字率を高めるため、子供だけでなく大人も参加できる学校も作りました。食事は無料で提供しています」
太郎「無料!? 赤字ちゃうんか!?」
ティナ「はい、赤字です。しかし……犯罪率が20%下がりました」
太郎「効果出すぎやろ!」
オカン「太郎、教育は大事や! 八つ橋より大事や!」
太郎「なんで八つ橋と比較すんねん!」
ティナ「衛生状態を高めるため、清掃業務をギルド経由で実施しています。貧民街の環境は確実に改善しています」
玲奈「すごい……帝都、変わってきてるね」
ひより「……うれしい……」
ティナは少しだけ表情を曇らせる。
ティナ「ただ……貧民街を中心に、ヒョウガミ信仰が増えているような気がします」
太郎「オカン教が広まっとる!?」
オカン「太郎、うち神様やで?」
太郎「自覚あったんかい!!」
そのとき、会議室の扉がノックされた。
帝都の使者が姿を見せる。
使者「太郎殿、勇者殿。帝国貴族学院より“臨時講師”の依頼が届いております」
太郎「なんで俺が先生やねん!!」
オカン「太郎、八つ橋の授業したらええんや!」
太郎「絶対イヤや!!」
――帝都学院編が、ここから始まる。
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太郎「しかし……なんで帝都でオカン信仰が増えとんねん」
オカン「太郎、うち神様やで?」
太郎「自覚あったんかい!」
玲奈「でも、貧民街の人たちが救われてるなら……いいことだよ」
ひより「……うん……みんな、笑ってた……」
ティナ「太郎様、学校の子どもたちが“太郎先生”と呼んでいます」
太郎「勝手に先生にすな!」
オカン「太郎、帝国学院でも先生やるんやろ?」
太郎「やらへん! やらへんて言うてるやろ!」
コハク「太郎様、帝国の若い子らに教えたらええどす」
マッチャ「殿下も、きっとお喜びどすえ」
晴斗「太郎、もう覚悟決めたほうがいいよ」
太郎「なんでみんなして俺を教師にしようとすんねん!!」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




