第106話 おいなりさん、文明を引っ張る
翌朝。太郎たちが狐森へ向かうと、社の前で巨大な影がソワソワしていた。
九尾が九本の尾を揺らしながら待っている。
九尾「……供物は……持ってきたか……?」
太郎「朝から食欲全開やな!」
オカンが稲荷寿司を差し出す。
オカン「ほら九尾さん、朝は糖分と油分が大事やで。動く前に食べとき」
太郎「アスリートみたいに言うな!」
九尾は幸せそうに頬張る。
九尾「……甘き揚げ……至福……」
オカン「せやろ? 揚げは正義や」
太郎「神獣に揚げの哲学教えんでええ!」
食べ終えた九尾が、じっと太郎を見る。
九尾「……昨日の話を聞かせよ。駅と……神社とやら」
オカン「駅前に神社あったら、絶対“けつねうどん”売れるで。うちの秘伝の出汁使ったるわ」
太郎「勝手に出店計画立てるな!」
太郎は説明を始めた。
太郎「駅ができたら、ここに神社も建つ。参拝客も来るし、供物も……まあ、増えるかもしれん」
九尾の耳がピクッと動く。
九尾「……供物が……増えるのだな……?」
オカン「そらもう、観光客が勝手に供えてくれるで。うちの“特製おいなりさん(銅貨3枚)”も置いとこか?」
太郎「値段つけるな!!」
続けて太郎は魔導列車の話をした。
太郎「魔導列車は、遠くからでも物を運べる便利な乗り物や」
九尾「……供物も……運ばれてくるのか……?」
オカン「せやで。冷めへんように保温箱に入れて運んだら最高や」
太郎「なんでおいなりさん前提やねん!」
九尾の目がギラッと光った。
九尾「それは……良いものだ」
太郎「嫌な予感しかしない!」
そこへ技術者が地図を広げる。
技術者「ただし、魔導列車を通すには一年ほどかかります。山、森、川……整備が大変でして」
太郎「まあ普通はそれくらいやろな」
オカン「一年も待ったら、おいなりさん干からびるで」
太郎「そこ心配するんかい!」
九尾の尾がピタリと止まった。
九尾「一年……?」
尾巫女「主よ、悠久の時間を過ごすわれらにとって長い時間ではないのでは……?」
九尾「そんなに……待てぬ……」
太郎「なんでそんな必死なん!?」
九尾「供物が……一年も届かぬのか……?」
オカン「九尾さん、食い意地すごいな。うちの親戚のタケシよりすごいわ」
太郎「知らん親戚出すな!」
九尾は真剣な目で太郎を見つめた。
九尾「……どのように整えればよい……?」
太郎「え、いや……道を作って、地面を均して、橋を架けて……」
技術者「山を削り、川に橋をかけ、森を切り開き……」
オカン「ついでに道の横に“狐森名物・揚げまんじゅう”の屋台置こか?」
太郎「勝手に名物作るな!!」
九尾「……なるほど……」
太郎「理解早すぎへん!?」
九尾は立ち上がり、九本の尾を広げた。
九尾「供物のため……やるしかあるまい」
オカン「よっしゃ、九尾さん! 気合いや!」
太郎「煽るな!!」
翌朝。太郎たちが狐森の外へ向かうと――。
太郎「……は?」
技術者「……え?」
オニキス「……これは……」
目の前の鉄道ルートが、まるで長年の国家事業だったかのように完璧に整備されていた。
太郎「……え、昨日の今日やぞ……?」
九尾は胸を張り、九本の尾をふわりと揺らした。
九尾「そなたの街から帝都までの整備をしておいたぞ」
太郎「軽いノリで言うな!!」
そのとき――
森の外から馬の蹄の音が近づいてきた。
技術者が馬から転げ落ちる勢いで飛び降り、息を切らしながら叫ぶ。
技術者「た、太郎様ッ! 大変ですッ!」
太郎「いや、もう大変なのは見たら分かる!」
技術者「ここから約10km先まで調べてきました!山は綺麗に切り開かれ、川には巨大な石橋が架かり、森は自然を残しつつ道が通され、地面はきれいに平になっています!」
太郎「ほんまに全部やっとるやん!!」
技術者「詳しく調査は必要ですが……レールを敷設するだけで鉄道は完成します!」
太郎「完成間近やん!!」
その瞬間、太郎の魔導通話が鳴った。
蒼真『太郎、聞こえるか? 王国側の魔物はあらかた討伐した。ただ――』
蒼真の声が少し困惑している。
蒼真『昨晩、白い魔物が太郎の街の方向に駆けていったんだが……そのあとに、平地の道ができている』
太郎「白い魔物……九尾やん!!」
オカンが腕を組んで頷く。
オカン「仕事早っ! うちのパートさんより早いわ!」
太郎「比較対象おかしいやろ!」
九尾は誇らしげに胸を張る。
九尾「供物のためだ」
オカン「食欲は文明を動かすんやなぁ」
太郎「名言みたいに言うな!」
太郎は狐森の異常な整備状況を確認したあと、急いで帝都の商会へ戻った。
扉を開けた瞬間、玲奈とティナが書類を抱えて駆け寄ってくる。
玲奈「太郎くん、商会の売り上げが当初予想の3倍になっています。ニシキ商会とアゲート商会の売り上げも増えているそうです」
太郎「3倍!? なんでそんな急に……」
ティナ「フードコートも連日盛況で客足が落ちません。特に“揚げ物系”が異常に売れてます」
オカンが胸を張る。
オカン「そらそうよ。うちの“揚げもん三種盛り”が人気やねん」
太郎「いつの間にそんなメニュー作ったん!?」
オカン「昨日の夜に思いついて、今朝もう売ってるで」
太郎「行動力どうなっとんねん!」
ティナが苦笑しながら補足する。
ティナ「しかも……“三種盛り”って言いながら、日によって中身が違うんです」
太郎「統一せぇ!!」
オカン「その日の気分で変わる“おかんガチャ”や。若い子に人気やで」
太郎「ガチャ要素いらん!!」
玲奈が書類を見ながら続ける。
玲奈「それと……太郎くんの街からの観光客も増えています。“狐森の神様に会えるかも”という噂が広まっているようで」
太郎「いや、九尾が観光資源みたいになってるやん!」
オカン「そらそうよ。神様が本気出して土木工事したんやから、そら話題にもなるわ」
太郎「本気出す理由が“供物”やったけどな!」
その瞬間、太郎の視界に光が走る。
【条件を達成しました。<商売繁盛>が<商売繁盛+1>に進化します】
太郎「また勝手に進化したーーーっ!」
オカン「太郎、商売は勢いやで。勢いあるうちに“揚げもん四種盛り”も作るで」
太郎「増やすな!!」
ティナ「……でも売れそうですね」
太郎「ティナまで乗るんかい!」
そして1か月後。
帝国史上最速で、魔導列車が帝都から狐森まで開通した。
駅は立派に建ち、その隣には新しい神社――“狐森稲荷”が完成していた。
参道には狐の石像が並び、拝殿にはおいなりさんと酒が供えられている。
オカン「ほら九尾さん、今日は特製おいなりさんやで。揚げにちょっと柚子入れてみた」
九尾「……良き供物だ……」
太郎「完全に食い意地で文明が進んでるやん!」
九尾が満足げにおいなりさんを食べている横で、太郎は頭を抱えた。
その瞬間――
太郎の視界に、まばゆい光が走った。
【文明レベルの上昇が確認されました】
【<文明開化>を取得しました】
太郎「お、おお……?」
続けて、さらに強い光が太郎のステータスを包む。
【これにより上位スキル<経世済民>を取得しました】
【<領地繁栄+3><商売繁盛+1><文明開化>は<経世済民>の下位スキルになります】
太郎「なんかすごいの出てきたーーーっ!」
オカン「太郎、あんたまた光っとるで。最近の子はすぐ光るなぁ」
太郎「最近の子扱いすな!」
九尾が太郎に九本の尾を向ける。
九尾「……さらなる恩寵だ」
太郎「またかい!」
九尾が静かに息を吸い込むと、九本の尾の先から光の粒子がふわりと舞い上がり、太郎の体へ吸い込まれていく。
太郎「うわっ……なんやこれ……?」
【加護:<狐森の感謝> が与えられました】
【<神気耐性(微)> が <神気耐性(弱)>に進化します】
太郎「これ、なんや……?」
九尾「神社に供えられた“おいなりさんの総数”で、そなたの纏う神気が上昇する」
太郎「供物の数で神気が増えるん!? そんなRPG聞いたことないで!」
九尾「供物は力……常識だ」
太郎「九尾の世界の常識をこっちに持ち込むな!」
オカン「ほな太郎、神気上げるために“百個限定いなり祭り”やろか」
太郎「イベント化すな!!」
九尾「……百個……良い響きだ」
太郎「乗るな九尾ーーーっ!」
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【山田太郎】
職業:あきんど レベル:1(固定)
■ 基本ステータス
筋力:C+ 敏捷:A- 体力:B-
魔力:B 精神:B- 知力:C
器用:B 幸運:E+
■ 内部ステータス
内部レベル:84
内部補正:全ステ+300%
内部幸運:S
■ ユニークスキル
<オカン>
└<鑑定+3> <経験値運用> <サーバーストレージ><未来予測+1> <超魔改造>
<金で解決できへんことない>
└<札束でしばく> <課金ガチャ>
■ スキル
<経世済民(new)>
└<領地繁栄+3> <商売繁盛+1(進化)> <文明開化(new)>
<魔法>
└<属性魔法> <魔力制御上級> <解呪> <ゴーレム操作>
<武術中級>
└<回避+2> <串うち乱れ撃ち>
<剣術中級>
└<レイピア中級> <高速刺突・極> <二刀流基礎> <ハヤブサ嵐舞>
<耐性>
└<熱耐性+3> <氷耐性+2> <精神抵抗> <おかんの手>
<神気耐性(弱)(進化)>
■ 加護
<勇者との絆><狐森の感謝(new)>
■ 装備
神維軽装防具+2
オリハルコン製コテ+2
オリハルコン製ピック+2
オリハルコン製包丁+2
ミスリル製串+2
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太郎「九尾、ほんまに文明引っ張ってる自覚あるんか?」
九尾「供物のためなら、山一つくらい動かせる」
太郎「動機がピンポイントすぎるわ!」
オカン「太郎、文明ってのはな、腹が満たされてから進むんやで」
太郎「名言っぽいけど絶対違う!」
ティナ「でも……実際、九尾さんのおかげで鉄道できましたし」
太郎「ティナまで肯定すな!」
九尾「供物があれば、さらなる発展も可能だ」
太郎「なんで未来の鍵が“おいなりさん”なん!?」
オカン「太郎、いなりは万能や。甘い、安い、腹持ちええ」
太郎「三拍子そろってるみたいに言うな!」
九尾「……供物の追加、期待している」
太郎「プレッシャーかけてくる神獣やめて!」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




