第103話 ヒョウガミ食堂、帝都に光る
帝国支店のフードコート――通称「ヒョウガミ食堂」は、朝から熱気に包まれていた。
鉄板の焼ける音、鍋を振る金属音、香ばしい匂いが入り混じり、まるで戦場のようだ。
学生たちが食材を運び、料理学校の卒業生が鍋を振り、帝都の応募者たちが皿を並べる。
太郎は中央で全体を見渡し、落ち着いた声で指示を出していた。
太郎「そっちの麺、もう少し茹で時間短くしてな。回転上げよ」
ティナ「了解です。太郎さん、今日は冴えてますね」
その横で、オカンが鉄板の前に仁王立ちしていた。
エプロンを締め、腕まくりした姿は、もはや“粉もんの将軍”である。
オカン「よっしゃ、帝都の胃袋つかんだるで! 粉もんは平和の象徴や!」
太郎「象徴なん!?」
オカン「せや。粉もん嫌いな人間はおらん。世界を救うんは粉もんや」
太郎「規模デカすぎるわ!」
コハクとマッチャは太郎の周囲を見守り、オニキスは帝国側の立会いとして堂々と構えていた。
試食会が始まると、帝国貴族、商人、軍関係者、皇城の料理人まで来場し、フードコートは一気に活気に満ちた。
パン、麺、菓子、キョウ帝国料理、家庭料理アレンジ――どの屋台も行列ができ、歓声が上がる。
特にオカンの「ヘイアン焼き(帝国限定たこ焼き)」は大人気で、貴族まで並んでいた。
オカン「ほらほら、並んでる貴族はん! 焼きたてやで! アツアツやから気ぃつけや!」
貴族「は、はいっ!」
太郎「なんで貴族がオカンに敬語やねん……」
オカン「粉もんの前では皆平等や。民主主義や」
太郎「粉もん民主主義てなんやねん!」
太郎は落ち着いて状況を見守り、必要なところにだけ声をかける。
やらかしは一切なし。むしろ頼もしさが際立っていた。
その頃、酔っぱらった商人がふらふらと食堂奥へ歩いていった。
商人「なんや……奥が光っとる……?」
そこにはヒョウガミ像が静かに鎮座していた。商人は冗談半分で、手に持っていたたこ焼きを像の手のひらに置く。
次の瞬間、たこ焼きが光の粒となり、商人にふりそそいだ。
商人「……なんやこれ……めっちゃ幸せな気分や……!」
その様子を見た数人が、同じようにたこ焼きを供える。すると同じように光が舞い、彼らの表情が明るくなる。
ひよりが胸の前で手を組み、にっこり微笑んだ。
ひより「ヒョウガミ様の加護が皆さまにありますように」
オカン「ほら見ぃ太郎はん! 粉もんは神も喜ぶんや!」
太郎「いや、たこ焼き限定やろ!」
どの屋台にも長蛇の列ができ、スタッフたちは声をそろえて叫んだ。
スタッフ一同「開店は一週間後になります! ぜひご贔屓に!」
帝都の人々は期待に胸を膨らませて帰っていく。
試食会終了後、ティナはすぐに判断を下した。
ティナ「……これは想定以上です。食材は予定の150%で準備します」
太郎「そんなに増やして大丈夫なんか?」
ティナ「むしろ足りないかもしれません」
オカン「せやせや! 粉もんは無限に売れるで! 粉もんは通貨や!」
太郎「通貨ちゃうわ!」
その後、スタッフ全員で反省会が行われ、学生たちは改善点を出し合い、太郎は的確にアドバイスを送った。
一週間後。
開店前からヒョウガミ食堂の前には大行列ができていた。
客A「ヒョウガミ像にたこ焼き供えたら幸運が訪れるらしいで」
客B「試食会で供えた商人、翌日に大口契約取ったらしいわ」
客C「ワシも供えに行くで!」
太郎「……なんか宗教っぽくなってへん?」
オカン「ええやん。粉もん教や」
太郎「勝手に宗教つくるな!」
開店の様子を見に来たモンドが、太郎の横に立つ。
モンド「コハク、太郎殿がやらかしているように見えるのは気のせいか?」
コハク「モンド兄様……うちは、ほんの少し目を離しただけどす」
太郎「俺、何もしてへんで!」
オカン「太郎は存在がやらかしや」
太郎「ひどない!?」
モンドは苦笑しつつも、店の盛況ぶりに満足げにうなずいた。
モンド「……まあ良い。これほどの賑わい、帝都にとっても喜ばしい」
太郎「ありがとうございます」
開店初日から大成功。
ヒョウガミ像の噂は帝都中に広がり、フードコートは新たな名所として注目される。
太郎「……なんか、えらいことになってきたな」
オカン「ええやんええやん! ヒョウガミ様も喜んどるわ!」
太郎「いや、どうやろ……?」
オカン「太郎はん、粉もんは世界を救うんやで。しらんけど」
太郎「最後の“しらんけど”やめぇ!」
帝都の夜風が、賑わいの余韻を運んでいく。
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オカン「太郎はん、開店前に腹ごしらえしとき。空腹は判断力を鈍らせるで」
太郎「いや、今食べたら仕事にならんやろ」
オカン「大丈夫や。粉もんは胃に優しい」
ティナ「油の塊なんですが……」
オカン「愛が詰まっとるからゼロカロリーや」
太郎「どこの理論やねん!」
コハク「オカン殿、太郎様を太らせる気ですか」
オカン「太郎はんはちょっとくらい丸い方が可愛いねん」
太郎「勝手に丸くすな!」
マッチャ「太郎様、開店前に走りますか?」
太郎「なんで運動させられんねん!」
オニキス「太郎殿、落ち着け。私は丸くても細くても味方だ」
太郎「殿下まで何の話してんねん!」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




