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追放された録画士、配信で無双する 12話完結  作者: もかどら


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9/12

第9話 護送の途中で

レイが受けたのは、地方の商会が抱える荷の護送依頼だった。


報酬は悪くない。

だが、依頼書の文面には妙な空気があった。

「途中で荷が狙われている」「護衛が必要」「できれば落ち着いた人材を」と、やけに念押しが多い。

「……なんか、嫌な感じだな」

そう呟きつつも、レイは依頼を引き受けた。

最近は、こういう“少し重い”仕事が回ってくることが増えている。

それだけ自分が頼られ始めている、ということでもある。

荷馬車は街を出て、舗装の甘い街道を進む。

荷は布で覆われていて、中身は見えない。

同行する商会の男は、神経質そうに周囲を見回していた。

「何が入ってるんですか?」

「……薬だよ。とても重要な薬だ。詳しくは言えない」

レイはそれ以上聞かなかった。

依頼の内容よりも、まずは道を無事に通すことが先だ。

だが、走り出してすぐに違和感があった。

街道の脇の草が、妙に揺れている。

風ではない。

誰かが潜んでいる。

『来るぞ』

『護送回っぽい』

『こういうの好き』

『レイ、慎重にいけ』

コメントが流れる。

レイは荷馬車の後ろを見ながら、周囲の気配を探った。

「……止まれ」

「え?」

「一回止まってください」

商人が顔をしかめる。

「何かあるのか」

「多分、来ます」

その言葉の直後だった。

草むらから飛び出したのは、小型の魔物だった。

一体ではない。

三体。

しかも、単なる野生種ではなく、やけに統率が取れている。

「まずいな……」

護衛役の男たちが剣を抜く。

だが、荷馬車が走っている状態では、戦いづらい。

このままでは、荷が転がる。

レイはすぐに判断した。

「荷を止めます。左に寄せてください」

「できるのか?」

「今やるしかないです」

荷馬車を街道の外へ寄せ、木の根が少ない場所へ止める。

その瞬間、魔物たちが一斉に飛びかかってきた。

「録画開始」


【録画中】

【残り時間:30分】


一体目を受け流す。

二体目をかわす。

三体目が後ろへ回り込む。

「っ――」

護衛が一体を討つが、残り二体がしぶとい。

しかも、荷馬車の周りをうろつきながら、わざと接近してくる。

「……誘ってるのか」

どうやら、ただの獣ではない。

何かに操られているような動きだった。

レイは一瞬だけ迷う。

この手の相手は、普通に倒すより、動きを崩した方が早い。

だが、その判断をする前に、魔物の一体が護送用の箱へ飛びついた。

「っ、ダメだ!」

レイは反射的に飛び込む。

魔物を弾き飛ばすが、代わりに自分が荷馬車の側面へ打ちつけられた。

痛みが走る。

「録画再生!」


【再生を開始します】


戻る。

少し前。

まだ魔物が箱へ飛びかかる前だ。

「……やっぱり、そこが狙いか」

レイは息を吐き、今度は箱の位置を先に動かした。

外へ。

荷馬車の陰ではなく、すぐに守れる場所へ。

護衛にも指示する。

「箱を後ろに下げてください。狙われるのはそこです」

「分かった!」

魔物たちは再び飛びかかる。

だが、狙いが見えていれば対処できる。

一体目を護衛が討つ。

二体目はレイが木の支柱へ誘導して動きを止める。

最後の一体が諦めず飛び込んでくるが、そこへ商人が投げた石袋が直撃した。

「……え?」

「これでも商人だ。伊達に荷を扱ってない」

その一瞬で、レイは笑ってしまった。

少し緊張が解ける。

そして、その隙を逃さず、最後の一体を棒で打ち伏せた。


【護送成功】

【視聴者数が増加しました】

【注目度が上昇しました】


『今の連携よかった』

『商人も動いたの熱い』

『護送回なのに面白い』

『レイ、場を回せるの強い』

荷馬車は無事だった。

商人は深く息を吐き、レイに頭を下げる。

「助かった……本当に」

「いえ、こっちこそ。狙いが分からなかったら危なかったです」

「それでも、普通の冒険者なら慌てて終わっていた。君は違う」

レイは少しだけ目を細めた。

普通。

その言葉は、もうあまり似合わなくなってきている気がする。

依頼の後、報酬を受け取ったレイのもとへ、ギルドの職員が小声で寄ってきた。

「レイさん、次から少し難しい依頼を回しても大丈夫そうですね」

「難しい依頼?」

「ええ。人手が足りない案件とか、現場判断がいる仕事です。……最近、名指しであなたを希望する依頼主も増えてます」

レイは封筒を受け取りながら、少しだけ考えた。

依頼が来る。

信頼される。

そして、向こう側ではそれが“見ごたえのある配信”として消費されている。

その循環が、少しずつ回り始めている。

『ここで仕事の幅が広がる』

『もう新人感ないな』

『次、大仕事来そう』

『レイ、完全に定着した』

レイはコメントを見て、肩をすくめた。


「……定着って何だよ」

だが、否定する気にはなれなかった。

追放された頃の自分は、何も持っていなかった。

今は違う。

力があり、見ている者がいて、任される仕事がある。

その実感は、思ったよりも悪くない。

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