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追放された録画士、配信で無双する 12話完結  作者: もかどら


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第8話 評価の変化

ギルドの掲示板の前は、相変わらず人でごった返していた。


「……増えてるな」

レイは小さく呟いた。

依頼の数ではない。

自分を見る目のほうだ。

以前なら、掲示板の端で静かに依頼を受けるだけだった。

だが最近は、通りすがりの冒険者が彼の顔を見て、少しだけ話題にすることが増えている。

「倉庫の件、あいつが片づけたらしいぞ」

「荷を崩さずに魔物だけ倒したって」

「地味にすごいよな」

「いや、かなりすごいだろ」

レイは聞こえないふりをした。


だが、まったく気にならないわけでもない。

以前の自分なら、追放された負い目で目を逸らしていただろう。

今は少し違う。

言われるだけの結果を出している、という自覚がある。

受付へ向かうと、いつもの女性が少し笑っていた。

「レイさん、今日は指名依頼が来ています」

「……またですか」

「ええ。倉庫の商人さんから。前回、すごく助かったらしくて」

レイは受け取った紙を見た。

内容は単純な護送兼見回り。

だが、他の冒険者よりも彼を指定してきている。

「指名、増えてきましたね」

「そうなんです。最近は、危険な仕事より“立て直しがうまい人”として頼まれることが多くて」

「立て直し……」

自分ではあまり意識していなかった。

だが、言われてみると、確かにそうかもしれない。

戦って押し切るより、崩れた状況を戻す。

それが自分のやり方になっている。

『ギルド評価上がってる』

『ここで地盤固め回か』

『主人公としてすごくいい流れ』

『注目株から信頼株へ』

「……信頼株って何だ」

レイは視界の端に流れる文字を見て、少しだけ眉をひそめた。

だが、コメントはやけに一致している。

向こう側では、レイの評価が段階的に上がっているらしい。


---


その日の依頼は、街の外れにある小さな橋の補修見回りだった。

橋の下は浅い川だが、流れは速い。

荷車が通るたびに、古い板がきしむ。

このままでは、早晩崩れる。

依頼内容は、危険がないかを確かめること。

だが実際は、かなり面倒な仕事だ。

「録画開始」


【録画中】

【残り時間:30分】


橋に近づくと、板の一部がすでに浮いていた。

「……もう危ないな」

足を踏み入れた瞬間、ギシッと嫌な音がする。

板の隙間から、川の流れが見えた。

その時、下流の茂みが揺れた。

「っ!」

小型の魔物が二体。

川辺から這い上がってきたのだ。

ただでさえ不安定な橋の上で戦うには、最悪の相手だった。

『来た』

『橋の上はまずい』

『落ちたら終わる』

『立て直し回かな』

「簡単に言うな……」

レイは息を吐き、慎重に魔物へ向き合った。

一体目を受け流す。

だが、板が割れて、足場が一瞬崩れた。

「うわっ……!」

体勢を崩したままでは、次の攻撃を避けられない。

レイは咄嗟に、再生を選んだ。

「録画再生!」


【再生を開始します】


世界が戻る。

まだ橋の中央には差しかかっていない。

「……そうか」

今度は、橋の板をただ歩くのではなく、壊れそうな場所を先に確認する。

魔物を引き寄せる位置も、板の丈夫な場所を選ぶ。

橋そのものを“戦場”にしないのが大事だった。

レイはわざと手前へ下がり、相手を浅い河原へ誘導した。

すると、魔物は追ってくる。

橋の上ではなく、足場のいい場所へ。


「今だ」

一体目をかわし、二体目を木の杭にぶつける。

続けて、川辺の石を蹴ってバランスを崩させた。

短い戦いだった。

だが、落ちずに終えられたことが重要だった。

「……よし」

レイは橋の上へ戻り、崩れかけた板を確認した。

このままでは危険だ。

しかし依頼は“見回り”だ。

少なくとも、今すぐ落ちるほどではないと報告する必要がある。

「補修、必要ですね」

ギルドに戻ると、報告を受けた職員が真剣な顔になった。

「なるほど……。レイさん、こういうのも得意なんですね」

「得意っていうか、危ないから直すしかなかっただけです」

「それができる人が少ないんです」

その言葉に、レイは少しだけ黙った。

戦うだけが冒険者じゃない。

現場を見て、危険を減らして、次の人が困らないようにする。

そういう仕事もある。


そして、それを“ちゃんとやれる”ことが、評価につながっているらしい。

『評価の方向が変わった』

『討伐だけじゃなく管理もできる』

『レイ、かなり万能感ある』

『そろそろ上の人間が目をつける』

「……上の人間って誰だよ」

レイはぼやいたが、少し予感はしていた。

このままでは終わらない。

注目は、徐々に大きくなっている。

向こう側では、レイの行動がさらに面白く見え始めているはずだ。


---


夕方、ギルドを出たレイは、掲示板の隅に貼られた新しい依頼書を見つけた。

「……護送、か」

報酬は高め。

だが、同行者の名前に見覚えがあった。

地方の小規模な商会。

荷は重要。

そして、何か事情があるらしい。

「……面白そうだな」

レイは紙を外し、受付へ持っていった。

受付の女性は少し驚いた顔をしたあと、すぐに納得したように頷いた。

「やっぱり、レイさんに回ってきましたね」

「何がですか」

「この手の依頼。最近、向こうから“あなたがいい”って名指しされることが増えてるんです」

レイは紙を見下ろした。

現実では、まだそこまで派手ではない。

だが確実に、自分の名前が回り始めている。

そして向こう側では、その積み重ねが、さらに視聴者の熱を高めている。

『次、護送か』

『大きめの仕事きた』

『ここで一段上がるな』

『レイ、いよいよ本物だ』

レイはその文字を見て、少しだけ笑った。

「本物って、何だよ」

答えはまだ分からない。

だが、少なくとも今の自分は、昨日の自分とは違う。

追放された男は、少しずつ“頼られる側”へ変わっていく。

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