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追放された録画士、配信で無双する 12話完結  作者: もかどら


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10/12

第10話 裏で動くもの

護送依頼が終わって数日後、レイはギルドから呼び出しを受けた。


「……嫌な予感がするな」

呼び出し自体は珍しくない。

だが、最近は少しずつ依頼の質が変わってきていた。

単なる魔物討伐ではなく、現場判断がいる仕事。

人が絡む仕事。

そして、妙に情報が少ない仕事。

ギルドの奥へ通されると、そこで待っていたのは、見慣れない顔だった。

「レイ・アルドだな」

年の頃は四十前後。

質のいい外套を着た男で、冒険者というより役人に近い雰囲気がある。

「私は、近隣の物流を管理している者だ。……簡単に言えば、最近この街の外で、荷の行方が妙に乱れている」

「乱れる、ですか」

「盗難に見せかけた横流し、あるいは魔物被害に見せた破壊。そういうものが増えている。しかも、なぜか特定の荷だけだ」

レイは眉をひそめた。

「特定の荷?」

「薬、保存食、治療具。つまり“人が困るもの”だ」

ギルドの空気が少し重くなる。

『来たな』

『裏で動いてるやつだ』

『事件の匂い』

『ここから話が大きくなる』

レイはコメントを見ながら、静かに息を吐いた。

現実では、まだ事件らしい事件ではない。

だが、こういう違和感は放置できない。

自分の仕事が、ただの護送や見回りでは終わらなくなっているのを感じる。

「俺に、何をさせたいんですか」

「現場を見てほしい。君は、状況を立て直すのが早いと聞いている」

「……誰がそんなことを」

「評判だよ」

男はそう言って、地図を広げた。

街の外れにある倉庫街。

そこからさらに北へ抜けた旧街道。

荷が消えるのは、そのどちらかの周辺らしい。

「調査して、異常があれば報告してほしい。あくまで“目立たずに”だ」

「目立たずに、ですか」

「騒ぎにすると、相手が引っ込む。こちらとしては、尻尾を見たい」

レイは頷いた。

こういう案件は、無闇に踏み込むと逆に逃げられる。

「分かりました」

---

現場は、思ったより静かだった。

倉庫街の裏路地。

昼間だというのに人通りが少ない。

荷車の跡はあるが、妙に整然としている。

誰かが意図的に、目立たないように動いている感じがした。

「録画開始」


【録画中】

【残り時間:30分】


レイはゆっくりと歩いた。

視線の端では、コメントが静かに流れている。

『潜入回か』

『こういうの好き』

『戦う前に雰囲気が悪い』

『何か隠してるな』

「……やっぱり、何かあるか」

倉庫の並ぶ通りを抜けると、壁の陰に古い印が彫られているのを見つけた。

見慣れない形だ。

ただの落書きではない。

何かを合図にしているようにも見える。

その瞬間、背後で足音がした。


「誰だ」

振り向くと、そこにいたのはただの荷運びの男だった。

だが、視線が妙に鋭い。

「見慣れない顔だな」

「調査で来た」

レイがそう言うと、男は少しだけ笑った。

「調査、ね。ここは荷の出入りが多い。変なものを見ても、気にしない方がいい」

「……どういう意味だ」

「そのままの意味だよ」

男はそれだけ言って、倉庫の奥へ消えた。

レイはその背中を見送りながら、肩の力を抜いた。

やっぱり、何かある。

『今の怪しい』

『完全に裏の人間』

『もう当たりだろ』

『レイ、踏み込め』

「踏み込めって、簡単に言うな……」

とはいえ、このまま帰るわけにもいかない。

レイは倉庫の裏へ回り、荷の搬入口を見た。

そこにあったのは、壊れた木箱と、引きずられた跡。

そして――床にこぼれた、奇妙な粉末だった。

「……薬、か?」

いや、違う。

匂いが妙に甘い。

保存剤の類か、あるいは別の何かか。

視界の端に、小さく文字が流れる。


『これ、ただの盗難じゃない』

『何か仕込んでる』

『レイ、気づけ』

『もう事件の本丸近い』

レイは粉末を指先で少しだけ触れた。

「……何だ、これ」

その時だった。

背後の路地で、何かが割れる音がした。

「っ!」

振り向くと、荷馬車の後ろに積まれていた箱の一つが崩れている。

その中から出てきたのは――魔物を誘導するための餌に使われる、特殊な香料だった。

「これは……」

レイは表情を硬くした。

荷を消していたのではない。

人為的に“魔物が寄るように”仕込んでいたのだ。

つまり、荷の消失は偶然ではない。

誰かが、魔物を使って荷を処理している。

「……面倒だな」

『きた』

『黒幕の手口っぽい』

『護送の延長で繋がった』

『ここで繋がるの熱い』


レイはすぐに動いた。

逃げた男を追うより、今は証拠だ。

この倉庫街一帯を、もう少し探らなければならない。

だが、その先で見たものは、想像よりも厄介だった。

地下へ続く隠し扉。

その先にあったのは、荷を一時保管するための、表向きとは別の倉庫。

そこでは、いくつもの箱が積まれ、ラベルが貼り替えられていた。

「……横流し、か」

それだけならまだ分かる。

だが、その中に紛れていたのは、治療薬でも保存食でもなかった。

魔物を活性化させるための餌。

そして、冒険者を狙うための罠具材だった。

「最悪だな……」

ここで初めて、レイははっきり理解した。

この街で起きているのは、ただの密輸ではない。

人と魔物を、意図的に衝突させる準備だ。


【録画時間:残り23分】


「……時間、まだあるな」

レイは視界の端に表示を見て、深く息を吸った。

まだ何とかなる。

だが、ここから先は軽くない。

地下倉庫の奥で、再び足音がした。

今度は複数。

どうやら、気づかれたらしい。

『見つかった』

『戦闘くる』

『でも証拠は掴んだ』

『ここで一回戻るか?』

レイは棒を握り直した。


「……戻るのは、もう少しあとだ」

まずは、目の前の連中をどうにかする。

そして、ここがただの裏倉庫ではなく、もっと大きな何かの入口だと確信した。

追放された録画魔法士は、ようやく“個人の成り上がり”を超えた場所に足を踏み入れ始めていた。

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