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追放された録画士、配信で無双する 12話完結  作者: もかどら


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第6話 崩れた依頼

朝一番、レイのもとに新しい依頼が来た。


内容は単純だった。

街道沿いの荷物運搬を手伝うだけ。

護衛が付くとはいえ、危険度は低い。

報酬もそこそこ。

そして何より、目立ちすぎない。


「……こういうのでいいんだよな」

レイは封筒を見ながら、そう呟いた。

最近は少しずつ名前が広がってきた。

とはいえ、毎回危険な場所に行っていたら身体がもたない。

今日は、地味でいい。

地味で、確実に終わらせる。

そう思っていた。

だが、現場に着いた瞬間、嫌な予感は当たった。

護衛対象の荷車が、すでに半壊していたのだ。

「……え?」

積まれていた木箱がずれ、固定用の縄が切れ、車輪の軸まで歪んでいる。

どう見ても、今から街道を走れる状態じゃない。

依頼主の商人は、顔を真っ青にして頭を下げた。

「すまない! 出発前に点検していたんだが、途中で誰かにやられたらしい!」

「……誰かに?」

「たぶん、近くの魔物か、ただの野盗か……」

レイは荷車を見た。

そして、周囲の護衛を見た。

皆、困っているだけで、すぐにどうこうできる感じではない。

このままでは依頼は失敗する。

商人は困る。

護衛も面目を失う。

そして何より――視聴者が、かなり面白がる気配がある。

『始まった』

『事故回だ』

『こういうの好き』

『戦闘じゃなくてトラブル処理のやつ』

「……何が始まってるんだよ」

レイはため息をついた。

とりあえず、壊れた車輪を見た。

軸が曲がっている。

このままでは進めない。

木箱の中身は、街で急ぎ必要とされている薬品らしい。

時間もない。

「直すしかない、か」

「できるのか?」

商人が不安そうに聞く。

「やるだけやってみます」

レイはそう答え、荷車の下にしゃがみ込んだ。


---


作業は思ったより厄介だった。

縄を結び直し、軸を叩き、木箱の重さを調整する。

だが、直したそばから別の部分が崩れる。

車輪の位置が少しでもずれると、荷車全体が傾く。

「くそ……」

何度目かの失敗で、レイはようやく理解した。

これはただの修理じゃない。

荷の重心ごと直さないとダメだ。

だが、今のままでは時間が足りない。

『一回戻るべき』

『これ、普通に詰みそう』

『修理パート熱い』

『レイの手際よく見えるのが良い』

レイはコメントを見て、少しだけ目を細めた。

「……戻るか」


【録画中】

【残り時間:24分12秒】


すでに少し時間を使っている。

だが、ここで止まるわけにはいかない。

レイは一度、荷車から離れ、状況を頭の中で整理した。

壊れているのは車輪だけじゃない。

荷の固定も甘い。

そして、商人たちも焦りすぎて、無駄に動き回っている。

つまり――失敗の原因は、ひとつじゃない。

「……全部、見直す」

レイはそう言って、少し前に戻る位置まで録画を再生した。


【再生を開始します】


世界がひっくり返る。

出発直後。

まだ荷車は完全には壊れていない。

「よし……今度は、最初からやる」

レイは商人に指示を出した。

荷の一部を降ろすこと。

軸を補強すること。

重い箱を下に寄せること。

護衛には、周囲の草むらを先に確認すること。

最初は商人も戸惑っていたが、レイがはっきりと指示を出すと、皆が動いた。

『指揮してる』

『こういうのもできるのか』

『死に戻りって戦闘だけじゃないんだな』

『面白い』

荷車の修理は、今度は少しずつ進んだ。

レイは棒を使って車輪を支え、歪んだ軸を戻す。

重心を合わせ、縄を巻き直し、木箱の位置を調整する。


一度崩れたものを、根本から組み直す感覚だった。

「……これで、いける」

最後に荷車を押す。

軋んだ音がしたが、ちゃんと前へ進んだ。

「動いた!」

商人が声を上げる。

レイは手の甲の汚れを払いながら、少しだけ息を吐いた。

だが、その安心は長く続かなかった。

街道の脇の茂みが揺れたのだ。

「っ……!」

飛び出してきたのは、小型の魔物だった。

一体ではない。

二体、三体。

護衛が構える。

だが、荷車の立て直しで少し時間を使いすぎている。

今、戦闘に入れば、荷がまた崩れるかもしれない。

「……仕方ない」

レイは棒を握り直した。

ここまで来たら、全部まとめて終わらせるしかない。

魔物が飛びかかる。

レイは一体をかわし、わざと荷車の影へ誘導した。

狭い場所なら、数は減る。

護衛も動きやすくなる。

「今だ!」

一体目が荷車にぶつかって体勢を崩した瞬間、護衛が叩き伏せる。

二体目はレイが受け、三体目を商人の荷台の支柱に引っ掛けた。


『連携いい』

『即席パーティー感ある』

『修理したあと戦うの熱い』

『今回かなり好き』

最後の一体がしつこく食らいついてきたが、レイは冷静だった。

戦う場所も、時間も、すでに自分の思うように動いている。

「録画再生」

必要最小限だけ戻り、相手の突進を避ける。

位置をずらし、護衛の剣筋に流す。

そして、終了。

魔物は倒れた。


---


街に着いたのは、夕方だった。

本来なら、荷車の修理で出発がかなり遅れるはずだった。

だが、レイのやり直しで、なんとかその日のうちに届けきれた。

商人は深く頭を下げた。

「助かった。本当に助かった」

「いえ……」

レイは肩をすくめた。

戦って勝ったというより、事故を立て直した感覚のほうが強い。

だが、向こう側の視聴者は違った。

『今日の回、地味に神』

『こういうのも見たい』

『死に戻りの使い方が広い』

『配信として強い』

レイは、表示を見ながら少しだけ笑った。

自分の力は、ただ敵を倒すだけじゃない。

壊れたものをやり直すことにも使える。

それを見て、向こう側はまた少し熱くなる。

「……なるほどな」

派手な勝利ではない。

だが、こういうのもあると、配信の呼吸が変わる。

レイは荷車の車輪に視線を落とした。

たとえ途中で崩れても、

戻って、組み直して、進めばいい。

それが、彼のやり方になり始めていた。

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