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追放された録画士、配信で無双する 12話完結  作者: もかどら


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5/12

第5話 向こう側で伸びる

レイは、朝から少しだけ嫌な予感がしていた。


理由は単純だ。

昨日までより、森の空気が静かすぎる。

そして、視界の端に流れるコメントが、妙に熱を帯びているからだ。

『今日の依頼、当たりっぽい』

『レイ、ちょっと有名になってきた』

『死に戻りの見せ方うまいんだよな』

『今回バズるぞ』

「……バズるって、何なんだよ」

レイは小さく呟いた。

相変わらず、意味のわからない言葉は多い。

だが、向こう側の視聴者が自分の動きを追っていることだけは、もうはっきり分かっていた。

今日は、街の外れにある古い遺跡の調査依頼だ。

崩れかけた石造りの建物で、足場は悪く、罠も残っている。

危険はあるが、昨日までのレイなら避けたかもしれない。

今は違う。

「録画開始」


【録画中】

【残り時間:30分】


遺跡の中は薄暗く、湿った空気がこもっていた。

足音がやけに響く。

壁には古い模様が刻まれているが、かなり崩れていて、読み取れない。

レイは慎重に進んだ。

すると、足元で小さく何かが鳴る。

カチリ。

「っ!」

とっさに跳んだ瞬間、床が沈んだ。

その直後、天井の隙間から細い石片が落ちてくる。

もし一歩遅れていたら、肩か頭を打っていた。

『おっ』

『罠きた』

『反応早い』

『今のは死ねたぞ』

レイは息をつく。

「……危ないな」

罠を越えた先で、広間に出た。

そこには丸い体の小型魔物が、五体ほど群れていた。

動きは鈍い。だが、数は多い。

「五体か……」

昨日までのレイなら、数が多いだけで面倒に感じただろう。

だが、今は少し違う。

ここでどう動くかで、見られ方が変わる。

それが分かるようになっていた。

『来た来た』

『ここからが本番』

『一回ミスって修正するやつだ』

『レイの得意な場面』

「得意とか言うな……」

そう返しつつ、レイはあえて中央へ踏み込んだ。

魔物たちの注意を引くためだ。

一体が飛びかかる。

レイはそれを受け流すが、次の一体が背後へ回り込む。

さらにもう一体が、足元を狙ってくる。

「っ、くそ……!」

数の圧が厄介だ。

無理に押し切れば、どこかで捕まる。

レイは一度、棒で魔物を押し返したが、そのまま壁際へ追い込まれた。

爪が肩をかすめる。

浅い。

でも、ここで続けて食らうのはまずい。

「録画再生」


【再生を開始します】


世界が戻る。

数秒前、魔物たちがまだ広間の中央にいる位置だ。

「……なるほど」

レイは肩を回した。

この相手は、数はいるが連携が甘い。

なら、同時に相手をする必要はない。

一体ずつ切り離せばいい。

今度は、広間の奥へは入らない。

手前の通路に一体だけ誘い込む。

『お、分断』

『わかってる』

『初見でこれできるのえらい』

『見ごたえ出てきた』

「見ごたえって……」

レイは少しだけ苦笑した。

一体目が通路へ来る。

狭い場所では、数の意味は薄い。

レイは魔物の突進をかわし、棒を叩き込んだ。

倒れる。

続けて二体目。

三体目も、通路の詰まりを利用して崩す。

だが、最後の一体だけは想定より速かった。

「っ――」

爪が迫る。

避けきれない。

レイは反射で叫ぶ。

「録画再生!」


【再生を開始します】


戻る。

今度は、最後の一体を最初に引き出す。

『おお』

『順番変えた』

『ここで修正するの気持ちいい』

『見てる側、めっちゃ楽しい』

魔物は単純だが、順番を変えるだけで危険度が大きく変わる。

最後の一体を最初に処理し、残りを順番に崩す。

そうすれば、事故は減る。

レイは狭い通路へ誘い込み、確実に仕留めた。

五体目が倒れた瞬間、視界の端に文字が浮かぶ。


【討伐成功】

【視聴者数:大幅増加】

【注目度が上昇しました】


「……また増えた」

レイは少し呆れたように呟いた。

だが、コメント欄はそれどころではない。

『この回いい』

『失敗からの修正が上手い』

『見てて気持ちいい』

『レイ、完全に配信向き』

「配信向き……」

その言葉が、なんとなく胸に残った。

最初は偶然だった。

ただ死に戻っているだけで、見せるつもりなんてなかった。

けれど今は違う。

どう動けば面白いか。

どう動けば危険か。

どう動けば、次の一手が映えるか。

レイは、少しずつ考えるようになっていた。


---


遺跡の外へ出ると、空はもう傾いていた。

レイは報酬を受け取りながら、ふと気づく。

今日は、依頼主の態度も少し違った。

「最近、あんたの話をよく聞くよ」

男はそう言って、封筒を渡してきた。

「危ない仕事でも、うまく片づけるってな。……あんた、ただの新人じゃないだろ」

レイは受け取った封筒を見下ろした。

現実では、まだ大きな変化はない。

ただの冒険者として、少し名前が広まっただけだ。

だが、向こう側では違う。

視聴者数が増え、熱量が上がり、

彼の戦いは“見るもの”として成立し始めている。

『現地でもじわじわ広まってる』

『でも本命は向こうの反応だな』

『次の回で一気に来そう』

『レイ、もう配信者だよ』

「……変な感じだな」

レイはそう呟いて、空を見上げた。

見られている。

それが、少しだけ重くて、少しだけ心地よい。

その日から、レイは“ただ生き延びる”だけではなく、

どう見られるか まで考えて動くようになる。

異世界の視聴者は、その変化にさらに熱狂していった。

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