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追放された録画士、配信で無双する 12話完結  作者: もかどら


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3/12

第3話 制約

レイは、朝起きてすぐに視界の端を確認した。


【録画可能時間:30分】


「……本当に戻ってるな」

昨日の夜、ほとんど残っていなかった表示が、朝にはきっちり満タンになっている。

それだけで、昨日までの“死に戻り”が夢ではなかったと実感できた。

だが、安心はできない。

使い切れば、その日はもう終わりだ。

どれだけ強くても、無限ではない。

「今日は、無駄に使わない」

レイは独りごちて、街の外れにある坑道跡へ向かった。

昨日倒した魔物の痕跡がまだ残っている場所だ。

初心者には危険だが、今のレイにとってはちょうどいい。

能力を試すには、少しだけ歯ごたえがある相手が必要だった。

坑道の入口は、相変わらず薄暗い。

湿った空気がひんやりとして、足音がよく響く。

「録画開始」

表示が出る。


【録画中】

【残り時間:29分58秒】


「よし……」

レイは慎重に歩き出した。

昨日までと違うのは、ただ進むだけではなく、使うタイミングを考えていることだった。

むやみに再生すれば、その日が終わる。

だが、ここぞという場面で使えれば、命は拾える。

しばらく進むと、前方の暗がりから低いうなり声が聞こえた。

「……来たな」

小型の魔物が二体。

昨日より少しだけ動きが速い。

体つきも硬そうだ。

「まずは一回、見せてもらうか」

レイはあえて石を転がした。

一体が反応して飛び出す。

それに合わせてもう一体が回り込む。

単純だが、嫌らしい連携だ。

「っ……」

レイは棒を振るって一体目をいなしたが、二体目の爪が肩をかすめた。

浅い。

しかし痛い。

「録画再生」


【再生を開始します】


世界が戻る。

数秒前、まだ相手が飛び出す前の位置だ。

「……ふう」

レイは一度息を整えた。

ここで大事なのは、ただ戻ることじゃない。

何が起きたら危ないかを覚えることだ。

再び同じ場所を進む。

今度は、石を転がす位置を少し変える。

一体目の反応を見てから、二体目が回り込む前に横へ下がる。

「そう来るなら……!」

今度は回り込ませない。

相手の連携を崩すように、狭い通路へ誘導する。

一体ずつしか来られない。

なら、数の意味がない。

レイは棒を叩きつけ、まず一体を倒した。

もう一体は焦って飛びかかる。

だがその動きは単調だ。

「見えた」

横へずれる。

魔物の勢いが空を切る。

その隙に、レイは背後から一撃を入れた。

二体目も崩れ落ちる。

「……勝った」

短い勝利だった。

だが、前よりずっと手応えがある。


視界の端では、コメントが流れ続けていた。

『だいぶ慣れてきたな』

『これ、考えて使ってるのがいい』

『1日制限あるなら熱い』

『無双じゃなくて成長って感じだ』

レイはその文字を見ながら、少しだけ頷いた。

無制限の力ではない。

だからこそ、判断が必要になる。

どこで使うか。

どこで温存するか。

そして、今日はもうここまでで十分か。

「……まだいける、か?」

そう呟いて、坑道の奥を見た。

昨日より奥。

昨日より危険。

だが、録画時間はまだ十分ある。

進む価値はある。

問題は、使い切った後にどうするかだ。

---

坑道の奥で待っていたのは、昨日より大きな魔物だった。

黒い皮膚。

鈍い目。

太い腕。

「……でかいな」

レイは正直にそう思った。

普通に戦えば、まず勝てない。

しかも相手の動きは鈍そうでいて、踏み込みだけは異様に速い。

「録画開始」

表示が出る。


【録画中】

【残り時間:18分21秒】


「よし……一回は見れる」

レイはわざと石を投げ、相手の動きを引き出した。

魔物が踏み込む。

重い一撃。

地面が揺れる。

「っ!」

かろうじて避けたが、風圧だけで体勢を崩された。

次の一撃は避けきれない。

そう判断したレイは、迷わず叫ぶ。

「録画再生!」


【再生を開始します】


戻る。

今度は、攻撃の前。

相手の重心の乗せ方が見えている。

「……なるほど、踏み込む前に右肩が下がるのか」

一度見れば、わずかな癖でも分かる。

それが“やり直し”の強みだった。

レイは息を整え、次の動きを待つ。

魔物が踏み込む。

今度は、半歩だけ外へ逃げる。

大振りの腕が空を切る。

「今だ!」

レイは相手の脇へ回り込み、脚を狙って棒を振り下ろした。

一撃では崩れない。

なら、続けるだけだ。

二度。

三度。

四度。

魔物がよろめく。

「っ、まだ……!」

踏み込み直しの瞬間、レイはさらに深く入り、首筋へ一撃を叩き込んだ。

巨体が、ようやく地面に沈む。

「……はぁっ」

勝った。

だが、膝が少し震える。

視界の端に表示が出る。


【録画可能時間:10分04秒】


「……思ったより減ってるな」

一度の失敗は短く見えても、積み重なると大きい。

これが1日の制限か。

使いすぎれば、その日の後半は何もできない。

レイは坑道の奥を見た。

まだ進める。

だが、ここから先は危険だ。

今日の残り時間でどこまで行けるか、考えなければならない。

その時だった。

坑道の入り口の方から、靴音がした。

「……誰だ?」

振り向くと、そこに立っていたのは勇者パーティーの使いだった。

昨日と同じ、硬い表情の男だ。

「レイ・アルド。ガルド様が、お前の件を知りたがっている」

男は坑道の中の魔物の死骸を見て、目を細めた。

「お前、本当に一人でやっているのか」

レイは答えなかった。

「戻る気はあるか、と聞いている」

「ない」

即答だった。

男は少しだけ眉を上げる。

「……そうか。なら、伝えておく」

そう言って男は一歩引いた。

だが去る前に、こんな言葉を落とした。

「ただの記録係が、ここまでやるとは思わなかった」

レイはその言葉を聞いて、少しだけ息を吐いた。

昔なら、そこで心が揺れただろう。

だが今は違う。

自分には、戻れる力がある。

そして、その力をどう使うかを選べる。

「……今日は、もう十分だな」

坑道の奥を見る。

録画時間はまだ残っている。

だが、最悪の事態を考えると無理は禁物だ。


レイは踵を返し、ゆっくりと坑道を出た。

視界の端では、コメントが静かに増えていく。

『ちゃんと制限を意識してるの好き』

『この主人公、派手じゃないけど面白い』

『毎日伸びるタイプだな』

『続き見たい』

レイはまだ知らない。

この“毎日満タンに戻る録画魔法”が、ただの便利な補助ではなく、やがて世界を巻き込む武器になることを。

今はただ、明日また満タンになった力で、次の一歩を試すだけだった。

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