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皇女様は氷結騎士の大ファン  作者: ぽみにょ


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8/10

護る者




 黒衣の男達が、一斉に動いた。


 天井、窓際、正面から。

 連携に隙が無い。


 こいつらは、姫様を殺すことだけが目的。

 ――たとえ、自分の命が潰えても他の刃が届けば良い。


「っ!」


 床を蹴る。


 真正面から迫った短剣を小刀で受け流し、そのまま肩へ肘を叩き込む。

 相手のうめき声と共に、骨が砕ける感触がした。


 だが、攻撃は止まらない。

 天井側の男が、真っ直ぐリーフィア様へ飛び込んだ。


「させるか!」


 水を圧縮し、槍のように撃ち出す。

 男は咄嗟に身を捻ったが、避けきれない。


「ぁっ!?」


 水槍は肩を貫き、血飛沫が舞う。


 ――しまった。


 反射的に、少し威力を出し過ぎた。

 黒衣の男達が、瞬時に距離を取る。


「水魔法……?」

「報告と違う」


 私の情報は掴まれていないようだった。

 ――なら好都合だ。

 こちらが何者か分からないというだけで、相手は慎重になる。


「ローリー……!」


 背後でリーフィア様が震えた声を漏らす。


「……そこを動かないで。結界の維持に努めてください」


 リーフィア様がイリーに結界魔法を学んでいてくれたおかげでだいぶ動きやすい。

 動揺から魔力の乱れはあるが、一度なら攻撃を弾く強度はある。


 ……私はこいつらに集中できる。


 面倒な相手だった。

 連携は然る事ながら、死角を潰す動きに迷いがない。

 暗殺にも慣れているのが分かる。


 ――貴族の私兵か。

 あるいは。


「……帝国側か」


 ぽつりと漏らした瞬間。

 黒衣の男達の殺気がより一層強くなった。


 ……当たりか。

 胸の奥が冷える。


 和平の証として送り出された皇女を、王国で死なせる。

 そうすれば、王国に責を負わせ、帝国内の反和平派を煽ることができる。


 和平を壊すには、十分すぎる火種だった。


「……っ」


 リーフィア様が小さく息を呑む気配がした。

 自分の置かれている立場を理解したのだろう。


「……私が守ります」


 ――殺気。

 

 反射的に身体を捻る。

 直後、毒針が頬を掠めた。


「……やれ」

「……答え合わせ感謝する」


 余計な詮索を入れられたくないのだろう。

 性急な行動に出た男達は、実に雄弁に語ってくれた。


 男達が腰を低くし、身構える。

 どうやら、私を処理しないとリーフィア様に刃が届かないことに気づいたらしい。


 ならば、遠慮はいらない。


 床を蹴り、一気に間合いを詰める。

 正面の男へ、小刀を振り抜いた。


 甲高い金属音が鳴る。

 男は咄嗟に短剣で受けたようだが、抵抗は軽い。


「ぁ……!」


 そのまま力任せに押し切る。

 相手の短剣ごと、男の肩口を切り裂けば鮮血が飛び散った。


 右から迫った2本目の剣を屈んで躱す。

 髪が数本、宙に舞う。


 低い姿勢のまま、正面の男の足を払う。


 「がっ!」


 体勢を崩した男を突き飛ばし、左から迫っていた攻撃の盾にする。

 私に向かって放たれた短剣は、男の胸に突き刺さり、崩れ落ちた。


 残るは二人。


 味方から短剣を引き抜き、男は距離を取る。

 動揺は見られなかった。


「ローリー……!」

「大丈夫です」


 短く答えて、床へ水を流し込む。

 

 次の瞬間、右の男が何かを投げる。


「っ!」


 破裂音と共に、部屋に白い煙が充満し、視界が染まる。


 ――同時に右側から殺気を感じた。

 反射的に身体を捩れば、頬を短剣が掠めていく。


 近い。

 男達は煙に紛れ、既に懐へ潜り込んでいる。


 一つ、幸運なことがあるとすれば、これがただの煙幕だったことだろうか。

 毒ならばその時点で終わっていた。

 ……油断した。


「死ね」


 低い声が聞こえ、今度は正面から短剣が伸びてくる。


「近付きすぎたな」


 床へ広げていた水膜を一気に凍らせる。


 足元を奪われた男の身体が、僅かにバランスを崩した。

 その一瞬で十分だった。


 小刀を逆手に持ち替え、そのまま心臓へ突き立てる。


「――ぁ」


 男の身体から力が抜ける。


 そのまま蹴り飛ばし、最後の一人へ視線を向けた。

 姿は見えないが、男もこちらを見ているのが分かる。


 どれくらい睨み合っていただろうか。

 部屋の外から慌ただしい足音が聞こえてきて、男が弾かれたように一歩後ずさる。


「逃がすと――」


 バン! と大きな音を立てて、扉が開かれる。

 飛び込んできたのは、ジークだった。


「姫様! ご無事で――」

「危ない!」


 大きく開け放たれた出口から、煙が外へと流れ出す。

 それに乗じて、男が動いたのが分かった。


 男は既に、ジークのすぐ傍まで迫っていた。

 間に合わない――。

 

 私は咄嗟に魔力を解放していた。


 空気中の水分が一瞬で凍り付く。

 ジークを刺そうとした体勢のまま、男は氷漬けにされていた。


「な――」


 驚愕に目を見開いた男に近付き、口に指を突っ込む。

 舌と上顎を凍らせ、奥歯から自決用の毒を取り出す。


「ぁ――!」


 男は無理矢理抜け出そうと身体を捩るが、今更無駄だった。

 コイツには喋って貰わねばならないことが沢山ある。


「……ジーク」

「は、はい!」


 尻餅をつくジークに詰め寄り、胸を掴んで強制的に立たせる。


「どんな状況でも、警戒を怠るな!」


 怒鳴られたジークが、びくりと肩を震わせる。

 

 だが、次の瞬間。

 今度は私が、肩を震わせる番だった。


「……シル、様」




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