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皇女様は氷結騎士の大ファン  作者: ぽみにょ


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2/5

真っ直ぐな瞳




「お初にお目にかかる。本日より皇女様の護衛を務める、ローリーだ。見ての通り粗野な口調で申し訳ないが、よろしく頼む」

「……はぁ」


 頭を下げれば、上からため息が降ってきた。


「ひ、姫様?! 失礼ですよ!」

「……だって。シル様が来てくださるかなって、ほんの少しだけ期待していたの……」

「申し訳ない」


 頬を膨らませる第三皇女――リーフィア様。

 

 兄が隠していたもう一つのバレてはいけない理由。

 ――この皇女様、どうやら私の大ファンらしい。

 一兵士に過ぎない私をどこで知ったのか知らないが、それはもう凄まじいほどの熱を持っているらしく。


 ……お前がこんなのだと知れば、皇女ががっかりするだろうから隠し通せ、と。

 なんて失礼なと思ったが、この様子じゃ反論できそうもない。


 任務が終わった後も、シルとして会うのはやめておこう。

 心の中でそう決めた。


「……貴女、腕は確かなのよね?」

「多少は」

「なら、私の騎士と勝負してくださらない? 勝てば護衛だと認めるわ。負けたらシル様と交代して欲しいの」

「ひ、姫様! なんて失礼を!」


 慌てる侍女を手で制する。

 

 こんな憧れを抱かれるような人間ではないのだが……。

 なんだかむず痒い。

 

「構いませんよ」

「え?」


 リーフィア様が目を丸くする。


「あぁ、シルサマの件ですか。大丈夫です。私が勝ちますので」

「ふ、ふん! ジーク! 本気でやりなさい!」

「はっ!」


 ジークと呼ばれた青年は、恵まれた体躯を持つ若い騎士だった。

 所作も綺麗で、筋肉量も申し分ない。


 ……まさにこれからの騎士だ。


 ――


「……参りました」

「いい剣だった。あと数年もすれば、私などすぐ抜くだろうな」


 座り込んだジークに手を差し伸べる。

 彼の剣は、美しい。

 それはもう、嫌みなほどに。


 皇女を護衛するには、あまりにも経験不足だった。

 戦争が終わった今なら、もっと腕利きを付けられるはずだ。


 この皇女様、自国でも随分と立場が弱いらしい。


「ジーク」

「……姫様」


 訓練所に入ってきたリーフィア様が、静かに彼に声を掛ける。


「彼女の実力は信頼できるのね?」

「……はい。俺より遥かにお強いです」


 意外だった。

 負けた騎士を責めるかと思ったが、そんな素振りはない。


「……ローリー。頼みがあるのです」

「私にできることなら」


 リーフィア様は真っ直ぐに私を見つめた。

 

「私に、剣を教えて欲しいのです」


 その瞳には、焦燥が滲んでいた。


 リーフィア様から視線を外すと、悔しそうに拳を握るジークと心配そうな表情を浮かべる侍女が見えた。


「私の稽古は厳しいですよ」

「承知の上です!」


 即答だった。


「私、自分の力で生きていきたいの……だから、お願い!」


 ――真っ直ぐな瞳だった。

 和平の証として、異国へと送られ、それでもなお自分の足で立とうとしている。


 ……厄介な任務を引き受けた。

 だが、久々に高揚している自分がいるのも事実であった。



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