幸せを願う者
リーフィア様の帰国話を聞いてから、一週間。
私はここ最近、意図的にリーフィア様との時間を増やしていた。
街へ出たり、庭園でお茶したり、喜ぶ顔が見たくて茶菓子を持っていったり。
……深い意味はない。
ただ、リーフィア様には好きなことをして楽しく過ごして欲しいと思った。
それに……もし本当に帰国することになったなら――。
「……」
何度目かも分からない思考のループに陥りかけたとき、ふと天啓が降りてきたように一つの考えが浮かぶ。
「簡単なことだ」
帰らなければいい。
リーフィア様は帝国の皇女だ。
ご本人の置かれている状況を見れば、自国での立ち位置も良いものではないことは察せられる。
今回のような襲撃だって、今後もないとは限らない。
継承争い、和平反対派。
リーフィア様の周囲には、不穏なものばかりが並ぶ。
今は王国の警備体制下にあるからいい。
だが、帝国に戻れば同じようにはいかないだろう。
……嫌だった。
リーフィア様が怯える姿も、無理に笑う姿も、もう見たくない。
好きなことをして、好きなものを食べて、安心して笑っていて欲しい。
だから、王国側に残り、確かな後ろ盾を得られればいいのだ。
私なら、その後ろ盾になれる。
銀狼騎士団の副団長という立場もある。
兄上も文句は言うだろうが、最終的には認めるだろう。
「……いや」
足りない。それだけでは駄目だ。
皇女が理由もなく、王国に残り続けることはできない。
外聞や政治的な立場の確立も必要だ。
――和平、立場、条件。
「……あぁ」
この数週間、まともに働いていなかった脳が、今まさに冴え渡っている。
全部繋がった。
「結婚すればいいんだ」
和平の象徴である皇女が、王国の英雄騎士と結婚。
立場としても申し分ない。
私の伴侶となれば、簡単に手出しもできない。
……それに、リーフィア様の幸せを一番に願っているのは私だ。
「……完璧だ」




