第127話 VSゴブリンロード
「見えているぞ」
「くそっ!当たらないか!」
奴は背後からのセインスの攻撃を防ぎ、棍棒をバットのように振りかぶってカウンターを食らわせる。
だが、当たったはずの棍棒は空を切り、後には血しぶき一つ有りはしなかった。
「ダミーか。こんなことなら魔力探知はしておけばよかったな」
「余裕そうだな」
「全快したからな。今はニンゲン5人に手玉にとれるほど弱くはないぞ」
一歩ずつ、一歩ずつ、確実に重たい足を上げてゴブリンロードはセインスに近づいていく。私は見ていることしか出来なかった。
(こ、これどうしよう……守りに入るべき!?邪魔じゃない!?だけど……今は逃げることなんてできるわけが……)
私が半パニック状態のなか、両者の睨み合いを安全圏から眺めていた。
……いや、今はセインスが引き付けてくれているし……まずは戦闘不能1名と、戦意喪失2名を隅っこの方に退けておかねばならない。このまま戦闘がヒートアップしたら邪魔でしか無い。
「り、リーダー……」
「あ、ああ……」
そもそも、何でこいつらは戦意喪失なんてしているんだろう。気持ちは分からんでもないけど、さっきまで余裕の表情でこっちを嘲笑っていたのに。
(……虎の威を借る狐、みたいな感じ?もしかしてリーダーだよりだった?そんな某猫型ロボット漫画にでてくる某お坊ちゃまみたいな……)
っと……そんなこと考えている場合じゃなかった。ちょうど後ろには倒れたリーダーの男がいる。早急に後ろに運んでいかないと。
「うんしょ……重たっ!」
「助けなんて……くそっ!放っておけよ!」
「プライド高すぎでしょ……文句は言わないで!抵抗するなあっ!」
ここまでくると呆れを通り越して哀れに思えてくる。今自分が戦闘不能なのは自分が一番わかっているだろうに。私と違ってプライドばっかりが先行しているのに、皮肉にも私と同じように命を軽視している節がある。
「助けなんていらねぇ!すぐに動けるようになるってんだ!」
「それはただの願望でしょ!?それともわざわざ盾になろうと志願してくれているの!?絶対違うよね!?」
「それは……少し油断しただけだ!あんな奴一瞬で……」
私が往生際悪く、ほんの少しだけ余った僅かな力で、土の地面をつかんで離さないリーダーの男を引っ張っていると、睨み合いを続けていた二人の間、ゴブリンロードのちょうど目の前で、強烈な光がカメラのフラッシュのように輝いた。
「眩しっ……!」
それから間髪入れずに、セインスの放つ光速の斬撃は、ゴブリンロードの四肢と胴体を確実に捉えて切り裂いた。
「ぐうあっ!?」
「く、体表も固いな……カノン!逃げるよ!脚は潰した!再生には時間がかかる!」
セインスはすぐにこちらに駆けつけ、途中で他の男2人を回収して私にそう話しかける。そうしたいのはやまやまだが、こいつ、一向に地面を離そうとしない。むしろ、閃光に目を潰され、ついでに5箇所に斬撃を食らったゴブリンロードを見て、チャンスだといいたそうな顔で近づこうとしている。
「『エフェクト・スリープ』!」
「ぐ……急に眠気が……」
「手間を掛けさせてくれるなよ……しばらくは起きないはずだよ。ゆっくりでいいから道を戻ろう」
セインスはリーダーの男に魔法をかける。私はだらんと寝息をたてて眠る男を、セインスはがっくりと項垂れていた他の2人を無理やり抱えて、できる限り早足でその場から離れ始める。
行きと違って、重量は人一人分増えている。足が重くって仕方ないし、出来ることならここに置いていきたかったが、そんなことお人好しセインスが許さない。
侮辱されたんだから、余計にお世話なんて焼かなくていいだろうに。
道中、セインスの掛けてくれた身体強化魔法のお陰で身体はかなり楽になり、少しずつペースも上げていった。
そして……
◇◇◇
「だっ、大丈夫ですかな!?一体何が……!」
「済まない。この3人を引き取ってくれ」
森の中から見たこともない3人を抱えて戻ってきた私達を見て、村長は焦りの浮かんだ顔をして、こちらにのそのそと歩いてくる。
村の兵士と思われる人に3人を引き渡し、私は地面に座り込んだ。肩も腕も疲れて上がらない、正直、もう動きたくなかった。
だけど、セインスはそんなこと露知らず……とんでもないことを言い放つ。
「少し休んだら森の中に入ろうか。おそらく裏の元凶がいるからね」
「…………マジで……?」




