第124話 冒険者ギルド -Ⅱ-
まだまだ青い草原が広がっていた。
路端に咲く小さな花は、青、赤、黄色と、色とりどりのものが集まっていた。
「……今更なんだけどさ……」
「どうした?」
「乗り物は無いの!?鉄道や馬車は無いとしても、馬くらいは無かったの!?」
「馬乗れないだろ……」
あの後、紆余曲折あって依頼を受けたは良かったが、王都の広さを見くびっていた上に、目的の村への距離の目算も完全にミスっていた。
このギルドに依頼が来ているのだから、大して遠くはないと考えて徒歩で進むことに決めたのだが、考えてみれば王都の近くで、そんな化け物ゴブリンが現れるほうが一大事というものだ。
ちなみに、その紆余曲折というのが……
◆◆◆
「……うーん……自信ある?私はない」
「僕は高位回復魔法が使えるから、腕の欠損くらいならなんとかなる。防御はカノンを信じてる」
「そんなこと言われても…………でも……これで倒せたら、冒険者のその後の犠牲は減るのか……」
防御特化と攻撃特化が合わされば、相打ち位には出来るだろうか。少しの時間考えた末、私は依頼を受けてみることにする。大丈夫、死ななければトライ・アンド・エラーで何とかなる!
「……この依頼
「俺達が受ける!」
「私達が受けます」
「「へっ?」」
そう言って、私は依頼の書かれた紙を指さしたが、そこには見知らぬ男の人差し指も一本……
ゴツい体格をしたその男……多分だけど私達と同じ依頼を受けようとした冒険者……ああ……嫌な予感がするよぅ……
「……あー、えっと……?」
「……何なんだ?お前」
冷ややかな視線だ。明らかに不快なものだと思ってこっちを見ている。
こんな気まずい空気、二人組を作ってーって先生から言われて、勇気を振り絞ってペアを見つけて話しかけたと思ったら、もう既にその人にペアが居たときみたいな、そんな空気……
(い、一体どうすれば!?いや……今は考える暇なんてない!意地を張るな私!どうぞどうぞといえば済む話よ!早く動け私の口ィィィ!)
背中から冷や汗が流れてくる。
「……え、これ今一体どういう状況なんですか?さっき考える時間が欲しいって言ったはずじゃ……」
「……あーっ!?そう言えばそうだった!あれ、私なんで忘れていたんだろう……?」
セインスがそう言うと、受付のお姉さんはハッとした顔で思い出した。3分も経っていないのに……
「お前ら、誰だか知らないがこの依頼は俺達が受ける。青二才には手に余るものだと思うがね」
「グチャグチャになって帰ってきたいのかなぁ?」
「否定はしないが、せめて僕たちを知ってから言ってもらいたいけどね。攻撃を防ぐ算段はあるのかな?」
(煽るなセインスゥゥゥー!?そういうの私の国では火に油を注ぐって言うんだよぉぉぉ!)
ここで私が何を言っても悪化するビジョンしか見えない。黙っておくのが吉だ。多分クラスで孤立気味だったのはこれが原因の1つだが、今となってはそんなこと知ったこっちゃない。
「じ、じゃあ!先に倒したほうが依頼を解決したってことにすればいいんじゃないですか?」
「はっ!余裕だな」
「まあ……それでいいんじゃないか?」
耐えかねたお姉さんの提案で、とりあえずこの場は丸く収まった。ゴブリンを先に討伐すれば、報酬が貰えるらしい。
「そうと決まればさっさと行くぞ。先を越されてはたまらん」
「そうですねぇリーダー!」
大柄な男の後に、2人の小物臭い男どもがついていく。彼らは外に出て、そのまま目的地の村へと向かってしまった。
「……面倒くさいことになった……」
「すみません……ほんとにすっきり忘れていました……」
◇◇◇
その後は私達も準備をして、後を追うように出発する。それからずっと目的地に進み続けて、今に至るというわけだ。
もうだいぶ差をつけられていると思うが……今から行って間に合うのかどうか……
「セインスー……あそこは素直にこちらが引けばよかったんだよー?」
「貶されたような気がしてね……これからは留意するよ」
というか、元はと言えば私たちが先に依頼を受けようとしていたのを完全に忘れていた受付のお姉さんのせいだ。一体何なのだ、おっちょこちょいなのか?
まさか私の存在感がないからセインス諸共忘れ去られたのか?
(何か個性出したほうが良いのかなぁ……モブ以下になってる?私)
やがてこの謎も分かる時が来るのだろうか。村へと続く一本道を歩きながら、私はそのさらに先を幻視した。




