第123話 冒険者ギルド
「はあー……朝から散々だよ……!」
「コーヒーのことはもう良いだろう……」
さて、宿から出発して、流石に人通りも多くなってきた街中を歩いて、私達はどこに向かっているのだろうか。
さっきちらっと名前を聞いたが、冒険者ギルドというところに行くらしい。まるでゲームだ。
「でもさ……自警団とギルドって、一体何が違うのかな?私の認識だと、大して変わらないような気がするんだけど」
「まあ、一緒になっていることが世間一般的には多いからね。それだけ仕事も似ているんだ」
聞いた話をまとめると、
自警団は町の防衛や取り締まり、魔物の調査などを行う“戦う”ことに特化した、市民のための組織らしい。その都市のトップが管轄する警察組織が補いきれない分、手に負えない分を担当するのだ。だからそれなりの手練れが多い。
対する冒険者ギルドは、ぶっちゃけてしまうと何でもやる。そして有象無象からマジで強いやつまで幅広くいる。目的も依頼をこなすことによる報酬目的だったりして、小銭稼ぎで依頼を受ける人間も少なくない。
まあ、要するに依頼を斡旋してくれる組織といったところだろう。
「さっきも言ったように、冒険者ギルドは自警団としての仕事も掛け持ちしているのが多いから、違いを知らない人はまぁまぁいるんじゃないかな?」
「1つを深く追求するか、それを含めて広く浅く受け持つかの違いってわけね……」
冒険者などと、大層なことを言っているが、結局は便利屋みたいな仕事でそれぞれ得意不得意がある。戦う・守るだけではない。
「良くも悪くも、馬鹿でもできるような依頼はたくさんあるからね。頭の弱い脳筋は戦えば良いし、身体が貧弱な学者なら調査の依頼をうける事もできるのさ」
「えー……私受けられるのあるかなぁ……」
「前線で攻撃全部うける防御役なら、求めているパーティなんて腐る程あるさ」
「その防御の底が分からんから怖いんだよ……貫通されたら私にダイレクトアタックなんだよ?」
今のところ突破された例はないけど、安心できるかと言われると別問題だ。絶対防御無効なんて魔法出てくるに違いない。
◇◇◇
「最寄りはここらしいね」
「うわー……嫌な予感……」
宿屋街からは少し離れた、市場のあるこの区域に建つギルドのドアを開けると、中にはたくさんの冒険者が集まっていて、何かを食べていたり談笑していたりで、かなり騒々しかった。
「セインス……サテナで来たことある?」
「いや、一応見たことあったが入ったことは無かったね。よく考えれば、お金を稼ぐならここが良かったわけか……」
アルコールの匂いがする。真昼間から居酒屋だが焼肉屋みたいな雰囲気がある。
「?……依頼ですか?」
「いや、依頼を受けたいんだが……」
そう聞くと、受付の人が苦虫を噛み潰したような顔をして、棚に置いてあった紙の束をあさり始める。
「これも……これも……うーん、どんな依頼がいいでしょう……?」
「別に何でも……」
「それなら……今のところ受けられていない依頼がこれで全部ですね」
その人は目の前に3枚くらいの紙を出した。そこにはそれぞれ依頼内容が書かれており、
依頼1
遠くまで行くので、自宅の留守番をよろしくお願いします。3日間です。
場所:ノアール南区域・28-5の赤い屋根の家
報酬:2000ソイル
依頼2
近くの森まで薬草採取に行ってきてください。指定した場所まで持ってきてください。
場所:ノアール北区域・14-11・クリアードの薬屋
報酬:1500ソイル
依頼3
迷い猫です。見つけてくれたらすごく助かります。よろしくお願いします。
報酬:1700ソイル
「へ、平和な依頼……」
「あー……何でも良いとは言ったのですけど……魔物と戦う依頼とかって……大会に出たいので、少し腕を磨きたいと言うか……」
「みんなそう言うから、今はそうゆうパターンの依頼は枯渇状態なんですよ……それか、危険すぎて誰も受けない依頼を受けてみますか?駆け出し冒険者にはキツイと思いますけど……」
道理でこんなに疲れた顔していたわけだ。まあ、有名な冒険者はみんな、揃いも揃って圧倒的な力を持っているものだし、そういう考えになるのも無理はない。
「一応、どんな事ができるかだけ聞いておいて良いですか?場合によっては勧めないことも無いですけど……」
「ああ……俺は光を操る固有魔法だ。特殊魔法もまあ小技ではあるがいろいろ覚えている」
「私は防御と反射、特殊魔法は……特に無いかな……」
それを踏まえたうえで、彼女は再び書類の山を探して、あ、あったと言って、1枚の紙を取り出した。
「これですね。防御がかなり重要な依頼らしいので」
依頼4
村の近辺に現れるゴブリンを討伐してください。既に何人も村人が殺されています。お願いします。
場所:ベルメイト地方・フレイザー村
報酬:50000ソイル
「何でも、下っ端のゴブリン自体は攻撃力も低く、大して強くもないのですが……首領が恐ろしいほど強いらしく、もう何人も冒険者が殺られているんです。もっぱらその瞬間威力が高すぎて、防ごうにも防げないそうで……」
「ヒェッ……防壁貫通……?」
「魔力量が高すぎるのか……それを存分に使ってくるのだろうね」
確かに戦うものが良いとは言ったが……確かに言ったが、これはいくら何でも……
確かに防御必須なのは間違いがない。だけど、防御しても意味がないなら絶対駄目だ。余裕ぶっこいて防いだらパリンと割れて、次の瞬間にはミンチなんて困る。
命は1つしかないのだ。どこぞの配管工と一緒にしてはいけない。
「これで良ければ、受けることもできますよ?」
「……ちょっと考えてみます」
「右に同じく」
私達は少し離れて、ゆっくりと考えた。
((一体どうすればいいんだ……?))




