第113話 殲滅作戦 -Ⅵ-
「……へ……」
呆気にとられて、変な声が出てしまった。
「何や、その意外〜、みたいな顔は」
「え、いや、そんな……」
「あと、こっちは言いたいことが山程ある!こんな大層な爆発起こしよって……俺等がいること忘れとったか!?」
割と真剣な口調で、圭介はそうカンカンに怒っていた。まあ、確かにこの惨状では、そうなるのも理解できた。
「圭介〜……あれは私では無理だよ。勝てないよ」
「心配すんな夏鈴、あれはもう既に虫の息や」
どこからかやってきた夏鈴がそう言って、圭介の肩を叩いた。それから3人で目の前で炎上するあのデカブツに向き直った。
今のでなんとなく攻撃手段がわかった。まずはシンプルな体当たり、これは私が体表面を燃やしたことも相まって耐久性が落ちているだろうし、使ってくるかは怪しいだろう。
そして、さっき使った魔法弾。おそらく多くの人間の魔力をかき集めたものだ。魔法弾が使えるなら、防壁や装甲も考えておいたほうがいいかもしれない。
最後に、固有魔法を使う可能性も考慮したほうがいい。固有魔法の発動はある程度の自我があることが前提のため、あまりないと信じたいが、使えると分かれば、同時発動される可能性もある。
「ところで、こいつなんで動かないんや?」
「さっきの私の攻撃があったからね。完全再生とまではいかなくても、ある程度回復しようとしているのだと思う」
「な!?早く反撃しないと不味いんじゃ……」
そうは言っても、私はまだ最大出力の反動が残っている。火傷こそしてはいないが、両腕にまだ痺れが残り、魔力を上手く制御できない状態だ。
さらに、使うたびに全身に熱が蓄積して動きが鈍ることにもなる。既に平熱はぶっちぎっているので、これ以上はなかなか厳しい。
冬木のさっきの超パワーが使えるのなら、それで攻め立ててもいいと思うが、あれだって反動があると考えるのが自然だ。
「……私の反動が回復するまで、時間稼ぎできる?」
「しゃーない、やったるか」
「私も……!」
冬木は肩を回して、魔力を足全体に纏って加速する。それと同時に夏鈴も空中に飛び上がる。
夏鈴の魔法は、結局どれだけ広範囲を写真に収められるか、要するに、被写体とどれだけ距離を取れるかによって攻撃可能範囲も変わる。
今回のような巨体であれば、一部だけを写真に収めてビリビリ破きちらしたところで、ダメージは雀の涙、大した時間稼ぎにはならないのは良くわかっているらしい。
「でっかい……全部は無理だけど、これくらいなら……っ」
手で四角を形作り、その内部に対象を収める。スマホさえあればもっと楽だというのに、さっき破壊された以上、こうするしか方法はない。
3次元の光景は、2次元の写真として切り取られ、彼女の能力で現像される。
……と、同時に何かが弾け飛ぶような音がして、目の前の肉塊の一部が大きく抉れた。冬木の攻撃だろうが、やっぱりすごい威力だ。シンプルな身体強化系の魔法だろうか。
時間差で、夏鈴の魔法によるものと思われる裂傷が全体に現れる。だけど、それでもまだ決定打には欠ける……さっきの私の攻撃が異常すぎたんだ。
(今いる3人で、こいつにトドメを刺すのならば、私がもう一度あの最大出力のオーバーバーンを決めるしかない……小1時間戦い続けて、ただでさえ魔力消費しまくっているのに、それを使ったら私の魔力量はもう限界だ)
反動もほとんど回復した。撃とうと思えばすぐに撃てるが、巻き込む可能性もあるし、ここに来て魔力量の問題が足を引っ張ってきた。
(どうするのが正解なんだろう……)
わからない。あの屍は回復を終えて再び動き出そうとしている。
私は考えた。まるでわからないことをあてもなく。
◇◇◇
「何だ……今の爆発……」
「時雨さんですかね……あれだけしないと倒せない敵ってことでしょうか?」
「まあ、この惨状だとね。触れないように気をつけて歩くよ」
今私たちの飛んでいる、丁度真下はまさしく地獄絵図だ。漫画の中でしか見たことない悍ましい何かが、市街地に根を張るように埋め尽しているのだ。
まさか、これがただの固有魔法だと言うのか!?だとしたら性格の悪い防災無線越しに話すカスに、こんなトンデモな代物を与えた神様に、文句の1つでも言ってやりたい。
「修司、なんとかなりそう?」
「無理だな……全体像が掴みきれない……小手先の対処では意味がないだろうし……さっきの大爆発でびくともしないなら、俺たちには対処のしようがない」
咲ちゃんは、この状況を見ながら何かを考えているようだった。もしかして、これを打開する策があるというのだろうか?
「……いや……でも……もしかしたら……」
「何か案があるの!?」
「出来るかは分かりません……ですが、不可能でも無いハズです!」
不安気な表情でそう話す咲ちゃん。私たちでは何も思い浮かばない以上、その不確実な策に委ねるしかない。
「教えてくれ。俺たちに出来ることなら何でもしよう」
「私も、ね」
彼女は手を握りしめた。
「……はい!」




