第109話 殲滅作戦 -Ⅱ-
「わあお、カオス。いろんなとこからゾンビ出てるじゃん」
空中をふよふよ飛び回って、目についたゾンビをずっと倒しているが、一向に勢いが収まらない。そもそも、この数をどこから調達しているのか、それがまるでわからない。
首都高に鉄道に、主要施設が集中するここで、行き当たりばったりの対処を続けるのは危険極まりない。
私は一旦地面に降りて、魔法で補助した上で、車と同じくらいのスピードで、産業道路のガードレール上を爆走する。
(いた、ざっと数十体か)
私は右手に炎を纏い、そのままその中の一体を攻撃する。
連鎖的に周辺のゾンビも巻き込んで爆発し、ガードレールや道路、近くの建物の外壁も巻き込んだ。
「い、今のなんの音!?」
「誰?」
今の爆発音を聞いて駆けつけたのか、荒い息を吐きながらこちらを見ている女性がいた。
「ああ……そっちにも出ていたのね……助かったわ」
彼女は金属製の斧……というか、槍とかも一体化したハルバードのような武器を持っていた。
「銃刀法……」
「いいのよこのくらい。後で戻すし」
このゾンビの処理はこの人に任せて、私はさらに道路を直進して、圭介たちのほうへ向かう。
◇◇◇
「夏鈴……これまずくねぇ?」
「分かってるっつうの!仕方ないじゃない!こんな狭い範囲でゾンビを写真に収められる数なんて限界があるのよ!」
夏鈴と圭介は、港川区のとある沿岸の高層ビルに上ってゾンビを引き付けていた。
失敗した。大多数をこのビルの中に引き込むことに成功したが、そこから先を一切考えていなかった。
夏鈴の『被写体干渉』は、写真に収めることが前提の魔法、狭い階段の中では、とてもじゃないが大量のゾンビを写真に収めることはできない。
圭介の魔法は、受けたダメージを蓄積して、増幅させて返す『ダメージチャージ』だが、これもこの狭い範囲では明らかな過剰威力だ。
「屋上まで行ってから飛び降りればええ!浮遊魔法ぐらいは使えるやろ!」
2人は急いで階段を駆け上がり、屋上まで向かう。
「あ、冬木いた。大丈夫?下にたくさんゾンビいたけど」
「何でいるんや……」
やっとの思いで屋上にたどり着いたと思ったら、そこには余裕綽々の表情で屋上に立つ時雨の姿があった。
「ビルの中に閉じ込めて一網打尽にしようとしていたの?頭いいね」
「圭介……もしかしてこないだ言っていたのって……この子?」
「お察しの通り。それより一網打尽ってどういう意味……」
違ったの?とでも言いたそうにキョトンとした顔をして、時雨はビルの屋上の床を指さした。
「せっかく中にゾンビがいっぱいいるんだから、ドカンってやってやれば良いじゃない?」
時雨は右手に火球を作り出し、そこに魔力を圧縮させる。
「……ちょっと待て……だから待てって!おい馬鹿やめろ!?」
「うわあああああ!?」
彼らは数秒後の高層ビルの末路を理解したような気がした。
「『オーバーバーン』!」
屋上にゼロ距離で衝突した高密度エネルギーの塊は、即座に炸裂し、屋上から下層に向けて一気に大爆発させる!
巻き込まれればただでは済まない。爆発は数秒後にはビル全体を包み込み、内部にいたゾンビは当然1体残らず消し飛ばされた。
「解決、次行こうか」
「俺、こいつが怖なってきよった」
「同意するわ……」
地上へと3人ゆっくり降りて、時雨は何事もなかったかのように歩き出した。
「早く避難しないと瓦礫が落ちてくるよ?」
「え……ちょ!?」
時雨の言葉で我に返った他の二人は、落ちてくる瓦礫を避けるように動く。
「あ、危ない……」
「あれもゾンビ?まあまあ強そうな気配だけど……」
「今度は何や!?鬱陶しい」
高層ビルだったものとは少し離れた位置に佇んでいる、一人の人影、明らかに足取りがおぼつかない感じだ。服もボロボロっぽいし。
「生き残りね。とりあえずさっさと……
バキンッ
「!?」
「!?」
夏鈴が写真を撮ろうとカメラを構えたその瞬間、画面がいきなり真っ暗になり、スマホの内部から、明らかに何かが壊れた音がした。
「ワタシ……イキテル……?オシエテ……オシエロ……」
「魔法を使えるのか……意思も断片だけやが残っとる。なるほどなぁ……こいつが例の最高傑作か!」
ゾンビは電気をその身に纏う。電撃使い、それもかなりの実力がありそうだ。
「やっと骨がありそうなやつが出てきたね。楽しくなってきた」
時雨はそれを見て、少しの狂気を含んだ笑みを表した。




