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悠久のクロスファンタジア 〜DUAL WORLD〜  作者: はとかぜ
第4章 死霊術師(ネクロマンサー)編
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第107話 病院

昨日、寮に帰ってきてからすぐにベッドに伏せてしまった。


実は精神的にかなり疲労していたみたいだ。


冷静に考えれば当たり前のことだが、私が焼き払ったゾンビ全員、元は血も通っていた生きた人間だったのだ。


「悪趣味な犯人だねぇ……」


私は寝起きの顔を擦って、スマートフォンを眺めた。時間がもう9時30分だった。圧倒的遅刻だった。


「あれ……高宮先輩から連絡きてる……」


おそらくさっさと来い的な連絡だと思ったのだが、


「え……美空さんが?」


◇◇◇




昨日も来ていた反戸の地を、私は再び踏んでいた。


今回の目的地はここから少し離れた総合病院だ。美空さんが魔族との戦闘で死にかけて入院しているらしい。


例の連続殺人事件だ。ゾンビに比べれば被害規模は大した事ないが、市民の平和を脅かしているには変わりない重大な案件だった。


(美空さんは私目線でもそこそこ強かった。死にかけるとなるとまあまあ強いよね、相手)


平穏な日常を牧歌する人々が、楽しそうに大通りを歩いている。


今この裏で起こっていることも、気にしているようには見えなかった。




「キャー!?出たーっ」


「逃げろ逃げろ!」


「うるさい……ゾンビですか……」


ついにここにもでてきたか。あとよく見てみれば正治くんが近くにいた。しかもなんか叫んでいた。


ここは人が完全にはけているわけでもないし、何より、またあんな苦い顔されそうなので、あまり周囲に被害を出さないように終わらせよう。


私の魔法は炎を出して爆発させて、それで終わりではない。


爆発で散らばる火の粉、それらも当たり前のように私の支配下にあり、そこを起点に再度炎を発生させることができる。




「『ポイントフレイム』」


能力対象をゾンビに制限し、炎で一気に焼き尽くす。


爆発は最小限に絞ったので、燃えたのはゾンビだけだ。


「……時雨!?」


正治くんがこちらに気がついた。あんまりバレたくなかったのだけど。


「あ、正治くん。正治くんも美空さんのお見舞い?」


「今行って帰ってきたばっかりだが……」


「あ、そう……じゃあ私行ってくるね」


私はそれだけ聞いたらぱぱっと走って病院の方まで向かって行った。


正治くんまだ何か話したそうだったけど、まあまた今度で良いかな。


後始末なんて面倒臭いことしたくない。話しているところを警察に見つかったら引き止められそうだし。


◇◇◇




美空さんのところなんて来る義理も無かったけど、数日ぶりに会うので、挨拶くらいはしてから帰ろうと思う。


「……重症だね」


「でしょ……もう私動きたくない……」


回復魔法のおかげで死は免れたらしいけど、内臓の損傷も酷かったらしいから、あまり酷く動くと後遺症が残る可能性があるらしい。


「それで……何で来たの?私たちあんまり話したことなかったたじゃん」


「挨拶。こないだ電話したのに出なかったじゃん」


「……ごめん」


お腹を押さえて、美空さんは起き上がった。一応電話したことには気がついていたらしい。


「用は無いので帰りますね。お大事に」


「時雨ちゃんもね」


私は病室のドアを閉めた。


「……正治くんと、何のこと話していたのかな」


◇◇◇




「修司ー……これって……」


「ああ……」


「ちょーやばいやん。どうする?」


鷺沼修司、冬木圭介、都崎夏鈴の3人は、活動拠点のテーブルを囲んで思案していた。


真ん中には一枚の紙があり、そこにはこう書かれていた。




『やあ!日々街を駆けずり回って僕が解き放った駒を討伐しているみたいだね!


なかなか筋が良いみたいじゃないか!というわけで、僕から最高のご褒美をプレゼントをするよ!


雑魚狩りばっかで疲れただろう?というわけで明日の午前11時港河区で、僕の最高傑作を使って、楽しい『血祭り(パーティ)』をしようと思うんだ!


死にたくなったらいつでも歓迎するよ!それじゃ、楽しんでね〜!』




「……舐め腐ってるよね、これ。あと字がくっそ汚いし」


「吐き気を催す邪悪とはこのことやな。親の顔が見てみたいわ」


圭介と夏鈴は手紙の内容をボロクソに評価して、イライラして見つめていた。


「今はイライラしている場合じゃない。今から周辺の自警団にも協力を要請する。上手く行けばここで犯人を捕まえられるかもしれないだろ」


修司はそう2人を制止する。不満そうな顔をして夏鈴は近くにあった椅子にドカッと腰掛けた。


「今日は用事があって来られないと連絡があった2人にも後で連絡する。総力戦だ、死なないように戦うしかない」


「死ぬわけないでしょ。最高傑作がどんなもんかは知らないけど、脳の腐った連中を操るのにどれだけ魔力を消費するのかしらね」


動けなくなったところを叩いてやると、夏鈴は息巻いて手紙の上にスマホを放り投げた。


「ま、油断しなければ勝ち戦や。こっちには炎使いもおる」


「そうだな」


修司はそう言って、部屋から出ていった。

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