報酬とサンドイッチ
教会での魔物を退治した後の続きです
蜘蛛の魔物を狩った2人は、赤黒く滲んだ麻袋を持ってある場所に来ていた
石造りの外壁に鉄製の門が構えてあり、それはそれは立派なお屋敷であった
何百年もの月日が経ち壁や庭が荒れ放題になっていなければ…だが
その古ぼけた屋敷の扉をガブリエルはノックする
しばらくしてヨボヨボのお爺さんが不機嫌そうに出迎えてくれた
ガブリエルは麻袋を老人に手渡す
「こ…これは一体なんですかな?」
「キミに頼まれたものだよ、はやく報酬を寄越したまえ」
麻袋の中身を確認した老人は苦り切った表情で麻袋を落としてしまう
老人は手を洋服で拭いながら、もう関わりたくないとばかりに金貨で膨らんだ袋を押し付けた
「ちょっと!!ガブリエル先生に対して失礼じゃありません?」
ガブリエルは気にせず懐に仕舞い込むと老人の態度に文句を言うカレンを引きずりながら屋敷に背を向ける
「良いんですか?ガブリエル先生」
「いいに決まってるだろう?これで研究資金がまた増えるのだぞ?すなわち人類の進化にまた一歩近づいたのだ、素晴らしい…実に素晴らしい!!」
そう言うと表に停めてあった愛車のエンジンをかける
まだ、シートベルトはおろか屋根すらなく、馬車にエンジンをつけただけかのような風貌の自動車だった
車体についた煙突からもくもくと黒い煙りが立ち登り、ゆっくりと動き出したかと思うと一気に加速する
速さは40km/hほどだろうか、1時間ほど走ったところでカレンが口を開く
「先生、そういえばこの乗り物って一体どうやって動いてるんですか?馬車なのに馬無しで動くし…」
「魔力炉というものを聞いたことはあるかな?」
「あっ!千年前の大戦で失われたすごい技術だって聞いたことあります!!」
「そう、それだ
魔力炉とは、大気中に存在する魔力を取り込みエネルギーに変換するものでな、無傷であれば半永久的に機能すると言われている優れものだ」
「そんなすごいものをどうやって手に入れたんですか!!」
「たまたま偶然魔力炉を持っている魔物から快く譲って貰った」
嘘である、本当は魔力炉を持っているという魔物の噂を元に探し出し、魔力炉は譲るからと命乞いをする魔物から命と一緒に奪ったものである
千年前の大戦の名残は世界のあちこちに点在している、少し自動車を走らせるだけで複数の水晶の槍で身につけた鎧ごと貫かれた巨人の化石が遠くに見えてくる
「ム、あそこに良さげな遺物があるな…今日はあそこでランチにしよう」
ガブリエルは千年前の大戦以前の文明を研究しているのだが、やはり研究にはお金がかかる
そのため魔物を狩って報酬を受け取る「狩人」となり日々の生活を送っているのだ
2つある太陽が空の真上から見下ろすころ、2人は巨人の化石の足元に着いていた
「ひゃ〜おっきいですねぇー」
そこらの山よりも大きなその巨体にカレンは圧倒されていたが、ガブリエルは気にせずランチタイムの準備を整えていた
自動車の座席の下に収納スペースがあり、そこからバスケットを取り出す
バスケットの中にはハムを挟んだサンドイッチと水筒が入っていた
2人はちょうど巨人のつま先あたりに座って昼食を摂る
カレンはサンドイッチをハムスターかリスのように黙々と口の中に詰め込む
ガブリエルは食事中であるにも関わらずペストマスクを外さない…いや、外す必要がないのだ
ペストマスクのクチバシがガパッと開いてサンドイッチを咀嚼する
まるでペストマスク自体が素顔であるかのように……
継続は力なり、ということで出来るだけ毎日更新を目指して頑張っていきたいですね