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「M.A.O.U.」ー不遇な魔族に転生しましたー  作者: 兎櫻ふゆよ


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第0.4話 「誕生日」

朝。

窓から差し込む光が、部屋の床をゆっくりと照らしていた。

外からは鳥?の鳴き声が聞こえる。

零――レイノスは、窓辺に立って庭を眺めていた。


『こちらの世界に来てから、どれくらい経ったのだろう。

正確には分からない。

ただ、毎日を過ごしているうちに、いつの間にかこの生活が当たり前になっていた。』


「レイノスー! ご飯できたわよー!」


階下から母さん――マーシャの声が響く。


「今行きます!」


レイノスは窓から離れ、階段を下りた。


『鏡を見るたびに思う。

尖った耳。

丈夫な体に鋭い爪

口を開けば覗く鋭い牙。

そして、額から伸びる二本の角。

どう考えても人間ではない。』


『どうやらこの世界で俺は、どうやら魔族と呼ばれる種族として生まれたらしい。』


『言葉も覚えた。

文字も読める。

歩くことだって、今では何の問題もない。

ただ――

一つだけ、今でも分からないことがある。』


『なぜ俺は死んだのか』


そして。


『俺は、前の人生で何という名前だったのか』


『余計な記憶は残っている。

学校。

いじめ。

考えるたびに胸の奥が重くなる。』


『今は……考えないでおこう』


「おーい、レイノス。立ったまま食べるのか?」


父さん――オルガが笑う。


「あ、ごめんなさいついうっかり」


レイノスは席についた。

目の前には焼いた肉とパン、そして温かいスープ。


「はい、どうぞ召し上がれ」


マーシャが嬉しそうに笑った。


「しかし、レイノスも大きくなったなぁ」


オルガがしみじみと言う。


「そう?」


「ああ。最初に比べたら、見違えるほどだ」


「ふふ。そうね」


マーシャも頷く。

レイノスは自分の手を見る。

確かに、ここへ来たばかりの頃より大きくなった。


『俺自身も、かなり成長したと思う』


そう考えながら、レイノスはスープを口に運んだ。


「そうだ。今日は俺、昼過ぎまで家にいないからな」


オルガが突然言った。


「どこか行くのですか?」


「ああ。今日は町の連中との会議があるんだ」


その時。


 ――コンコン。


玄関からノックの音が響いた。


「オルガー! そろそろ行く時間だー!」


外から男の声がする。


「ああ、今行く!」

オルガは椅子から立ち上がった。

そして次の瞬間。

いつの間にか、その身体には鎧が装着されていた。


『着替えるのはっや!』


「どうかしたか?」


「いえ……着替えるのとても早くて」


「ははは! 毎日のことだからな!」


そう言って笑う父さん。


『毎日のことだからって、そんな一瞬で着られるものなのか?』


レイノスは少し呆れながら見送った。


「じゃあ、行ってくる」


「気をつけてね」


「ああ」


オルガが玄関を出ていく。

レイノスがその背中を眺めていると、マーシャが口を開いた。


「あの人はヴァロンさんよ」


「ヴァロンさん?」


「まだレイノスは会ったことなかったわね。お父さんの親友なのよ。この街の1番偉い騎士さんでとぉーても強いのよ」


「へえー……」


『一番強い騎士、か』


レイノスは少し気になった。

けれど、今はそれ以上考えなかった。

レイノスたちは朝食の片付けを始めた。


「レイノス、そこまでしなくていいのよ?」


「手伝います!」


「本当にいい子ね」


マーシャが笑う。


「それにしても、レイノスは本当に覚えるのが早いわ」


「何がです?」


「文字もそうだし、言葉もそう。普通ならもっと時間がかかるものなのに」


「いえいえ……」


レイノスは少しだけ目を逸らした。


『最初は、この世界の言葉なんて一つも分からなかった。毎日聞いているうちに、少しずつ意味が分かるようになった。文字も同じだった。本を読み、マーシャに教えてもらい、分からないところを何度も覚えた。勉強すること自体は苦じゃない』


『むしろ好きだ』


知らないことを知る。

それだけで楽しかった。


「じゃあ、私は買い物に行ってくるわね」


「分かりました!」


「留守番、お願いね」


「任せてください!」


マーシャは笑って家を出ていった。

扉が閉まる。


――静かになった。


レイノスは家の中を見回した。

誰もいない。


『今なら……』


レイノスは階段の下へ向かった。

そこには、ずっと気になっている場所がある。

物置のようになっている空間。

普段は大きな机や棚が置かれていて、奥へ進めないようになっている。


『以前、一度だけマーシャに聞いたことがある。』


「ここには何があるのですか?」


その時、マーシャは笑って言った。


「何もないわよ」 


オルガも同じだった。


『何もないのにどうして、わざわざ塞いでいるんだ?』


レイノスは机に手をかけた。


「……よいしょ」


思ったより重い。

だが、動かせないほどではなかった。

棚も少しずつずらしていく。

そして――。


「……あった」


床に、小さな扉があった。

俺はしゃがみ込み、取っ手を握る。

開ける。

その先には、石造りの階段が続いていた。


「地下室……?」


暗い。

だが、一歩足を踏み入れた瞬間。


――パッ。


足元が淡く光った。


「え?」


続いて。


――ボッ。


壁に設置された松明が、一つ。

また一つ。

次々と火を灯していく。


「ど、どうやってついたんだ」


レイノスは思わず息を呑んだ。


階段の先には、広い地下室があった。

壁一面に並ぶ本棚。

床には古びた箱。

そして、何年も使われていないような道具の数々。


『こんな場所が……』


レイノスは本棚へ近づいた。

一冊。

また一冊。

本を手に取っていく。


「……読めない」


この世界の文字なのに、なぜか理解できない。

普段読める文字とは明らかに違う。


「こっちは……」


別の本を開く。

やはり分からない。

ただ、その中に一冊だけ。

妙に目を引く本があった。

他の本とは違う。

大きく、分厚い。

表紙には見たことのない模様が刻まれている。


「これ……何だ?」


棚のかなり高い位置に置かれている。

レイノスは近くにあった箱を足元へ持ってきた。


『なんだこの箱、やけに新しいな』


そう思いつつその上に乗る。


「よし……」


手を伸ばす。

指先が表紙に触れた。


「取れ――」


ガタッ。


「うわっ!」


身体が傾いた。

箱から足が滑る。

レイノスは本を掴んだまま床へ落ちた。


――ドサッ!


その衝撃で、棚に並んでいた本が何冊も落ちてくる。


「痛っ……」


頭をさすりながら起き上がる。

その時。


一枚の紙が、ひらりと床へ落ちた。


「……紙?」


拾い上げる。

そこには、奇妙な円形の模様が描かれていた。


『魔法陣』


そう呼ぶのが一番しっくりくる。


その下には文字が書かれていた。


[コノジンニチカラヲナガサレバ、マノスベテヲシラム?]


「……魔の、すべてを知る?」


 意味は完全には分からない。

 だけどその言葉だけはギリギリ読めた。


『……これ、魔法陣か?』


レイノスは紙を床に置いた。

そして、魔法陣の中心へ手を伸ばす。

指先が触れる。

何も起こらない。


「……やっぱりか」


実は、この世界に来てから何度か試している。


ーーーーーーーー過去の回想ーーーーーーーーー


レイノスは右手を前に突き出す


「ウォーターボール!!」


レイノスはそう叫ぶが手からは何も出ない


「ファイアー!!」


またしても手からら何も出ない


「じゃあ、」


レイノスは今度は右手を高くあげる


「ステータスオープン!!」


特に何も起こらない。


「異世界転生といえば魔法が使えたり何かチート的な能力を使えるアレじゃないのかぁ?」


レイノスは深くため息をつく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……力を流す、か」


レイノスはもう一度、魔法陣に手を置いた。

意識を集中させる。

すると。

魔法陣が、淡く光った。


「……え?」


光が強くなる。

床が震える。

地下室に風が巻き起こり、棚の本が次々と舞い上がった。


「な、なんだこれ……!」


魔法陣から伸びた光が、俺の腕を包む。

そして――。

その光が頭の中へ入り込んできた。


「っ……!」


激しい頭痛。

視界が白く染まる。

何かが見える。

知らない場所。

知らない誰か。






「ねえ、大丈夫?」


「......」


「大丈夫じゃないでしょ」


「大丈夫だよ。気にしないで」






『……誰だ?』


頭の奥で、声が重なる。


『これはなんだ――』


だが、考えるより先に。

別の声が頭の中へ響いた。


【――警告。未認可の魔力アクセスを検知。】


「……誰だ!?」


【マジック・オペレーティング・システムへの適合を開始。】

【対象の精神言語《ロゴス》と、魔導幾何学式《フォーミュラ》の同期を試みます……】


「何を言って――」


【――同期完了。】


【演算領域のアクティベートを確認。】


頭の痛みが、一瞬だけ消えた。

そして。


【権限拡張。】


【《概念干渉――アブストラクト・レイヤー》】

【《瞬間演算――イミディエイト・ロジック》】

【書き込み――インストール完了。】


「……」


『何だったんだ……今のは』


『そして――何が俺の中に入った?』


その瞬間。


――ガチャ。


扉が開く音がした


「ただいま!」


マーシャだ。


「レイノス?」


『ただいまーーってまずい!』


レイノスは慌てて紙を拾った。

だが。

紙は、俺の手の中で燃え始めた。


「え?」


炎は一瞬で紙を包み――灰になった。

レイノスは一瞬戸惑ったがそんなことをしている場合ではないことに気づく

そして、何食わぬ顔で階段を上り玄関へ向かった。

そこにはマーシャがいた。


「どうしたの? そんなに息を切らして」


「ちょっと……走ってました!」


「家の中で?」


「……はい」


マーシャがふーんとした顔をする。

だが、それ以上は聞かなかった。


「じゃあ夕飯の支度をしてくるわね」


「お父様はまだ帰られないですか」


「あと少ししたら帰ると思うわよ」


「そうなんですね!あ、僕も夕飯の手伝いします!」


「あら嬉しいわ、でも今日は大丈夫なの。気持ちだけ受け取っておくわありがとう。」


マーシャの顔はどこかいつもより微笑んでいた


「だから夕飯ができるまで待っておいてね!」


「わかりましたお母様!」


レイノスは地下室から一冊だけ持ってきた本を抱えて居間へ戻る。

ソファに座り、本を開く。

するとそこには読めない文字と魔法陣が描かれていた。

その魔法陣が目に入った途端


【――解析を開始。】

【対象:魔導式。】

【判定――初歩的な水魔法。】


「うわぁ!びっくりした!」


レイノスは思わず声を上げる


「レイノスーー!!何かあったのーー!!大丈夫ーー??」


台所の方からマーシャの声が聞こえてくる。


「大丈夫でーす!!なんでもないでーす!!」


「はーーーーい!」


『今のは確か地下室で聞いた時と同じ声だ。』


レイノスは思い返す


『初歩的な魔法??やっぱりこの世界には魔法があるのか!?

でもどうやって魔法を使うんだ?』


レイノスはその魔法陣に手を当て力を入れる


「あの時はこれに力を流し込んで光ったよな」


するとその魔法陣が光だした。


「おお!やっぱr」


そう言いかけた瞬間


バシュッ


その魔法陣からレイノスの顔目掛けて勢いよく水が吹き出して顔面に直撃した


「うわぁぁあ」


レイノスはほぼ全身びしょ濡れになり、髪から水が滴る

幸い叫び声はマーシャには聞こえていないようだ


「び。びっくりしたぁ」


レイノスは唖然とした。


『こ、これは魔法、、だよな、、』


レイノスはその場に立ち上がる


『す、すっげええ!!!!!』


レイノスは両拳を高く突き上げる。


『やっぱり魔法はあったんだ!!』


その時あげた拳から水滴が顔に垂れる。


「あ、やばいやばい!!この水を拭かなきゃ!!」


レイノスはタオルを取ってきて床にこぼれた水をふく。


『服はどうしよう』


レイノスは洗濯に出すことにしてさっきまで来てた服と似たような服を新しく着た。


『これならバレないだろう。』


その時勢いよく扉を開ける音と同時に大きな声が聞こえた


「ただいま帰ったぞぉ!!!」


レイノスは颯爽と玄関に行く


「お帰りなさいませ!お父様!」


その瞬間オルガはレイノスを持ち上げる


「はっはっは!我が息子よ!!出迎えありがとうよう!!!」


「あはははは!」


オルガは満面の笑みでレイノスを高い高いする


その時マーシャも玄関にやってきた。


「おかえりなさい!アナタ!」


「おう!マーシャよ!!今日も美貌であるな!」


「もうオルガったら」


「ガッハッハッハ!」


マーシャは頬を赤らめる


「"夕飯"できてるわよ」


マーシャは含みのある笑いをする


「そうだな!じゃあ食べようか」


オルガも同じように笑う


そして台所に向かうと今までに見たことないような豪勢な料理が並んでいた。

レイノスはご飯に釘付けになって座っていると


「「レイノス!!誕生日おめでとー!!」」


レイノスは突然のことに驚きを隠せない


「あ、ありがとうございます!!」


『た、誕生日??この世界に誕生日を祝う概念はないと思っていた。

なにせここまで喋れるようになるまで時間がかかるはずだからもう誕生日は4回はきてるぐらいだろう。

いや待てよ、俺って今何歳なんだ...?』


「レイノス!たくさん食べてね!!」


「は、はい!」


レイノスは疑問と驚きを隠しつつ料理を口運ぶ


「と、とっても美味しい!!」


「あらあら」


マーシャは微笑む


「ガッハッハッハ」


オルガが笑い出して言う


「レイノスが我が家にきてからもう一歳になるのか!!やはり時の流れは早いな!!」


『い、一歳!?いや流石に一歳にしては知能がありすぎるなんじゃないのか?

こんなに喋れるのもおかしい!

....もしかして魔族の一年と人間の一年は感覚にズレがあるとか...?』


レイノスが尋ねる


「お母様!どのようにして誕生日を決めているのですか?」


マーシャが答える


「それはねガイアーの姿が61回見える時に魔人は年を1つ重ねるのよ」


「がいあー?」


マーシャは続ける


「ガイアーというのは青白く光る浮石のことよ」


「光る...浮石ですか?」


「ええ...浮石というのは日が沈んだ後に現れる空に浮かぶ石。

ガイアーは数ある浮石の中で30日に1度しか姿を現さず、青い光を放つの。

そして私たち魔族はガイアーの姿が見える日にしか誕生しないのよ。」


「そうなのですね!勉強になります!!」


マーシャはレイノスを見て微笑み、口を開く


「レイノス、プレゼントがあるの!」


そう言うと奥からオルガが箱を持ってきてその箱をレイノスに手渡す。


「ええ!プレゼント!?ありがとうございます!!」


『……あれ?』

『この箱……』

『地下室で踏み台にしたやつじゃないか!?』


レイノスは引きつった笑みを浮かべる


その時オルガがハッと気づいたようにマーシャに話しかける」


「マーシャ、地下室の本棚から本が落ちていたんだが入ったか?」


ギクッ

レイノスは一瞬でもビクつく


「いいえ?入ってないわよ?ネズミかなんかが入り込んだんじゃないかしら」


「そうかぁ」


オルガは首を傾げる


そんな会話を横にレイノスは箱を開ける

するとそこには皮で覆われたノートと少し変な形をしたペンが入っていた。


「レイノスはね、とても頭がいいからペンとノートをプレゼントしようと思ったの」


「あ、ありがとうございます!!大切に使いますね!!」


その夜は家族で幸せな時間を過ごした。



ーーーその誕生日パーティーの後ーーーー

「あああ今日の会議疲れたわい」


そう言いオルガはレイノスがさっき座っていたソファに腰をかける


「...ん?」


オルガはソファを触る


「濡れてる?

 ....なんで?」


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