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ヘリオスの末裔  作者: まきの・えり


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 フェレットになっている三橋裕也が徐々に毛を金色にしていき、啓子フェレットは毛が長くなり(当然、つやつやのピカピカ)、小橋君は立ち上がった。

「私も一緒に行ったのよ」と言う声は、ミーアキャットの時枝祥子か。

「きゃあ、ミーアキャット~!」と真由と里中フェレットが寄って来た。んな場合じゃないって!


 オレは、と三橋裕也が言った。

 今だから言えるけど、夜中になると学校の近くに行くようになった。家が学校の近くだし。よく「クラスの友達」というのが、家にも来たよ。担任の先生も、時々、プリントとか持って来て、親と話していた。

 オレは、小学校でも学校に行きたくなかったし、中学校なんて、どれだけ家の近くでも行きたくなかった。理由なんてねえよ。ただ、行きたくなかっただけだ。

 学校の近くで、門を眺めていたよ。

 オレの頭の中では、屋上に登って、そっから飛んだらカッコいいだろうな、というのがあった。

「飛んでみたいか?」と頭の中で声がした。

「そりゃあ、飛んでみたいよ」とオレは返事をした。

「よし、飛んでみるか」と声が言った。

 今から思ったら、あれは山下さんのお兄さんだったんだな。

 これも、今だから言うけど、オレ、時々窓から外を見るんだけど、山下さんがすっごく気になってたんだ。何でかと言われても困るけど、どっかぎくしゃくした歩き方だとか、時々、何もないのに、不安そうになったりするとこが、気になって気になって仕方が無かった。

 何か、オレに似てるとか思って、勝手に気になっただけなんだけど。

 門が勝手に開いて、中には、山下さんのお兄さんが立っていた。その時は、誰だか知らなかったんだけど。

 初めて学校に入るのに、こんな風でいいのかな、とは思ったよ。

「気にしない。気にしない」とまるで、オレの心が読めるように、お兄さんは言った。

 お兄さんとオレは、最短距離で屋上まで登って行った。鍵なんかかかってなかったし、誰も止めないし、一直線で登ったような感じだった。

「僕も時々、ここから飛ぶんだよ」とお兄さんが言ったので、オレはビックリ仰天だ。まさか、この世に、オレと同じことを考えるヤツがいるなんて、普通あり得ないじゃん。

「飛んでみるか?」と軽く言われ、オレは思わず後ずさったよ。

 しかも、屋上は、凄いフェンスに囲まれてるし、三分の一ぐらいは、太陽光パネルみたいなんで埋まっている。

 オレの空想の中では、鳥みたいに飛べるんだけど、屋上から本当に飛んでしまったら、地面に激突して、この世にさようなら~、だろ、実際は。

「これ」とお兄さんが出して来た写真を見て、山下さんが写ってて、胸がズキンとした。何もしてないのに、悪事が見つかったような気がした。

「写真はあげるよ」とお兄さんが言い、この人には何もかも見抜かれているんだと思って、ありがたく写真をいただいたよ。

 写真が入れてあったフレームをオレに見せて、「本当に飛びたいんだったら、この中に入ったらいいよ」と言うんだぜ。

 ごめんよ、山下さん。オレ、この人、頭の変な人なんだな、と思った。

 けど、オレは、本当に飛びたかったんだ、ヒュー、ベシャン、という結末になるにしても、一度ぐらい飛んでから、そうなりたかった。

 で、フレームに入るフリでもするか、と入ろうとしたら、入ってしまったんだな、これが。

 お兄さんが、オレの手を取って、一緒に、ヒョイとフェンスの上に飛んだ。ヒョイだよ、ヒョイ。

 んで、「うわあああああああ」と叫ぶオレの手を引いて、落下して行った。

 さようなら、お父さん、お母さん、オレ~~~~!!!

「目を開けて」と言われて、恐々と目を開けた。目の下に屋根が見える。うわ、飛んでるみたい。

「手を放すよ」と言われて、「やめてください。それだけは、やめて……わああああああ!!」と叫んだけど、下には落ちなかった。

 んで、家に帰って、自分の部屋に入ったんだけど、考えが飛んでるみたいで、訳がわからない。

 そこに、担任の先生が来て、土日を使って、山下温泉に一泊研修するって聞いたんで、「オレも行きます」とドアを開けて返事をした。

「裕也ー、どうしちゃったの、裕也ー」とお母さんは、オレを揺さぶるし、「本当か、三橋!」と先生は、倒れそうに驚くし、「はい」と答えたら、お母さんと先生がへたへたと座り込んでしまったって訳。


 ふ~~ん、と三橋君の話を聞きながら、皆が同じことを考えているのがわかった。

『空、飛べるんだ……』



 

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