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大広間は、生徒達でごった返していた。
旅館の寝巻姿の生徒もいれば、きちんと私服に着替えている生徒、制服に着替えている生徒、ジャージ姿の生徒と様々だった。
フレームに入った、三橋裕也は、先生の隣に座っていた。ジャージ姿だ。しかも……金髪。校則違反満載の不登校児童なのか。
大広間には、ぐるっと円形に脚付きお膳が並んでいる。名前も書いてないから、私と毎度の四人組は、固まって座った。
「はい。静かに」と大石先生が言うと、わあわあ騒いでいた生徒達も、徐々に徐々に、静かになっていった。
「今日は、病気療養中だった、皆のクラスメートの三橋裕也君にも参加してもらうことができた。こういう日を迎えることができて、先生は、感無量だ。皆を温かく迎えてくれた、山下旅館の方々にもお礼を言いたい。山下旅館の皆さん、本当にありがとうございます」と先生は深々と頭を下げた。
「こちらこそ、お役に立てて、光栄です」と同じように、頭を下げているのは、頭の禿げたおじさんだ。
まさか、と私は思った……この地味な顔のおじさんは……私にそっくりだ……お父さんなのか。
「さあ、皆さん、あんまりご馳走ではないかもしれませんが、取れたての野菜や朝届けてもらった魚は新鮮ですよ」とお母さまも現れた。
お母さまの美貌は、光り輝くばかり。皆が、ほうっとため息をついた。
「や、や、山下さんのおか、お母さん、お、お世話になります」と言う大石先生の顔が赤い。珍しく、噛みまくっているし。
目は光ってないが、下を向いてごまかしているのかもしれない、と私は思う。
「さあ、召し上がれ」とお母さまの一声で、皆は、「いただきま~す」と声を合わせた。
皆、おなかがすいていたのか、食べる音以外は、聞こえなくなった。
ゲ、私達の食べる分は、徐々に姿を消していった。見渡すと、先生の隣の三橋君の分も姿を消している。
「山下、早いな」と先生も目ざとい。
「ちょうどいい。三橋は、山下に、ここを案内してもらいなさい」
「俺達も一緒でいいですか?」と小橋君が言った。
「私達もいいですか?」と啓子が言った。
「あんまり大勢なのもな~。三橋が……」
「僕は大丈夫です」と金髪の三橋君が言った。しっかりした声だ。
「それならいいが。あんまり騒いだりするなよ」と先生が折れた。
「ちょっと走り回るか」と小橋君が言った。
また、ハムスターになるのかと思えば、今度は、フェレットに姿を変える。
「もうちょっと、皆と離れてからだよ、小橋」と啓子が言った。
ジャングルの陰に入って、今度は、三橋裕也も加えた皆で、フェレットになった。
「山下さーん」という声がして、藤原加奈が現れた。
当然、皆で、ギョッとする。
また、「ずる~い」と言われそうだ。
「呼んだ?」と言って、お兄様が登場した。ナイスタイミング。
「あ、あ、あ、や、や、山下先輩」と藤原加奈の目が、ピッカーと光ったのが遠くからでもわかる。
「ずる~い」と今度は、啓子が言った。
「ええい、走り回ってやるから、覚えておけ、藤原加奈め」
啓子を先頭にして、私達は走りまくった。エネルギーが有り余っているせいなのか何なのか、走り回るのは楽しくて仕方が無い。
「そうだ。走りまくりながらする話でも無いけど、金髪の三橋、あんたって、どうしてた訳?」と啓子。
「僕ですか? 生きてはいましたけど」
「何してた訳?」
「定期的に金髪にしてました」
「校則違反なのに?」と私も口をはさんだ。
「わかった。金髪にさえしておけば、学校に行かなくてすむと思った」と小橋君。
言うまでもないが、同じ大きさのフェレットになった、真由と里中君は、二人の世界に入っていて、他には関心を向けない。
「そんな訳でもないけど」と三橋裕也。
「そうかな?」と自分でもわからないらしい。
「山下先輩と一緒に、色々な場所に行って、誰でも、それぞれ大変なんだな、と思いました」
「お兄様と一緒に?」
「はい」
「どこに行ったの?!」と自分の声がとんがるのが、自分でもわかった。
「そうよ、先輩と一緒に、どこに行ったのよ!」と啓子の声は、とんがるどころではなく、詰問調だった。
「うおおおお!」と小橋君は、絶叫する。
「まあ、まあ、まあ、まあ」と私は仕方なく、二人をなだめる羽目になってしまった。




