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Despair  作者: まぐろこわい
ギロチン編
7/11

犠牲者の吟味

最初の犠牲は、どこにするべきか。

王都か。

大都市か。

それとも、この国そのものを揺るがすような場所か。

世界への復讐を始める以上、それは実質的な宣戦布告になる。

ならば中途半端なことはしたくなかった。

恐怖を与えるだけでは意味がない。

人々の心に、“終わり”を刻み込まなければならない。

僕は森の中を歩きながら、ずっと考えていた。

どこを壊せば、一番効率よく絶望が広がるのか。

どこを潰せば、人間は最も救いを失うのか。

その時だった。

ふと、一つの答えが頭に浮かぶ。

そして僕は、立ち止まった。

「……ああ、そうか」

思わず笑みが漏れる。

簡単な話だった。

僕はずっと、“誰を壊すか”で考えていた。

だが違う。

本当に重要なのは、“誰を例外にしないか”だ。

前世の僕は、世界に嫌われていた。

誰も助けてくれなかった。

誰も手を差し伸べなかった。

ならば、今度は僕が同じことをしてやればいい。

例外はなし。

誰一人として。

善人だから?

子供だから?

家族だから?

関係ない。

世界は、そんな理由で僕を救ってくれなかった。

だったら僕も、誰かを選り分ける必要なんてない。

「はは……」

胸の奥から、何かが込み上げてくる。

熱い。

奇妙なくらい高揚している。

これは何だろう。

幸福感?

達成感?

あるいは、ようやく復讐を始められる歓喜か。

どれでもよかった。

ただ、一つだけ確かなことがある。

今の僕は、心の底から笑っていた。

「まずは――この村からだ」

静かに呟く。

僕を育てた村。

優しかった両親。

無知で平和な村人たち。

畑を耕し、笑い、くだらない日常を生きている人間たち。

確かに、この世界に来てから彼らは僕に優しかった。

だが。

だからどうした?

それで前世の僕が救われるわけじゃない。

この世界は理不尽だ。

ならば、理不尽のまま壊れていけばいい。

むしろ、幸せな人間から絶望へ叩き落とした方が効果的ですらある。

「そうだ」

僕はゆっくりと空を見上げる。

夕暮れの空は、血のように赤かった。

「絶望っていうのはさ、幸福との差が大きいほど美しいんだよ」

だからこそ。

最初に壊すのは、この平和な村がふさわしい。

誰も疑っていない。

誰も終わりを想像していない。

だからこそ、壊れた時の悲鳴はきっと綺麗だ。

僕は笑う。

抑えきれないほど自然に。

前世でExecutorを立ち上げた時よりも、ずっと愉快だった。

なぜなら今回は、“世界そのもの”へ向けた復讐の始まりだから。

「さあ――」

掌に魔力を集める。

圧縮。

収束。

暴走寸前まで膨れ上がった魔力が、空気そのものを軋ませ始める。

村の方角を見つめながら、僕は口元を歪めた。

「惨劇の始まりだ」



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