世界に復讐する方法
世界に復讐をするには、どうすればいいのか。
そんなもの、考えるまでもない。
僕と同じ目に遭わせればいい。
生まれた瞬間から理不尽に否定され、何かを信じれば壊され、希望を抱けば踏み躙られる。息をするだけで不幸が降ってきて、生きていることそのものが呪いみたいに感じる――そんな絶望を、今度は世界の側へ味わわせてやればいい。
最初、前世の僕は“殺せばいい”と思っていた。
実際、殺した。
数え切れないほど。
悲鳴を聞き、命が壊れる瞬間を見届け、その度に笑った。
だが、それでも世界は終わらなかった。
誰かが死んでも、翌日には太陽が昇る。
人々はパンを食べ、笑い、愛し合い、何事もなかったように生きていく。
それが気に入らなかった。
「どうして平然としていられるんだろうね」
森の中を歩きながら、僕は小さく呟く。
風が木々を揺らし、葉の擦れる音だけが静かに響いた。
死程度では足りないのだ。
人は、案外“死”に慣れる。
戦争が起きても、疫病が流行っても、結局は順応してしまう。
だから必要なのは、もっと深いもの。
もっと根源的なもの。
――絶望。
それも、生半可なものじゃない。
心が折れる程度では駄目だ。
泣き崩れる程度でも浅い。
存在そのものを否定されたような、息をするだけで苦痛になるような、救いなんて最初から存在しなかったと思い知らされるほどの絶望。
それを、世界中の人間へ与える。
誰一人例外なく。
「……ああ、そうか」
ふと、僕は笑った。
その瞬間、ようやく理解したのだ。
前世の僕が作ったExecutor。
あれは単なる暗殺組織なんかじゃなかった。
あれは、“絶望に耐えられなかった者たちの墓場”だ。
世界に踏み躙られ、壊され、それでもなお憎悪だけは消えなかった人間たち。
その成れの果てがExecutorだった。
つまり。
僕と同じような人間は、他にもいる。
世界に復讐を誓うほど、壊れてしまった人間が。
ならば、やるべきことは決まっている。
絶望を撒く。
もっと多く。
もっと深く。
人間を壊し、憎悪を生み出し、復讐者を増やす。
そうして世界そのものを、内側から腐らせていく。
「殺戮は手段でしかない」
前世の僕は、それを履き違えていた。
重要なのは、“殺すこと”じゃない。
“壊すこと”だ。
誇りを。
希望を。
愛情を。
信頼を。
人間を支える全てを、徹底的に踏み躙る。
その果てに生まれるのが、本物の絶望だ。
そして絶望した人間は、必ず誰かを憎む。
世界を。
他人を。
運命を。
それでいい。
いや、それこそが理想だ。
憎悪は伝染する。
絶望は連鎖する。
一人が壊れれば、また別の誰かを壊す。
そうして世界は少しずつ、自分自身を食い潰していく。
「はは……最高じゃないか」
思わず笑みが漏れた。
世界は僕を壊した。
なら今度は、僕が世界を壊す番だ。
同じように。
平等に。
逃げ場なんて一つも与えずに。




