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Despair  作者: まぐろこわい
序章
6/11

世界に復讐する方法

世界に復讐をするには、どうすればいいのか。

そんなもの、考えるまでもない。

僕と同じ目に遭わせればいい。

生まれた瞬間から理不尽に否定され、何かを信じれば壊され、希望を抱けば踏み躙られる。息をするだけで不幸が降ってきて、生きていることそのものが呪いみたいに感じる――そんな絶望を、今度は世界の側へ味わわせてやればいい。

最初、前世の僕は“殺せばいい”と思っていた。

実際、殺した。

数え切れないほど。

悲鳴を聞き、命が壊れる瞬間を見届け、その度に笑った。

だが、それでも世界は終わらなかった。

誰かが死んでも、翌日には太陽が昇る。

人々はパンを食べ、笑い、愛し合い、何事もなかったように生きていく。

それが気に入らなかった。

「どうして平然としていられるんだろうね」

森の中を歩きながら、僕は小さく呟く。

風が木々を揺らし、葉の擦れる音だけが静かに響いた。

死程度では足りないのだ。

人は、案外“死”に慣れる。

戦争が起きても、疫病が流行っても、結局は順応してしまう。

だから必要なのは、もっと深いもの。

もっと根源的なもの。

――絶望。

それも、生半可なものじゃない。

心が折れる程度では駄目だ。

泣き崩れる程度でも浅い。

存在そのものを否定されたような、息をするだけで苦痛になるような、救いなんて最初から存在しなかったと思い知らされるほどの絶望。

それを、世界中の人間へ与える。

誰一人例外なく。

「……ああ、そうか」

ふと、僕は笑った。

その瞬間、ようやく理解したのだ。

前世の僕が作ったExecutor。

あれは単なる暗殺組織なんかじゃなかった。

あれは、“絶望に耐えられなかった者たちの墓場”だ。

世界に踏み躙られ、壊され、それでもなお憎悪だけは消えなかった人間たち。

その成れの果てがExecutorだった。

つまり。

僕と同じような人間は、他にもいる。

世界に復讐を誓うほど、壊れてしまった人間が。

ならば、やるべきことは決まっている。

絶望を撒く。

もっと多く。

もっと深く。

人間を壊し、憎悪を生み出し、復讐者を増やす。

そうして世界そのものを、内側から腐らせていく。

「殺戮は手段でしかない」

前世の僕は、それを履き違えていた。

重要なのは、“殺すこと”じゃない。

“壊すこと”だ。

誇りを。

希望を。

愛情を。

信頼を。

人間を支える全てを、徹底的に踏み躙る。

その果てに生まれるのが、本物の絶望だ。

そして絶望した人間は、必ず誰かを憎む。

世界を。

他人を。

運命を。

それでいい。

いや、それこそが理想だ。

憎悪は伝染する。

絶望は連鎖する。

一人が壊れれば、また別の誰かを壊す。

そうして世界は少しずつ、自分自身を食い潰していく。

「はは……最高じゃないか」

思わず笑みが漏れた。

世界は僕を壊した。

なら今度は、僕が世界を壊す番だ。

同じように。

平等に。

逃げ場なんて一つも与えずに。


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