第56話 統べるもの
「名前に気を取られて流しかけましたけど。
紫翡翠の眼が一番すごいスキルなんですか?」
ホワイトボードに書かれたスキルの説明を見ながら確認する。
『それら全てを統べる』のが紫翡翠の眼って、書いてあるよなぁ……。
「『すごい』、って言われるとなんとも言い難いけど。
どのスキルを使うにも紫翡翠の眼の力が必要、って意味では『全ての上位』にあると言えるかもね。
ほら、紫翡翠の眼だけでも『未来視』とかできただろ?」
「ふむ……言われてみればそうですね。
あれ、でも『音』に関係するスキルが2つありますけど、それも紫翡翠の眼が必要なんですか?」
むしろ、なんちゃらイヤーとか別の何かが必要そうだけど。
「音っていうのは、『波』であり『振動』だからね。
心の声、にしたって、その相手の『ゆらぎ』を見ることで更に深く知ることが出来るんだ。
螢子ちゃんが使える、えーっと……そうそう読み取る眼だっけか?
相手の思考を読み取るスキルがあるでしょ?」
「確かに」
それにしても、まさか今まで身につけてきた紫翡翠の眼を使った色々なスキルが、他の6つとこんなに繋がっていたとは。
なんとなく使っていたけれど、そういう理由があるのだってわかるとなるほどとしか言えなくなってしまう。
「それで、地球で私が手に入れたスキルがある、って言ってましたけど、それはなんなんですか?
自分ではあまり自覚がないんですけど……」
「ああ、それはね。
世界を渡るものだよ?」
あ、その名前まだ使うんだ……。
「って、そんな便利なスキル持ってないですよ?」
あったらどれだけ楽だったろうか。
「いやいや、ドアを開けるたびに行きたい場所へ繋ぎ直していたみたいじゃないか」
ドアを開けるたびに……?
「てことは、あのドアが『ドコにでも行けるドア』だったんじゃなくて、私が無意識にスキルを使っていた、ってことなのか」
どおりで、地球にいた時に千代ちゃんの里へ行くのに使えなかったわけだ。
ドアの隠し機能じゃなかったのね。
「逆に言うとね。
他の6つのスキルは紫翡翠の眼がないとかなり制限されちゃうんだよ。
だから見つけても使いようがなくてね。
ボクたち『子機』がとりあえず守ってる感じなんだ」
そういって、ミニろくさまは光る玉のようなものを取り出す。
玉、じゃないな、形が定まっていない。
「それが、スキル?」
「そそ、あらゆる音を聞くことができるスキル、その名も『深き鳴――』」
「いや、名前はもういいですって」
「ちぇ」
しかし、『スキル』ってあんな風に目で見ることができるものなんだなぁ。
『盗まれた』って言うけど、どうやってそんな事ができるんだろう、って思ってたら。
「ということで、はい。
これ、持ってって」
手に持ったスキルを私の方に向けると、そのまま私の中に吸い込まれるようにして消えた。
「え?」
なんか、ものすごくあっけなかった。
けど、確かに何かが私の中に入ったことだけはわかる。
違和感はない。
紫翡翠の眼との親和性が高いってことなんだろう。
「よし、じゃあ腕輪の方も細工しちゃおう。
またボクの罠にかからないように」
ぷにっとした手が腕輪に触れると、一瞬だけチカっと光る。
「オッケー。
これで、今回みたく罠にはまって閉じ込められることはないと思うよ」
じっと見てみるけど、流石に見た目ではわからない。
まぁでも、ミニろくさまがそう言うなら大丈夫なんだろう。
「ありがとうございます」
「うんうん。
まぁボクはこのままここにいるから、また何かわからないことがあったら聞きにおいでよ」
「そうさせてもらいます」
そうだ、移動スキルがあるってことだし、地球のミニろく様のとこにも行ってみようかな。
残りスキルは後4つ。
今度は時間がかからないといいなぁ。
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