↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】こちら異世界転生管理局  作者: ただみかえで
第6章 天界大争乱
PR
50/71

第46話 天界王と弥勒

前話(45話)の一部加筆修正しています。

よかったらそちらから見てください。

 それは、今からおよそ600年前のできごと。

 地球の時間でいう6000年前。

 天界である大きな事件が起こった。


 ――天界。

 いつからそこにあり、どうやって出来たのかは誰も知らない。

 世界の発生と共に生まれたとさえ言われる、数多ある世界を管理する最上位機関である

 その中心都市の一角に、とある大きな屋敷があった。

 天界の中でも特別な場所とされる『弥勒の修行場』だ。

 はるか遠い未来で全てを救うとされる『弥勒』が修行に明け暮れる場所である。


 その屋敷の離れにある一室で、一人の少年が瞑想を行っていた。

 一切の色と、一切の音が消し去った何もない空間では、少年の呼吸音ですら耳に響くようだった。

 そんな、静謐を形にしたしかのような場所へ、大きな音を立てて歩く男が近づいていた。

 髭面で筋骨隆々のその男は精力にあふれ、湧き出る雰囲気から只者ではないことがわかる。

 人間で言えば40代なかばと言った風貌だ。


ドンドン!


「入るぞー!

 お、いたいた。

 どうだ弥勒? 修行は順調か?」

 ノックの返事も待たず扉を開けた髭面の男は、部屋の中央にいる少年――弥勒に向かって声をかける。

 見た目に違わず、声まで大きい。

「……順調だったよ……キミが来るまではね?」

 その声に、弥勒はそっと座禅を解き、呆れたようにその男を見返す。

「あー、わりぃ、邪魔したか?」

「いいよ、いつものことだしね。

 で、なんの用だい? 天界王」

「ちょっとな、面倒なことになってよ」

「ふむ……」


 髭面の男――天界王を伴い、弥勒は瞑想に使っていた部屋を出る。

 一般に、屋敷全体を指して『修行場』とは呼ばれているものの、離れに瞑想部屋を除けば至って普通の屋敷である。

 部屋数が40を超え、下働きを行う者だけでも100人を超える、至って普通の……。


 向かう先は応接間。

 天界王が『面倒なこと』と言っている以上、誰彼構わず話を聞かせるわけにはいかないからだ。

 結界により隔絶された空間内にあるそこならば、問題ないだろう。


「ヴェイ、いるね?」

「はい、ここに」

 弥勒が声をかけると、何もないと思われた場所から一人の青年が現れる。

「悪いんだけど、お茶の用意を頼めるかな?」

「かしこまりました。

 応接間でよろしいですか?」

「うん、よろしく」

 短い会話を交わすと、現れた時と同じようにその場で消えるヴェイ。

「今のは?」

「ああ、“ク”家の小倅さ。

 この間から側仕えとして色々やってもらってるんだ」

「なるほど。

 空間転移を使うのか……便利だな」

「いや、あれは認識阻害の類だよ。

 実際にはいるのにいないように見える。

 ボクも紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)がなければ気づかないレベルだから、中々のレベルだよ」

「へぇ……面白いな」

「ま、『便利』ってのは間違いないね。

 女湯も覗き放題だ」

 にやり、と笑う弥勒。

「ほぅ……それはあれか?

 本人以外にも効くのか?」

 つられてにやりと天界王。

「……言っておくけど、冗談だからね?」

「……も、もちろん、わかっているさ」

 どうだか、と心の中でつぶやく弥勒であった。


◇


 応接間に着くと、すでにそこにはお茶とお茶菓子が用意されていた。

 部屋の中をゆっくりと見渡し、そっと頷くと二人向かい合いながらソファに浅く腰をかける。

「で、何があったんだい?」

 座るなり、お茶に手もつけずに弥勒が切り出す。

「『クジ・ファ・ア』を知っているか?」

「クジといえば“ア”家の跡取りにいた気がしたけど……“ファ”の称号なんて持ってたっけ?」

「先月授与されたばかりだ」

「なるほど、そりゃ知らないわけだ」

「俺を暗殺から救った功績でな」

「は? 暗殺??

 そんなことして一体何になるんだ!?」

「わからん。

 俺以外に天界王になりたい、なんていう酔狂がいるとも思えんが……。

 というか、いたとしても暗殺までする意味がわからん。

 別にこの椅子に執着しているわけでもないしな。

 よほどおかしなヤツでもなければ譲ったっていい」


 天界が天界王によって統治されてからおよそ1000年の間、一度もそういった事件は起こったことがなかった。

 そもそも、天界王になったからと言って絶大な権力を得られるわけでもなく、ただただ面倒ゴトが増えるだけなのだ。

 退屈と面倒を最も嫌う天界人にしてみれば、誰かがやってくれるならそれに越したことはないのだ。


「だとすると、狙いはなんだろう」

「それがいくら考えてもわからなくてな。

 弥勒なら何か知ってるんじゃないかと思って」

 お手上げ、とばかりに深くソファに体を沈める。

「いやいや、さすがにボクにだってわからないよ。

 天界王になった所で、もらえるものなんて『王の証』くらいだろう?

 特別な力が隠れてるわけでもなしに、面倒くさい仕事が増えるだけじゃないか」

 同じようにしてソファに身をうずめ、天界王を見つめる弥勒。

 手にしたお茶菓子を無造作に口に放り込み、

「……あのさ。

 ほんっとキミはこういう揺さぶりに弱いよね」

「う、うるさい。

 ていうか、それに気づくのはお前だけだ」

 弥勒のツッコミに、わずかに顔を赤くして反論する。

「はははっ、まぁボクの眼は『特別製』だからね。

 けど……」

 ふ、と笑顔が消える。

「隠し事をしたまま相談しようだなんて、甘く見られたものだね」

 しばしの沈黙。

 何かを見定めるような弥勒の視線に耐えかね、天界王が手をあげる。

「悪かったよ。

 だが、それについては俺以外が知るはずがないんだよ。

 だから別に原因があるのではないか、と思ったんだが……」

「最悪の事態を見ておいた方がいいだろうね」

「そうだな……」


いつも応援ありがとうございます♪

気に入っていただけたら、評価やブックマークをお願いします。

ちょっとだけ過去編が続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。