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【完結】こちら異世界転生管理局  作者: ただみかえで
第4章 弥勒さまのいない世界
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第33話 予感

10/22 改稿しました。

 壁を背に、男を見上げる。

 俯瞰する眼(ドローンアイ)を使って上から見ているから、若干角度は違うかもしれないけど、だいたい合っているだろう。

 あとは、顔をあげてさえくれれば……。


『ホタルコ!!

 ミルティから聞いたぞ!

 ダメだその力は! なにか嫌な予感がする!!』


 頭の中に、フーちゃんの声が響く。

 『嫌な予感』って、フーちゃんにしては珍しく曖昧な言い方だ。


『私もできれば使いたくはないですけど。

 もうそんな余裕はないです』


 ついに、あと一歩とない所まで来ているのだ。

 せっかく場所がわかったのにここで気絶させられたら元も子もない。

「逃げ場はないぜ?

 諦めるんだな」

 追い詰めたことで少し余裕ができたか。

 それまで決して目を合わせようとしなかった男の顔が、ついに上がった!!

「チェックメイトだ」

「……あなたがね」


 紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)発動!

 スキル:支配者の瞳(ルーラーアイ)


「な、なに……を……」

 その言葉を最後に男の動きが止まる。

 スタンガンのようなものは、あとちょっとで私に触れる所だった。

 間一髪、危なかった……。


カッ!!


「う!?」

 突然、部屋全体が赤く発光した。

 一瞬のこととはいえ、かなり強烈な光だったため俯瞰する眼(ドローンアイ)を通してさえ目の奥が痛むようだ。

 なに!? また何かの罠!?

 スキルかなんかに反応して発動……するなら、とっくにしてるか。

 慎重にあたりを伺うが、私と拉致犯以外には何も映らない。

「…………」

 しばらく身構えて待っていたけれど、それっきりだった。

 うーん、なんだったんだろう?

 少し警戒しておいた方がよさそう、かな。


『ホタルコ! ホタルコ!』

『螢子くん!!!』

『螢子ちゃん!!』

『ホタルコ! 生きてるアルか!?』

『ああ、すみません。

 大丈夫です……』

 スキルを使うのに集中していて返事をしなかったからか、余計に心配をかけてしまったようだ。


「あ、えっと。

 楽にしてください。

 あと、呼吸とかは普通にしてくださいね」

 スキルが効いている拉致犯は、中途半端にかがんだ姿勢のまま固まっていた。

 ヒトコトもしゃべらず身じろぎすらしない。

 というか、こうやって指示しなければ呼吸すらしない。

 ……相変わらず怖いスキルだ。


 なんにしろ、一段落。

 後はこの場所を伝えて迎えに来てもらうだけだ。

 っと、その前に、

「この拘束を解いてもらっていいですか?

 できれば『毒』も解除してほしいんですけど」

 返事もなく(返事しろ、って言ってないからだけど)、黙々と拘束を解いていく男。

 それと同時に、ゆっくりと視界が回復していく。

「ありがとうございます」

 元々この人のせいなのでお礼をいうのもなんかおかしいんだけど、なんとなく口にしてしまう。


 改めて、自分の目で周りを確認する。

 本当に真っ白な部屋だ。

 部屋全体が光っているのか『影』がない。

 背中にあたっていた壁に手をついてみるけど、こうして触らないと壁だってわからないくらいだ。

 下手に動いたら壁にぶつかりそうだな。


 体の方も……うん、大丈夫そうだ。

 拘束されていた手首と足首は少し痛いけど、怪我らしきものはない。

 赤い光の影響は……ザッと確認した感じはなさそうだ。

 ……念の為『視』ておくか。


 紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)発動!

 スキル:高速(クイック)スキャン


 うん、手首足首の擦過傷以外はこれといった異常はなし、と。

 あ、お腹空いてるのか……そういえば、仕事帰りでご飯を食べる前だったな。

 食堂で食べてくればよかった。


『おい、ホタルコ、状況を知らせろ』

『あ、ごめんなさい。

 ちょっと色々確認してました』

 大丈夫、って言ったきり放置していたら怒られてしまった。

 帰ったらなにか美味しいものでもご馳走しよう。

 この間フーちゃんは杏のお酒気に入っていたし、果実酒の種類の多い居酒屋がいいかな?


『とりあえずこっちは大丈夫です。

 支配者の瞳(ルーラーアイ)の力で拉致した人は無力化されています。

 お迎えだけお願いしていいですか?』

『わかった……しかし、やはり使ってしまったのだな』

『ごめんなさい。

 でも、もうそれ以外に手がなかったので』

『しょうがないか……。

 それで、ホタルコ。

 特に変わったことはないか?』

『変わったことですか?

 んー、特にこれといっては……あ、一瞬だけ部屋が赤く光りましたね。

 かなり眩しかったですけど、高速(クイック)スキャンで『視』た感じは問題なさそうですよ』

 アレっきり光ることもないし、詳しくはわからないけど大丈夫だと考えていいだろう。

『赤く光った……?』

 けど、どうやらフーちゃんはそれが引っかかったようだった。

『ホタルコ……そこはどこだ?』

『言ってなかったでしたっけ。

 “王宮”らしいです、ここ』

『王宮……だと!?』

 そうだよねー。

 さすがにびっくりするよねー。

 私も最初何事かって思ったし。

『でも王宮のどこかまでは……あ! そうか。

 ちょっと聞いてみます』

 私を連れてきたんだもの、詳しくは拉致犯(この人)に聞けばいいのか。

「あの、この場所について詳しく教えてもらえますか?」

「ここは『謁見の間』だ」


『“謁見の間”だそうです。

 なんか、それにしては殺風景ですね』

『謁見の間……まずい!

 ホタルコ、今すぐ逃げろ!!』

『へ?』


 逃げろ?? ってどういうこと?

 だって、もう敵さんは無力化したし逃げるもなにも……。

 それ以前にどうやってここから出るんだろう?

 出入り口らしきものが見当たらない。

『そう言われても、ここの出口がわからないですし、どこに逃げたらいいのか』

『ああ、そうか……あそこは特殊だからな。

 わかった、できるだけ急いで迎えに行くからちょっと待ってろ!』

『はい』


 しかし。

 一体全体、フーちゃんたら急にどうしたんだろうか?

 あの赤い光に何かがあるってこと?

 後ろで、ミルティ先輩たちの動揺している声も聞こえたし、私の知らない何かがありそうだ。

 ……よし、とりあえず出口を探そう。


 だけど。

 動き出すのを待っていたかのように、再び部屋が赤く光る。

 元々赤い部屋だったのか、って思うほど部屋全体が真っ赤に染まる。

 さっきのような目も開けていられないような強烈な光ではないけど、その分一瞬で消えることもなかった。


『謁見の間における敵性スキルの使用を確認。

 審議の結果、当該スキル使用者を逮捕します』


 そして聞こえるアナウンス。


『え!? なにこれ!!』

『どうしたホタルコ!?』

『フーちゃん……なんか変なアナウンスが流れてきて……』

『アナウンス?』

『敵性スキルとか逮捕とか、って!』


ヴィーーッ!!ヴィーーッ!!!


『警報!?』

『くっ! 遅かったか!!!』


 これじゃまるで、弥勒さまがいなくなった時と同じじゃないか……。

 違うのは彼らの目的が私だ、ってことくらい。

 何もかも手のひらの上で踊らされていたってこと!?


『いいかい螢子くん!

 絶対に助けに行くから、何があっても諦めないでくれ!!』

 警報の音で頭がクラクラする中、もふもふ局長の声がする。

『……何が、起こるんですか……??』

『それは……すまないけどボクにはわからない。

 けど、必ず助けに行く。

 ミルティも、フランちゃんも、ファラスくんや千代くんだっている。

 きっとなんとかなる……いや、なんとかする!

 だから諦めずに待っていてくれ』


 話している間にも、得体の知れない何かが迫る気配がする。

 見えない手に顔や腕を掴まれる。

 頭痛が更にひどくなり、とても立っていられなくなる。

『できるだけ早くお願いします。

 それと……』

『ん?』

『その時は、心ゆくまでモフらせてください』

『……ふっ、キミってやつは。

 約束しよう!』


 その声を最後に、私は意識を手放した……。


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