第23話 警報
前回のあらすじ!
『転生・転移によって世界を救うためなら人ひとり殺してもいいよね派』に捕まった螢子。
果たして選別マシーンとなる運命は回避できるのか!?
戦力を持たない彼女が逃げ延びるには――
「あの……なにやってるんですか?」
突然頭の中に響いた弥勒さまの声に、思わずツッコミを入れる。
驚きはしたが……残念ながら安心も覚えてしまった。
『ちょっとちょっとー!
せっかく良い所だったのにー』
「いい所、って……」
「あん? なにか言ったか?」
「い、いいえ?」
彼らに聞こえないように、と小さい声で話したつもりが聞こえてしまったようだ。
むぅ、これ以上小さい声はなかなか難しいな……
『あ、声に出さなくていいよー。
心の中で話しかけてくれればボクには聞こえるし。
もちろん、この声が聞こえてるのは螢子ちゃんだけだからねっ!』
(そういうことは早く言ってください!)
『あっはっは、ごめんねー!』
弥勒さまの声には一切悪びれる雰囲気はなかった。
絶対わざとだ……。
(それはともかく、なんですかさっきの『前回のあらすじ』って?)
『んー?
いやー、今の状況を整理してみたんだけど』
(確かにわかりやすかったですけど……選別マシーンというのは……)
『彼らは螢子ちゃんのことをそうとしか見てないだろう?』
(……ですね……)
改めて言葉にされるとすごく嫌な気分になる。
少しでも『協力できれば』なんて思った私がバカだった。
こんな風に拉致するような人たちがまともなわけがないことくらい、普通に考えれば分かりそうなものなのに。
それもこれも、紅玉の眼の光とやらで思考能力を鈍らされたせいだ。
『もうその影響は残ってないよ?』
(……人の心を読まないでください)
『いやいや、読まないと会話できないんだけど』
(それはそれ、これはこれです)
まったくもう。
(それで?
助けに来てくれた……わけじゃないんですよね?)
『あー、ごめんねー、ボクそっちに行けないから』
(やっぱり……)
声しか聞こえないから、なんとなくそんな気はしてた。
この間言っていた、天界が私に仕掛けたという『警報』があるせいだろう。
弥勒さまからの接触があると、即天界に通報されるという魔法(あれ、魔術だっけ? どう違うかわからないからどっちでもいいか)。
詳しいことは教えてくれないのでわからないけど、きっとまだ弥勒さまは天界に戻るわけにはいかない、ってことなんだろう。
『正解!
理解が早くて助かるよ』
(あの……気持ち悪いんで、話しかけてる時以外に反応するのやめてくれませんか?)
『気持ち悪い!?
え?! 酷くない!?』
(いえいえ、それほどでも)
『これっぽっちも褒めてないからね!?』
ダメだ。
どうしても、弥勒さまと話してると漫才になってしまう。
『ボクは楽しいけどね~?』
(私もたの……いえ、なんでもないです)
ここで『私も楽しい』なんて言ったら、絶対つけあが……あ!
『そっかそっか、螢子ちゃんも楽しいか~』
ああもう!
心の声がダダ漏れってのも考えものだ。
(……目的はなんなんですか?
ただ漫才しにきたわけじゃないんでしょう?
まさか、いつもみたいに顔を見に来ただけ、なんて言わないでしょうね?)
『もちろん、螢子ちゃんを助けにさ。
といっても、ボクが直接行けないので、他の人に頼んだんだけど』
(他の人?)
『そ、頼れるおねーさんと、頼れるナイスガイにね』
ドッゴーン!!!!!
次の瞬間。
ものすごい音と共に、この部屋のドアが内側に吹っ飛んできた。
なにごと!?
◇
「はーい、螢子ちゃーん。
元気―?」
声に振り向くと、ドアのなくなった入り口にはミルティ先輩と……大きな毛玉!?
「あ、え、はい、怪我とかはないですけど……あの、その後ろの……?」
「螢子くん、助けに来たよ」
「その声……もしかして、もふもふ局長!?」
どういうこと!?
私の知ってる局長は手乗りサイズだったはず……それが、どう見てもドアと同じくらいの大きさがある。
「そうだけど……堂々ともふもふと言わないでくれないかな?」
「あ、ごめんなさい、えーっと……ラビエン局長!」
「……今、名前忘れていただろう?」
「そんなことより、どうしたんですかその姿?」
「あ、流した」
「……ちっ、うまくごまかせたと思ったのに」
「舌打ち!?」
「もう、局長うるさいですよ。
話が進まないじゃないですか!」
「す、すまない……」
よし、強気でごまかす作戦成功。
「で、結局なんなんですか? その姿」
「バトルフォームだよ。
いつもの愛らしい姿では攻撃力が足りないからね、この大きさであればラビエンキックの威力は倍増なんだよ!」
「あ、もしかして、あのドアって」
「ええ、そうよ。
鍵がかかってたからね、局長が蹴り開けたのよ」
ちらっと、吹っ飛んでいったドアを見ると真ん中の辺りから半分に折れている。
結構頑丈そうに見えたんだけど……なるほど、ラビエンキックすごいな。
「く、くそっ!
こんな所で捕まってたまるか!」
突然の来訪者の出現に、しばらく呆然としていた偽クレィさんとKさん。
どこからか取り出した武器を構え、ミルティ先輩へと襲いかかる。
巨大もふもふに挑むのが無謀とはいえ、か弱い女性を真っ先に狙うとはひきょ――
「え……?」
ほんの一瞬、それこそ1回まばたきをしたくらいの間に、ミルティ先輩の前から彼らの姿が消えていた。
あ、いや、足元に……音もなく崩れおちている。
「お見事、ミルティくん」
「お粗末様です、局長」
そう言ってハイタッチ。
……てことは、これ、ミルティ先輩の仕業?
「先輩、強いんですね……」
「ふふふ」
とてもいい笑顔を見ながら、絶対怒らせないようにしよう、と固く心に誓ったのだった。
その後、彼らはフーちゃんが引き連れてきた保安員に連れて行かれた。
背後関係を含め組織の尻尾をつかんでやる、と息巻いていた。
うーん。
しかし、あんな『過激派』みたいな人たちもいるんだなぁ。
『世界』と『個人』か。
難しい問題だよなぁ。
『良くも悪くも今のやり方はまどろっこしいからねー
っても、世界と個人とは天秤にかけるようなもんじゃないんだけどさー』
再び弥勒さまの声が。
(まだいたんですね)
天界の人に見つからないように、ささっと帰ったと思ってたら。
『念の為ね。
とりあえずは一件落着かな?』
(だと思います)
『んじゃ、行くね―。
また顔を見に来るよ』
(……いや、普通に帰ってきてください)
『それは……まだちょっと難しいかな』
(まぁいいです。
ではまた)
『じゃあね、螢子ちゃん』
「はい、またです、弥勒さま」
そう、思わず声に出して言ったと同時だった。
《《ミツケタ!!》》
『あ』
「え?」
ヴィーー!!!ヴィーーー!!!!
謎の声と共に、私の中から不快な音が鳴り響く。
なにこれ!?
『アラーム!! なんてことだ、名前を呼ぶだけで発動するのか!?』
え? え?
「わ、私が、呼んだから!?」
『螢子ちゃんのせいじゃないよ。
ボクの見立てが甘かっただけ!』
「螢子ちゃん!? 何この音!? 大丈夫!?」
「ど、どうなっているんだい!? 螢子くん」
ミルティ先輩ともふもふ局長が駆け寄ってくるが、答えようがない。
『ごめんね、螢子ちゃん
一旦ボクは全ての繋がりを断つよ。
今度なにかあった時は助けてあげられないかもしれないから、十分に注意して!』
「……はい!」
何か言わなきゃ! と気持ちばかり焦って言葉が出てこない。
そんな私に、弥勒さまは優しく声をかけてくれる。
『いいかい、キミのその眼は特別製なんだ。
まだまだたくさんの力が眠っている。
それらを使いこなせれば、今後の助けとなってくれるはずさ』
「はい!」
『ああもう、時間がない!
ほんと、気をつけてね!!!』
「弥勒さまも!!!」
『ふふ、ボクなら心配無用さっ』
いつもの軽い調子で言った声を最後に、弥勒さまの気配が消えた。
それと共に、警報音が鳴り止む。
紫翡翠の眼のさらなる力、か……。
実のところ、この話まで螢子が弥勒さまに名前で呼びかけることはなかったりします(ト書きや、いない場所で固有名詞としては出てきます)。
……もし、見つけたら教えてください(笑)
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