Link.9 魔法実践学②
セラノアと契約したことにより、魔法を使う条件が揃ったはずのアマネ
アマネは言葉にした「セフィロトの樹に入る」夢を実現するため、まず魔法を習うことにした
実戦に関しての補修をとある教授に受けに行くと、部屋にあったのは本に塗れたとある男性で───
◆
「『殺人現場!?』」
アマネとセラノアは目の前に広がる光景を見て同時に驚きの声を上げた
(……というかセラノア、絶対どっかにいるだろ。家、出てきてるよな?)
『今更ですか?隣にいますよ。霊体化してるのでバレません』
(便利だねぇ、霊体化……)
叫んだものの、二人は正直ベタな展開にそう叫んだだけだった
どうせ血も出ていないのだ。死んでいないだろう
大して本気で驚いたわけでもそう思ったわけでもないので案外冷静なのだ
『いつの時代もこのノリは変わらないのですね』
「あー……えっと、大丈夫ですか?」
セラノアは少し苦笑している様子。
なかなか珍しいものの、ひとまずこの状況助けない訳はないだろう、とアマネは本を一冊一冊拾って目の前の男を助けていた
◆◆◆
「──はっ!」
「あ、起きた」
数分後、目の前に倒れた姿勢のままの黒髪の男性は声を上げて起き上がった。
毛先が緑色で特徴的な男性だ
「あ、あぁ……ごめんね。何をしていたんだっけ……僕は」
「えっと、なんか本に埋まってましたよ」
「それはそれは……あ、僕か。うーん、あ、思い出した!それで助けてくれたんだねありがとう」
ポンコツなのか、少しの記憶喪失をしていた目の前の男は服のホコリを払い、立ち上がって自己紹介を始めた
「僕はエルツ。エルツ・ロメイルだ。よろしくね」
「えっと……アマネ、です」
まるで貴族のような仕草で綺麗な挨拶をするエルツ教授。
一瞬、真っ当な雰囲気に驚き思考が停止する。
しかし、すぐに自分も返さなければいけないと考えたアマネは軽く自己紹介をした
「えっと、それでなぜ君はここに?」
「えっと、魔法実戦学の補修をしていただきたくてきました」
「おぉ!つまり君は自分の天使を手に入れた一年生ってことかな?」
ぱん!と手を叩くと教授は嬉しそうに聞く。
しかし、アマネはそれに対して少しバツが悪そうに告げた
「えっと……2年生です」
「あぁ!そっか!それなら尚更やっとだね。おめでとう」
「……あ、ありがとうございます」
知らない先生だから少し緊張してたけど……
割と気さくでいい先生かも?
"遅い"と言うわけでもなにか気を使うわけでもなく祝福してくれたその姿勢にアマネは少し嬉しさを覚える。
「あっ、それで魔法実習学だったね。じゃあ座学のテストをして……放課後それに合わせて実践してみようか!」
「放課後ですか?」
「あっ、用事があったり嫌だったら別日でも大丈夫だよ。ただ、ちょうど今日放課後に魔法具を使って似たような実践をしようとしてる子がいてね。それに合わせようと思ったんだ」
話では、同じく天使を持たない2年生が魔法を使えないならばと魔道具で似た環境を作って想定訓練をしてみたいとのことだった
「なるほど……」
「もしよければ放課後に来てね。じゃあ一応授業の時間だし……これ、解いてみてね」
「は、はい」
渡されたテスト用紙を机に置き、狭い研究室のような部屋の机でテストを受ける。
内容は簡単なもので座学だけはできる限りしていたため理解できていた
◆◆◆
14──
15.魔法はどんな条件下で発動することができるのか
A.天使と契約していて、その場のマナ濃度が一定以上ある場所
16.自然に存在するマナだが、その種類は?そしてそれらの名称を答えよ
A.2種類。天上力と淵下力
17──
うん、結構楽勝だな
座学は天使がいなくても努力ができる範囲。
アマネはその成果を見せてすらすらと解いていった
ある程度筆を進めたところで、今まで空気を読んだのか静かにしていた声が耳元に聞こえた
『先ほど魔道具と言っていましたが……それはなんですか?』
(えっと、マナのこもった物を使って魔法に似た効果を発揮する道具のことだよ。魔法を使った方が燃費も効果もいいけど、天使を持たない国や人にとっては画期的な道具だよ)
『……見なければ分かりませんね』
(じゃあ放課後一緒に行こうぜ)
割と簡単なテストだからか、アマネは気楽に念話に応じながらテストを書き終えた。
それを終えると教授に手渡し、もう授業時間も終わりに近かったためすぐに自分の教室に戻って行った
「……天使のいない2年生……まさかあいつか?」
廊下でふと、先ほどの話を思い返す。
天使がいなかった身として、該当する人物が一人思い浮かぶ。
もしかしたらと少しの期待を寄せてアマネは教室への歩みを進めた




