Link.85 紅い魔人③
赤い悪魔との戦闘が始まる
セラノアは味方の補助に全力を尽くしていた
◆
風切音がする
セラノアは空に昇る途中に、その正体を見た
「────人…………?」
声が途切れる瞬間、基地でもある壁に、その流星は衝突した
敵襲が右からきていたものの、その流星は戦場から遠い反対側の壁に激突したように見えた
煙が晴れると、そこには巨大な白い揺籠。
壁基地を対象として発動させたエーデルの権能だった
流石は副隊長と言うべきか、壁基地は無傷で済んでいた
「よかっ………………っ!?」
ただ、安心も束の間
その激突地点から、突如溢れ出したオーラにセラノアは言葉を失った
魔力なのか、淵下力なのか
それともまた別の威圧感というやつなのか
セラノアは正確にはわからない
しかし、少なくともこの場にいる誰もが現れた存在の異質さに気がついていた
「あれは…………なんですか………!?」
力の奔流がここまで届き、吐き気を覚えるセラノア
オーラを感じただけで苦しくなり、飛行もおぼつかなかった
「………わ、わからない。知らないわよあんなの!!」
近くにいた誰かの天使がそう叫ぶ
目に涙を浮かべ、恐怖に染まっていた
ただ、その"色"は長くは続かない
「勝てるわけ───ぁぇ………」
一閃の紅が空へと走り、自然とセラノアはそれを目で追う
はっと意識を取り戻し、目の前で話していた天使に目を向けると、そこには干からび、頭のなくなった天使の姿があった
「ひっ……………」
何が起こったのかわからない恐怖が心臓を強く打つ
頭すら痛くなるような悪夢
まだ、自分は夢を見ているのかと錯覚しそうになる程だった
「うーん、うぅーん…………足りないなぁ」
ふと、下から声がした
聞き覚えはないものの、ロゼと似た………
いいえ、こんなの…………あの時以上のっ………
振り向くことが怖い
恐怖による汗を額に滲ませながら、セラノアはそれでも体を声の方へ向ける
視線の先には、隊員達の喧騒
そして、異様に静まり返った一箇所の「紅」
──血溜まりに立つ、悪魔だった
「あれぇ?こんにちはぁ。堕ちた者って久しぶりに見るなぁ」
声を聞いて初めてわかる、あの壁に激突した存在とは違う別の"異質"
『隕石』に激突した存在を例えるならば、この少年はある時初めて確認される『ウイルス』のように、自然に紛れ込んでいた
「僕ぁはアザゼル。堕天使さぁん、仲良くしよーねぇ?」




