Link.78 ??の声
訓練が終わり、その日のうちに歓迎会を開催したヴァウ
あまりの振り回し様に、百尾の黒隊長のノーチェによってヴァウはお灸を添えられた
そしてアマネは、誤って手元にあったお酒を飲み、意識を手放すのだった
◆
「うぅん……………」
響き続ける虫の音、灼熱の太陽、一面の向日葵
あぁ、夏だな
…………って、ここどこだ?
頭がぼんやりする…………
『やあ、起きた?おはよう────くん』
「ん…………?誰………だ………?」
眠気が消えないアマネはあたりを見渡す
人影はないが、一面向日葵が咲いていた
しかし、どこからか水の音が聞こえる気がする
………どこだ?
「………この向日葵、俺を見てる………?」
歩くと、全ての向日葵がアマネを目線で追うように首を動かしていた
ただ、アマネは不思議とぼーっとして、懐古の気持ちすら湧いていた
ふと、聞こえた気がする声を思い出す
アマネはその声を辿って視線を動かした
「…………たしか、こっちから声が………」
ゆっくりと、振り向くと、そこには巨大な水の玉
ひまわりを潰さないギリギリほどの高さに浮いていた
「………………」
『幸せを、願ってるんだ』
ただ目を奪われていると、また声がした
水たまりの向こうだ
神聖なほど透明だが、その内には青紫の光がバチバチと弾けている
向こう側は見えそうになかった
『だから、知って。君の──を。そして、叶えてね』
「…………………」
彼はなにも言えない
ただ、何者かもわからない
───静かに、彼は水に触れた
◆◆◆
「っ……………!」
目を覚ますと、そこはフラクタスで用意されている自室だった
ただ、カチャカチャと音が鳴っており、一人ではないようだった
「……………」
アマネはただ、自身の状態を把握する
汗をかき、なにか焦っていたのか息が荒くなっていた
ふと、右手に少しの抵抗を感じ、見るとそこにはノーチェがいた
【あっ…………起きた?】
「えっ?あ、あぁ…………」
ノーチェは優しく火文字で心配してくれる
アマネはただ混乱したまま答えるしかできなかった
【うなされてて、悪夢を見てたみたいだから、手を握ったら安心するかなって………】
悪夢………?
なにか、夢を見てた気がする………
しかし思い出せないアマネは、笑って「大丈夫だよ」とノーチェに言い、立ち上がった
「ところでこの音は………?」
「あっ、ノーチェ!起きたら伝えてって言ったでしょ!」
部屋の中にあるキッチンから、聞き慣れた声がした
ノーチェの弟、アルバだ
エプロンをした、羊耳のアルバはなんとも愛らしい
こんな弟がいたらなと一人っ子ながらに思うアマネ
ただ、ノーチェは火文字を使わずにただアルバを見ていた
返事しないのかな?
仲悪いんだろうか……?
「まあ………確かに。僕が冷静じゃなかった。ごめんノーチェ」
「ん?えっ?」
タメ口のアルバも珍しいが、それよりも驚いたのは何も言っていないはずのノーチェがアルバに謝らせたように見えたことだった
「アイコンタクトって極まると会話までできるんだな………」
「あ、ごめんなさいアマネさん………これは姉のテレパシーです。火文字は他の人に向けて後で作ったもので、これも姉の能力の一つなんです」
話を聞くと、どうやら酒場で見せた吹き飛ばしも、このテレパシーも表裏の狐という悪魔のキメラとしての能力らしい
「もー!人がいる時にテレパシーで文句言うなって!伝わんないでしょ!?」
「…………」
はは、仲が悪いんだかいいんだか…………
姉弟の絡みを見ていると、アマネはだんだんと焦燥感を忘れ、ただ心が温まる思いになっていた




