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エンゲージ・リンク  作者: 花酔
第3章 広がる世界のカプリチオ編

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73/92

Link.70 願い?

フロラクワイヤの統制を見たセラノアは自問する

ここで私は何をしているのか、と

そこで、アマリリスはセラノアを連れて足りないものを教えてくれるようだ……


◆


「な、なにを………ぉぉおぁっ!?!?」


ズッ、と地面がそのまま浮かび上がったような錯覚を覚える

瞬間、強く重力を体に感じる

アマリリスはセラノアを抱えたまま空に一直線に上昇していた


「っ………けほっ………息が!」

「あ、ごめんよ?」


圧力によって掠れた声で文句を言うセラノア

空を見ていたアマリリスはすぐにセラノアの顔に手をやり、圧力は感じなくなった


「僕の魔法さ。誰だって使える魔法はつまらないだろう?」

「ま、魔法って作れるんですか………!?」


目を凝らすと、アマリリスにも自分にも、薄い風の膜が張られていることがわかった。

これによって息ができる上に上昇圧も無効化しているようだった


「意外と簡単だよ?………ま、とにかく」

「わぷっ!?」


足元の木はアマリリス達を乗せて登り続ける

話を続けようとしたアマリリスは目を瞑った

何かわからなかったセラノアは、アマリリスの覗き込んでいた顔の裏に雲が迫っていたことに気づけなかった


「……………けほっ」

「ごめんね?よく見てなかった!あはは」

「人を乗せるなら注意くらいしておいてください!」


ぎゃんぎゃんとセラノアはアマリリスにキレる

それをアマリリスは笑って受け流されていた


そして、しばらく雲の対策に目を強く瞑っていると、頭を優しく2回叩かれた


「っ…………?」

「ほら、ついたよ」

「……………」


つい、その景色に言葉を失った

アマネもセラノアも時間も高さも違うものの似た景色を過去に見ていた

しかし、霊体化して浮いていたあの時とは違う


さらに高い、雲の上の地平線


「…………朝でも、綺麗なものですね」

「これが君に見せたかったもの。何を思う?」

「は?何、って………」


質問の意図が分からず、問い返す

アマリリスを見上げると、その瞳はセラノアを映しておらず、ただ先にある光(陽光)を受け入れていた


「君に足りないもの。それはね、『自由』だよ」

「『自由』……」

「体育祭、見たよ。アマネくんのこともね」

「っ…………アマネの場所はわかったので──」

「しっ、よそ見しない」


ただ聞け、とそう言われた気がした

唇に人差し指を当てられ、強制的に黙らせられる。

ただ、風の膜があるため実際に触れてはいなかった


「アマネくんの場所はまだわからない。今弟くんと連絡を取ろうとしているんだけど、どうにも届いてないっぽいんだよね」

「………」

「あ、遮らなかったら喋ってもいいんだよ?」

「………なら初めからそう言ってください」


どうやら現状、ちゃんと探してくれてはいるようだ。

行き詰まっていることは、この1週間予想していたため特に驚きもしなかった


「ま、なんにしろ………アマネくんイケメンだねぇ」

「……………はぁ!?」

「結構目立ったし、それなりに顔面アップで配信見たけど、かなり外見は好かれそうな見た目してるね、彼」

「……………そうですね。ってそんな話どうでもいいんです!」


なんだかどんどんと本題から外れてません!?

と文句を言ったセラノアに、アマリリスは止める様子は見せなかった


「ほらそれ。君は本題が好きだよね」

「……!………アイスブレイクなど、苦手なだけです」

「君は定線に乗った話しかできない。ある程度自分で通る道を決めなきゃ進めないんだ」


う、と言葉に詰まったセラノアをくすくすと笑いながらアマリリスは降下し始めた

先ほどよりもずっと遅く緩やかで、揺れも圧も浮遊感も感じなかった


「君に足りないものは自由。なんだけど、気絶した理由、なにかしらの罪悪感なんだってね」

「……………なるほど、感情を持たない悪魔相手に役立たないわけですね」


それも"感情の色"を見て得た情報でしょうか


メガネ先輩は「戦闘向きじゃない」と言っていた

考えも感情もない悪魔の心を読む、もしくは察する権能など、使い所がないのは確かだった


「そうです。人を殺しました。それを償うためにも──」

「──それは君の願い?」

「は………」


少し顔を曇らせたセラノアは、胸元をギュッと握りしめていた

しかし、それはよく耳に響くアマリリスの一言によって霧散してしまった


「君は君自身の願いを見つけなきゃ、劣等感はずっと付き纏うよ」


ビュウ、と風が吹き、速度が増す

安定感の失われない樹木の直下エレベーターはそのまま地面に到達した


「ま、結局はおせっかいさ。役に立たなきゃ忘れていいよ」


顔も体もセラノアに向けずに振られた手を、ただ彼女は茫然と見ていることしかできなかった

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