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エンゲージ・リンク  作者: 花酔
第一章 問いと契約のオーバーチュア編

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アマネはセラノアにその正体を尋ねた

セラノアは言葉を濁しつつ、答えなかった

冷たい態度のセラノアに、アマネは契約したからには知ることが大事だと、料理を共に作ることになった


◆


「──さい、起きてください」

「んぅ……ぁれ……」


ふと目を覚ますと、目の前には黒髪の少女がいた


「うぁっ!?びっくりした!美少女が!」

「何を言ってるんですか。学校?とやらに遅刻しますよ」


いや、思い出した……セラノアか


アマネはふと先日のいまだに実感の湧かない事件に思いを馳せる。


廃墟から悪魔が出てきて、俺たちは契約してそれを倒した

……いまだに信じられないなぁ……はは


「あなたは何をぼーっとしているのですか。聞いてますか?遅刻しますよ」

「へ?あっ、え"っ」


ふと時計を見ると、目覚まし時計は止まっており、始業十分前を示していた


「なっ、なんで止まって……!?」

「うるさかったので。壊さない様止めるのに苦労しましたよ」

「なにやってんの!?」


急いで支度しつつ、背後でさも当たり前のようにそう言うセラノアに多少の怒りを込めたツッコミを入れる


「なんですか、まだ寝ていたから騒音を片付けたのに」

「目覚まし時計!!目を覚ますために音が鳴ってんの!」

「へえ、そんな便利なものがあるのですね」

「言ってる場合か!」


慌てているため、少し口調荒くそう会話を続ける。

アマネは支度が終わると、セラノアに一つ言葉を投げてすぐに出ていった


「セラノア!えっと……家から出るなよ!見つかったら厄介だから!頼む!」

「それくらいわかっています」

「おーけー天才だ!」


バタン!と強く扉を閉めたアマネはドタドタと走って寮の階段を降りるのだった


◆◆◆


「はぁっ……はぁっ……間に……合った」


アマネは肩で息をしながら席につく。

昨日の今日で疲れが溜まっていたのだろう

ぐっすり寝ていたおかげで不思議と嫌な疲労感はなかった


「お!遅刻ギリギリ珍しいじゃん〜座学(ガリ勉)のアマネさぁん」

「あ、あぁ、そうだな」

「昨日の事件の近くにいたよな?遠目だけど見かけたやつがいてさぁ、いやぁきっとその場にいたら面白……いやいや勇気あるアマネくんの行動を見られただろうに……」


予想はしていたものの、アマネは情報の速さに少し驚く。

それと同時にこの後続く対応にやるせなさを感じていた


「勇気ある逃げ!名誉の逃走劇!!いやァ見たかった!」

「ははははっ!お前性格悪ぅ!」

「確かあの事件の中で子供を助けたっていう一般の度胸ある人がいたみたいだけど、その人を見習ってほしいよなぁ!はははっ!」


好き勝手に言っては罵倒してくるクラスメイトの男子衆。

しかし、その言葉にアマネは少し体の動きが止まった


「その……それやったの……俺かも」

「は?ははっ!いや醜(みにく)っ!ついに虚言癖(きょげんへき)!?いやさすがっすわ!」

「おい待て、この写真、本当にこいつなんじゃ……」

「はぁ?」


知ってて黙っていた場合、後で知られた時に面倒なことになる。

だから正直に言ったのだが……どうやら相手の癪に障ってしまったようだった


「え!すげーじゃん!やるなアマネ!」

「天使いなくてもいい奴だもんな」


一部の生徒は、アマネに賛同して好意的に接してくれる。それは嬉しいがアマネとしてはどうしても敵意を向けてくるクラスメイトがよく目に入ってしまうのだ


好意的とは言ってもなにか軽く課題を手伝った程度で友達とも言えない名も知らない人たちだが


クラスメイトの一人は舌打ちを一つして一言残して自分たちの席に去っていってしまった


「あそ、つまんな」

「まぁ天使がいないなりに頑張ってんじゃねえ?かわいそ」


そう言って離れていくクラスメイトに呆然としていたアマネ。

しかし、すぐに耳元に響く声で我に帰った


『滑稽(こっけい)ですね』

「うおわぁっ!?」

「?」

「何叫んでんだよ」

「い、いや……ははは……」


突如(とつじょ)聞こえた声に、聞こえるはずのない声に驚いたアマネはつい大声で叫んでしまう

不思議そうにクラスメイトがこちらを見るとアマネは急いで取り繕った


「……なんで声が聞こえるんだ……?幻聴(げんちょう)か」

『見つかると厄介なのでしょう?それは理解していますよ』

「そういうっ……意味だけじゃねぇ……現実だったか」


やっと見えてきた自分の契約天使……いや、契約堕天使の性格に少し頭を抱えるアマネ。

再びツッコミで叫びそうになるのをなんとか抑えて小声で声に返答した


『あんな小物、今朝私に言ったみたいに文句を言えばいいじゃないですか』

「無理なの!あいつら成績いいし表面はいい子ぶってるから先生に言われたら勝てないんだよ」

『その先生とやらにも言ってやればいいのでは?』

「さっ……らに上の人に言えるかっての……てかどういう状況?はは、どこにいんの……?」


精一杯の小声でその声に応える。

アマネは若干額の青筋がピクピク動くような錯覚を覚える

だいぶ物騒な物言いだが彼女は殺すと言わないだけマシだろう


堕天使なだけあって少なからず過激な思想なのか……?


『これは念話(ねんわ)です。契約した天使と人間ができるものですよ』

「わーおそんな話聞いたこともないな」

『そうなのですか?』


今の時代この学園に入学している人、もしくはこの学園都(・)市(・)に生まれる人はいずれにしろ天使と契約する機会がある。


学園都市というだけあって一つの都市として形成されているこの学園には関係者が住み、そこで生まれた人はほぼ確実に入学する権利があるのだ


(まぁ……批判的な意見もあるけど、大抵貴族が相手だから強く言えねえんだよな

って違う。契約者がこんだけ多いのにまだそんなこと習ってねえぞ?)


『でも今朝勝手に読んだ教科書とやらには念話のこと書いてましたよ』

「ならまだ習ってないだけだな……って勝手に人の心と教科書を読むなよ……ってか読めるのかよ」


アマネはジト目で疲れを表すように机に体を預ける。

その様子にどこか不思議そうな声がまた頭に響いた


『読める、というよりも貴方が話しているだけでは?』


(あ、こっちからも話せるってこと?)


『はい』


(遮断(しゃだん)する方法は?)


『知りません』


(おーけー天才)


皮肉をこめて心のうちで愚痴る。

ふと設計者とかいるのか?と思ったのだがどうやらその声は聞こえていなかったようだ


(実験、これは聞こえてる?)


『はい』


ならこれは?


『……』


どうやら伝える気のない、というよりそれを考えない思考は伝わらないらしい


(これは骨が折れるなぁ……契約者(エンゲージ)ってすげぇ)


『ならしっかり練習しましょう』


(はいはい……)


そんなことを話していると、チャイムが鳴り先生が入ってきた。

授業に集中しなければただでさえ低い成績がなお低くなってしまう


教科書類を机に出し、HR(ホームルーム)を受けるのだった

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