Link.6 オムライス
悪魔が討伐され、契約者や警団が辺りの調査を行う
そんな中、ひと段落ついたアマネは守った少女を契約者に引渡した
ただ、セラノアは堕天使。
その存在は是とされるものではないため、アマネはセラノアを隠しながら、家に帰ったのだった
誰にも聞かれる心配のなくなった家で、アマネが聞くことは一つ、とある疑問だった
◆
「あんたは……誰?」
そう切り出したアマネの目には疑いと不安があった
ベットに座るアマネからそれを察したセラノアは、少し目を伏せて勉強机の前の椅子に座り、口を開いた
「私はセラノア。……ただの堕天使です」
「それは知ってる。聞きたいのは、なんで捕まってたのかと……なんで俺を助けたのかだ」
セラノアはその問いにはすぐに答えられなかった。
しかし、あまり時間が立たないうちに顔を上げて冷めた表情で続けた
「ただ──罪を犯しただけです。助けたのは気まぐれ。契約も、気まぐれ、です」
「……わかったよ。なんか言いたくない事情があるんだな?ならもう聞かない。なんにしろ助けてくれたのは事実なんだ。ありがとう」
はぁ、と長めのため息をついたアマネは薄く笑ってセラノアにそう言う。
そして感謝を伝えるために頭を下げた
「……当然のことをしたまでですよ」
「ならそのモラルに感謝だな。少なくとも、悪い奴ではなさそうに見えたよ」
「……はぁ、単純ですね」
「かもな」
アマネはなんとなく、言葉の節々に仄暗さを感じた。なんせ褒められるたびに少し暗い表情をするのだ。そのためアマネは少し警戒を緩めることにした
じゃあ!と手を叩き、ベッドから立ち上がるアマネ。その様子にセラノアは不思議そうに首を傾げていた
「お腹空いてないか?お礼っていうか、契約したなら一蓮托生だろ?何が食べたい?」
「……料理、できるんですか?」
「……できなそう?」
「はい」
「はは、辛口ぃ……」
そう言いつつエプロンをつけ、準備をしていくアマネ。
セラノアは訝しみつつもその様子を止めるつもりはないようだった。
「……では、オムライス?を食べてみたいです」
「おーけー!って、なんで疑問形?」
「……食べたことがないので……」
セラノアは少し申し訳なさそうな表情で答えた。
どうやらおもてなしを一方的に受けることに対して葛藤しているようだった
「じゃさ、ちょっと手伝ってくれない?」
「へ?」
「簡単な作業でいいから!そしたらいいもんが作れる気がしない?」
「……わ、わかりました」
そう言って二人はキッチンにつき、オムライスを作り始めたのだった
◆◆◆
「よし、完成!」
「……!」
目の前に並ぶ二つの綺麗なオムライスを見て、セラノアは少し嬉しそうだ
食卓に運び、一口食べてみるとセラノアは少し不思議な表情を浮かべていた
「……こういう味もあるんですね」
「ありゃ?お気に召さなかった?」
「い、いえ……こう言うものを食べたことがなかったので……」
ただ素直に初めての味に困惑しているだけとのことだった。
アマネはセラノアが慎重に一口一口食べる姿を微笑みながら見守っていた
「……何をずっと見ているんですか。冷めますよ」
「確かに。じゃあ──うん、美味い!初めて……なのかはわからないけど料理うまいじゃん」
「……それくらい当然です」
冷めた返事だが、その人間らしくない長い耳が少し赤くなっているのが見えている
どうやら嬉しいようだ
アマネはその様子を見ていると、ますますわからなくなっていた
……これだけ見てるとただのいい子だよな
天使の感性が違うのか、それともなにか訳があって堕天してるのか……
数時間前、あの悪魔を焼き切った技はおそらくアマネにしか見えていない。
それほど一瞬の出来事だった。
黒い炎によって形作られた大剣が空中に作られて断頭台のようにして首を切ったのだ
「そういえば、あの黒い炎がセラノアの権能なのか?」
「……は、い……ただ、もう使えません」
少し虚を突かれたように動きが止まり、俯くと暗い表情でそう言った
すぐに収めて隠したようだが、一瞬の肩の震えをアマネは見逃さなかった
権能、それは人間が魔法を使えるように天使が一つ持つ特殊な力だ
──天使が魔法を使う理由はない
あの黒い炎は、魔法ではないはずだとアマネは考えていた
「い、いやいいよ!気にしないでくれ!」
「……」
「まだ会ったばっかだ。信用に値するって、話せるって思ったら言ってくれ。俺もまだ、ぶっちゃけ全面的に信じるのは無理だしな」
「……最後のは言わなくてもいいのではないでしょうか」
「ははっ、お互い様だよ」
呆れたようにため息をつくセラノア。
アマネはそんな彼女に笑って返した。
本心では、やはりこの堕天使がどうにも好んで人を殺したと思えないのだ
罪があるのだとしても、それを知るのはこれからでいい。
契約した以上、一蓮托生だ。
だから今は──少しでも彼女を知ろう。
アマネはそう考えつつ、会心のオムライスを頬張るのだった




