Link.61 背後の声
堕天使であることを前哨基地の人にバラされたセラノア
その目線に中の罪架が刺激されたセラノアは倒れてしまう──
◆
「…………」
あぁ、またここですか
ふと目を開くと、足元は霧がかっていた
足を動かすと煙のように揺らいで巻き上がるものの、足元は一向に見えそうにない
暗く、そして白い
不思議と神秘さえ感じるこの世界には、彼女一人だけだった
『───貴方は、何者ですか?』
「…………私、は」
背後から聞こえる声
もう慣れ親しんだその声に、セラノアは振り返ることもせずに背中に感じる気配へ返答する
「………堕天使です。貴女は?」
『…………──です』
その声はノイズがかかったように聞こえない
またか、と息をつくセラノア
今まで、罪架に責められ続ける黒い空間と、
この謎の人物と話している白い空間
封印されていた間は、この二つを行き来していた
「今日は……声が聞き取りやすいのですね」
『ええ』
「それに、起きてからは初めて………久しぶりです」
『………………まだ、覚えてますか?』
唯一、この罪架は自分の中に宿る存在の中で、恨み言を吐くことはない。
罪架達のように焼けた顔が見えたことはなく、振り返っても背後にいるのだ
〈覚えている〉
普段ノイズだらけの『彼女』
セラノアには、何を言っているのか理解できなかった
「なにを、ですか?」
『【星を、俺は後何年見られるだろうな。見られなくなったら、───はお前に任せなければな】』
「───!」
ゆっくりと、説明するようにその言葉を口にした『背後の少女』。
記憶の片隅に残る、いつ言われたかもわからない言葉だった
「なにか、知っているのですか」
「…………」
「その言葉を、知っているのですか!?」
セラノアは感情的になって振り返る。
感情のままに叫んだ言葉は、霧がかった空間に消えていってしまった
『なぜ、覚えていないのに聞くのですか?』
「──大切だからです。なぜか、わかりませんが………知らなければ、いけない気がするんです」
『背後の少女』は悲しげな声をしていた
顔は見えていなくとも、俯き、暗い表情をしていることは容易に察せられた
いくら振り返ったとしても、その顔を見ることは叶わないのだが……
『………白い、蓮の花』
「……………?」
声が少し上から聞こえた気がする
上を見上げていたのでしょうか
意味深な言葉をぽつと呟いた『背後の少女』はそこからなにも話さなくなってしまった
霧がより濃くなり、視界を埋め尽くし始める
「──待ってください!まだ、聞きたいことが───!!!」
◆◆◆
「──っ!」
目を覚ますと、黒い天井だった
図書館よりもよっぽど硬いベット。
外からの喧騒で、ここがあの前哨基地の近くだとすぐに察せられた
「あら、起きたのね」
「………ユーフォルビアさん」
申し訳なさそうにセラノアは俯く
セラノアは人々からの目線に耐えきれず、気絶したのだ
それを覚えている。罪悪感を感じていた
「すみません。すぐに戻ってやり直し───」
「もう!真面目ね!安静にしておきなさい?」
「………ですが」
「取引とはいえ、最低限の人権は貴女にだってあるのよ」
それを聞いたセラノアは、少し驚いた
別に、人権を天使にもあるという考え方は珍しくないと推測する
しかし、それを言葉にして言われるのは、どこか新鮮だった
「………そうですね」
もう一度毛布を被り、ユーフォルビアはその様子に微笑んだ
「わかればよし!なのよ」
「早く治して、取引を公平なものにします」
「ええ、期待しているわ、セラノアちゃん」
探してもらうという条件付きだ
………私にはできないことをしてもらうのです
見合う働きを出来るように、ひとまず頑張りましょうか
セラノアは部屋から出るユーフォルビアの背を見ながら毛布を頭まで引き寄せていた
「リリスは考えなくいったわけじゃないの……けど、それがあなたのトラウマを刺激してしまったのは事実よ。許してくれるかしら?」
「いいんですが………本人が言うべきでは?」
「ちょっと忙しくて………ほぼ同じ内容で伝言を預かってるの」
「気絶して迷惑かけた側ですが煮え切らない人ですね………」




