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エンゲージ・リンク  作者: 花酔
第3章 広がる世界のカプリチオ編

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Link.57 side:ダーナ 違和感

襲撃後、目を覚ましたダーナ

腕の痛みと共に体を起こす彼には確かな違和感が心を蝕んでいた


◆


「───っ!」


目が覚めると白い天井が目に入った。

起き上がって周りを見ようとするダーナの手に、鋭い痛みが走る


「………そうか、あの時………!」


ダーナは朧げな記憶を辿り、いつこの痛みを患ったのかを思い出した


あの狂気的な堕天使の短剣で斬られたのだ

右腕をなんとか動かそうとしてみる。

しかし、どうやら反応はない様だった


「……………チッ」


右腕は包帯で見えこそしないものの、かなり深く斬られているのが感覚的にわかる。

痛みはない。おそらくそういう魔道具を使っているのだろう。右腕は機械が取り付けられている様に重かった


「………耄碌したか?俺は」

「………否」

「独り言だ愚図。割って入ってくるな」


まだ使える左腕で頭を抱える

漏らした言葉にどこからか現れた一人しかいない病室に鏡の天使が現れた


「アイツなんぞを助けて………この手が使えなくなるなんてな………チッ、お笑い種だ」


今にも苛立ちで狂ってしまいそうだ

しかし、それでも冷静さを忘れてはいない

その理由はただ──


「鏡、俺は勝ったのか?」

「………是」


恨めしそうに鏡の天使を睨むダーナ

頭を抱え、前傾姿勢のままなのでどこかその姿は側から見れば痛々しく見えるだろう

眼帯で隠された鏡の天使は、それでもわかるほど重々しくそう口にした


(代償は大きい、ということか)


右腕を見る

幸い、左利きのためペンを使うなどで左手が使えなくなるよりはマシだろう

そう考えていた


「あっ………起きたんですね………!」

「………お前は………」

「あっ、えと……アニスです」


扉が開き、アニスが水の入った瓶を持って入室して来ていた。

どうやらしばらく看病をしていた様だった


「………なんのつもりだ?」

「えっ?」

「…………敗者を笑いに来たのか」


鏡の天使に聞いたことは、その実自分に聞いた様なものだった


(あれは勝利とは言えない。制御を失わされ、結局奴らは行方知れずだ)


「クソッ……」

「その、そんなわけじゃ………ないです」


アニスはどこか悲しそうに椅子に座って話を続けた


「アマネ君たちが消えたって聞いて………その、ダーナさんなら何か知ってるかなって」

「………俺が遠くへ転移させた。以上だ」


(なぜこの女は出会って間もないあんなヤツを気にかけるのか……)


また少し苛立ちを感じたダーナは冷たく端的に答えた。

すぐにアニスの表情は驚き、喜び、悲しみ、困惑

様々な感情が混ざった様な、複雑な表情をしていた


「そう………ですか」

「………あんな情けないヤツ、なにがいいのだ」

「情けな──」

「情けない?どこがだ?」


ダーナの言葉に、アニスが反論しようとする

しかし、すぐに別の強気な声にかき消されてしまった


声の主人は、アニスの背後から現れ、わしわしとアニスを撫でて前に出たアニスの天使、ネメシアだった


「誰に対してもぺこぺこぺこぺこと………あんなヤツ、誰かに気に入られる権利もないだろう」

「………?そんなやつには見えなかったが……?」

「──そんなヤツだったのだ!!」


ネメシアの違和感とは裏腹に、ダーナは力を込めて叫ぶ

その覇気に少し驚くネメシア

競技中にも覇気はあったが、ここまでではなかった


「なのに………アイツは天使ができた途端、人が変わった様に傲慢になった」

「………」

「知らないんだよ………あんなヤツ。不気味でしょうがない」


ダーナの声には嫉妬と、苦痛と、困惑が混ざっていた

自分が落ち着いていない時に落ち着いて自分を宥めたアマネも、予選で頭角を現したアマネも、ダーナの話を適当に流すアマネも、見たことがなかったのだ


「…………アイツは、情けない人種だ。こちら側に立つことはないはずなんだよ………利(・)用(・)で(・)き(・)る(・)人(・)間(・)じゃなかったんだよ………!!」


ダーナは、動く左腕でベットを強く叩く

劣等感に苛まれた、痛々しい一撃だった


「…………おい」

「な、なんですか………?」

「転移後、どこに行ったのか、俺にもわからない。真実を知りたいのなら、ついて来い」

「へ………?どこへ………」


しばらくしんとした病室に、重く、かつ明晰な声が広がった

ダーナの目には、決意と不安があった


「俺の兄──『真実』の天使を持つ、シュピーゲル家当主の元へだ」

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