Link.49 とある堕天使の目覚め
ダーナの秘技によって窮地を脱したアマネとセラノア
しかし、一難去ってまた一難
転移させた場所はダーナですらわからないものとなってしまった
◆
ダーナによる転移後
とある森の中──
「………ひゅっ………ひゅっ………っ」
神経毒を喰らったセラノアは目の前が見えないほどに苦しみ、森の中で横たわっていた
地面は湿っており、雨が降った後のように感じる
が、そんなものを考察している余裕はなかった
(苦しい、苦しい、苦しい………!)
脳内はその痛みを隠して思考できるほどの余裕がなくなり苦しさで支配されていた
(助けて……………ください…………ア…………マネ)
だんだんとそう感じる意識すら白さを帯びて煙に包まれるような感覚になっていく
眼を開いたまま痙攣し、全く動けないセラノアは死を覚悟して涙を流していた
そして──意識を手放す直前、声を聞いた
「───あぁ、弟くんの能力か」
それは優しく、まるで森そのもののような声
その声だけで甘く酔えてしまいそうな安心感のある声は、セラノアの耳に途切れ途切れに届き、眠りにつかせた
「───堕天使………ね」
◆◆◆
「……………っ!」
ここ………は……
目覚めると、そこには木の根によって作られた天井があった
どこか夏にしては涼しく、湿気もないとても清涼感のある室内だった
「あら、起きたのね」
「!?」
しばらくぼうっと情報が追いつかないまま動かないでいると、突如左から声が聞こえた
あの眠る直前に聞いた声ではない、女性の声
「だ、誰ですか」
「ごめんなさい、リリスったら外に出たついでに貴女を拾ってきてしまって………私は「ユーフォルビア」。貴女を助けたリリス………あぁ、アマリリスっていうの!彼の契約天使よ」
なんとなく、口に出た言葉を出した後に整理するような話し方をする彼女──ユーフォルビアは少し困ったような表情でセラノアに語りかけていた
口元を白く薄い布で隠しているメイド衣装を着た天使だった
「アマリリス………?」
「ええ、歩けるかしら?会わせてあげるわ!」
ルンルンという効果音がつきそうなテンションでユーフォルビアはセラノアの手を掴んでゆっくりと移動し始めた
気遣っていることがよくわかる動きだった
「………その、ここの周りにアマネ………黒い髪の、眼鏡をかけた男がいませんでしたか」
「うーん………少なくとも私は知らないわね……あっ、そういえば堕天使さん、お名前は?」
どうやら付近にアマネはいないようですね
その主人たるアマリリスという………女性?に会えばもしかするかもしれませんが
セラノアはその返答に自分でもアマネを探ってみる。
魔力を送って届くかどうかの感触を確かめるのだ。
ただ、遠すぎるのか、その魔力を渡すパスが切れているのか、感触はなかった
「そうですか…………って、堕天……使………?」
ふと、そこでセラノアは一つの単語に反応して固まる。
反射的に手は顔に掛かるメガネに触れていたが、どうやら外していないようだった
「だ、誰のことでしょう……」
「ん?あぁ!警戒しないでちょうだい!安心して、貴女を害すつもりはないわ。むしろ、毒から助けてあげたのよ?」
「毒………」
記憶が戻っていく
確か、あの時毒を喰らって……意識が薄れていく中で確かあの小物の天使の権能で………
状況判断は記憶の想起よりも早く行われる。
アマネと離れた事実だけはわかっていたがその過程は今思い出したのだった
「さ、ここよ!リーリースー!堕天使ちゃんが起きたわよ!」
「………」
大きな木製の扉。
しかし、この建物かも不明な木に囲われた空間は、どこにもこの天使のマナが感じられる。
つまりこの天使が権能を使ってなにかしらこの空間に関与しているのだろう
……これほどの力を持つ天使の主人………
今は………アマネもいません。
気をつけなければ
「──開けるわよー?」
「っ………」
「───あーもう!!それは食べちゃぁダメでしょうって!!!」
扉を開けた瞬間、気の抜けた声が耳に届く
視界の先には、一頭の草を喰む馬を前に動き回る、奇怪な男性が立っていた
セラノアは男とユーフォルビアを交互に見る
……ユーフォルビアはため息をついて頭を抱えていた
セラノアはぎりぎり本来の転移座標近くに飛ばせた模様




