Link.48 鏡写世
毒にやられ、まともに動けなくなったセラノア
アマネに運ばれ、ダーナに守られて逃げていたものの、追いつかれてしまっていた
◆
「いいだろう、堕天使………今から、お前の1番嫌がることをしてやる」
そう言ったダーナはアマネたちに振り返って光線をまた数本放った
反射した光線はダーナと堕天使が接触しないように格子状の壁のようになって固まっていた
そう、あのゴーレムの光線のように
「今から二人を遠くへ送る──俺は気に入られなかったが、お前たちならどうなるかわからない。知らないし保証する義理はない。が、それが最善だ。……避けるなよ」
そう二人に話しかけるダーナは、その表情を曇らせていた
背後には二つの大きな、それも人が屈んでいればすっぽり全てを写しそうな鏡だった
気に入……?それに送るって……
「………!?待てェ!!」
後ろで堕天使が叫ぶ
どうやら意図を察した堕天使は光の格子を無理やり突破しようと体を焼きながらこちらに近づいてきていた
「チッ………化け物め………!さあ、心の準備をしている暇はない。………お前が生きなければこの戦いに意味はない。俺のために勝たせろ。いいな」
「──クソッかっこつけやがって………──すまん、頼む」
アマネはまたダウンしたセラノアを抱えながら、覚悟を決めてダーナの目を見た
ダーナは鼻で笑って堕天使に向き直った
「──俺も性格が悪くてな!!他人が嫌がることは大好きなんだ。………じゃあな『鏡写世』」
瞬間、アマネとセラノアはそれぞれの鏡へ入り、視界は暗転した──
◆◆◆
「ふふ、どうだ………!お前たちの目標は遠く遠くに消してやったぞ」
「………あ〜ぁ………つまんないねぇ、オマエ」
ふと、ダーナは瞬間ゾッとするような気配を感じる
未だに光の格子は突破されていない。
体半分ほどで焼かれながら話していた
(こいつ………痛みがないのか?少なくとも………正気じゃない)
「まぁ………?ヒヒッ、オマエ何したか覚えてるぅ?」
「は………?なにを──」
「さっきの煙ねぇ………幻覚を見せる毒なワケぇ……でさでさぁ?君、そんな状態でワープなんて高度な力使えるのぉ?」
「なっ───!?」
瞬間、鏡の出現場所を確認するダーナ
ダーナのワープは、諸事情で年に3回までしか使えない制御の難しい技だ
それも、精神を集中して場所をイメージしなければ無茶苦茶な場所に飛ばしてしまう
(幻覚状態にあったのか………!?ということは………──っ)
「観測…………できない………!?」
成功していればどこに送ったかは後で確認できる
それができないと言うことは、二人はそれぞれランダムな場所に飛ばされてしまったようだった
「───まぁ?軽度の幻覚毒だからさぁ……まだまともに戦えるでしょぉ?目標はいないけどオマエで我慢するさぁ……」
「なっ………っまだする気か!?」
堕天使は光の格子をついに破壊してしまった
まるで、できたけれど今までしなかったかのように
ただでさえもう負傷して人数も少ない。
一対一で勝てるとは到底思えなかった
「さぁ………オマエのもっと苦しんだ顔、見───」
瞬間、堕天使はぴたりと動きを止めた
ダーナは何が起こっているのか理解できないが、ちゃんとばかりに後ろへ全力で走り出した
「おぉい、待ってよぉ?」
「なぁっ!?」
ただ、次の瞬間には目の前に堕天使は躍り出ていた
ただ、わかる。これは権能ではなく素の身体能力だ
きっとネメシアにもこれくらいはできるだろうとダーナはわかっていた
「まだ終わってな──っ!!!?」
「っあっつ!?」
目の先まで堕天使の短剣が近づく
瞬間、堕天使とダーナの間には青い炎が視界を埋めていた
「大丈夫!?」
「っ………」
階段から数人の先生が降りてくる
どうやら戦闘の音を聞きつけたようだった
ダーナは呆然としつつ、その光景にほっとした
しかし、すぐに一つの声によって緊張状態へ戻される
「あぁつまんないなぁ………つまんないよぉ。仕方ないなぁ、呼びがかかったから帰るよぉ………は〜ぁ………オマエ、顔は覚えたよぉ………また遊ぼぉね」
その一言を残すと、ふっと堕天使は姿を消してしまった
その場に残るのは、焼けた臭いと滴る血の音だけだった




