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エンゲージ・リンク  作者: 花酔
第2章 巡る思惑のカノン編

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Link.45 ムジカ・レッジェラ

突如認識外から現れた堕天使と契約する犯罪組織「デザイア」

混乱に包まれる会場の中でアマネ達とは別に戦う者がいた


◆


響楽ドーム・3階実況席


「………──ロォォック!!!」


一際大きな地面を揺らすほどの声を上げる軽音楽部顧問、音楽教員のムジカ・レッジェラ。

それはただの奇声ではなく、相棒の名を呼んでいた


彼も教員であり契約者。

背後から現れたのはただでさえ背の高い褐色のムジカと似た褐色長身の男天使だった


「チャオ(やぁ)、侵入者?」

「──準備はいいか?レディ」

「ふふっ、もちろん」


対して相手の女性は白い髪のポニーテールで、黒いマスクをつけた女性。

マスクで隠されているものの、その口角は不気味に上がっていることがわかった


「教員様がどんな強さなのか……私(わたくし)まだ知りませんの!」


瞬間、天使も出さずに侵入者は肉薄して来た


「はっ、安直だぜ(レッジェーロ)」


瞬間、地を鳴り響かせる重い音が鳴る

侵入者が次に見たものは、床だった


「───」

「真のロックは、楽器なんて自分で作るんだぜ」


侵入者が這いつくばったまま上を向くと、彼の天使の周りには──ド(・)ラ(・)ム(・)が(・)あ(・)っ(・)た(・)


(あぁ、あぁ!斬新な権能!面白いですわ!)


ロック。それこそが彼らの権能だ

ドラムの音は、音楽は、彼らの武器になる


契約天使であるロックの髪の白い部分は銀色に輝き堂々たる姿は一流のロックミュージシャンを想起させた


「こちらも名乗らせていただきますわ♪私(わたくし)はロトス・ゼーンズフト。──悪い悪い新(・)「人間(ヒューマン)」様の新しい一部下ですわ」

「"人間(ヒューマン)"ン……?はっ、そんなコードネームよくつけるぜ」


(人間……ってのは幹部か?デザイアにもそんな位があんのか……ってかゼーンズフト……聞いたことがあるな)


ムジカは少しの思考の末、それについて考えることを切り捨てる。

今考えても生きて帰らなければこの情報は持ち腐れだからだった


「オーケーレディ。せっかくだ。ノってけ」

「ええ、悦んで?」


その言葉を最後に、その部屋には"音"が満ちた

背後に座る天使のドラムに、その権能で作られたギターを持つムジカ。

二人のセッションはロトスの耳を大きく刺激し、体を、室内を、軋ませる凶悪な音(・)圧(・)を放っていた


「っ………ふふっ、ふふふっ!そのドラム、叩く場所によって効果があるのですね」

「……!」


(案外法則性は気づかれにくいモンだが……耳がいいのか?聞き分けて気づいたか)


ギターを弾きつつ、歯噛みするムジカ

ただ、理由は見抜かれただけではなかった


「レディ、なんでそんなに傷が浅いんだ?」

「ふふっ、無意味な質問ですわ。鍛えてますの。そういう貴方こそ、初めのバチはどこへ?」

「はっ、all(オール)-rounder(ラウンダー)。一流の楽器弾きならせめてバンド楽器は全て使えるモンだ」


二人のセッションは激しさを増す。

バスドラムの深い音が響けば、ロトスの体は下へ沈む重力を感じ、スネアドラムが鳴れば不可視の斬撃が彼女の白い肌から赤い血を滴らせる。


しかし、決定的なダメージにはなり得なかった


「そろそろリードしても?ジェントル」

「遠慮したいところだな……!」


瞬間、ロトスは魔法「収納」で取り出した大鎌を振りかぶってきた。

突如現れた予想外の武器に驚きを見せるが、ムジカはギターを鳴り響かせ、"音の障壁"で防御した


「まぁ便利!」

「ここからが本番だろォ!?ロォォック!!!ローーーーーーrrrrrrrルッ!!!」


ギターの旋律に合わせ、ムジカは魔法を無詠唱で発動させる。

技名を言わずとも発動する無詠唱はそれなりの熟練が必要な技だった


ロトスは鎌に炎を付与し、その魔法のことごとくを撃ち落とし、肉薄のために音圧に逆らって前進する

ムジカが叫ぶと言葉はいらない、とばかりにロックはドラムロールを開始した


「───っ!!!」


突如、ロトスは体に満遍なく感じた"痛み"に進行を止めた

全身がまるで風の刃に切り裂かれ続けているような傷が無数に現れ始めたのだ


「なんて荒々しい……!」

「褒め言葉サンキュウレディ!テメェも大概だ。誰一人傷つけさせはしねぇよ」


実は、ロックの権能はドラムのみの演奏、それも無茶苦茶な叩き方では効果すら発動しない。

"音楽"を奏でることで効果は現れ、二人以上でセッションすることにより効果が伸びていくという代物だった


(二人(デュエット)じゃぁレディをやりきれねェか)


少し苦い顔をしたのち、誘導の作戦を練ろうと思考を巡らせる。

しかし、次の瞬間──トンッ、と軽い音が聞こえた


「あっ、認識してなきゃバリアはないんですね」


胸から熱いものを感じる。

ライブの熱などよりも冷ややかで、そして鋭いものが胸に刺さっていた


相手は、ムジカにとっては、先生にとっては馴染み深い服装で───

ロトスとは違う刺客。

有名なため、声も姿も見たことはあった。

授業もしたことがある。

しかし──


「まぁっ、『人間』様!?」

「───お疲れ様です。ロトスさん」

「テメェ………は………!?」


体に力が入らず、地面に倒れ伏すムジカ。

そのままの姿勢でなにか血ではない液体(黒い毒)を垂らす短剣を構えた青年の名を、ムジカは知っていた



「───ルピナス・モータル………!?」


「何度か授業でお会いしましたね。けど、もう会うことはないでしょう。──"終止(フィーネ)"です」



中世的な少年は、ただ冷たい表情で

この戦いに終止符を打った

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