Link.43 視察
第一競技を最速突破したアマネ達
2人で向かった場所は響楽堂の地下にある楽屋のエリアだった
◆
『ダァァァァナ・シュピーゲルゥゥゥゥ!!!』
「うわうるさっ」
地下の廊下の所々に存在する中継の小さなモニターから大きな声が響く。
白髪で背の高いイケメンな男がどうやら中継を通じてダーナに叫んでいるようだった
『貴様っ………なぜ!!!私が落としたのに先にゴールしているのだ!!!』
2番目に到着した彼は、どうやらダーナに恨みを持ってあの橋を落としたようだった。
近くに浮く天使は足まで実体化しているのに浮いている。
風属性の天使のようだった
「あぁ……権能の風だったのですね」
「ん?どゆこと?」
「私たちを落としたのは透明な風だったんです。悪意があったので人為的なものであるのはわかっていたのですが誰の何かまではわからなかったんです」
エルツ教授曰く、一般的な風魔法は少し緑がかっているため不可視の攻撃ではない。
しかし、あの風は完全な不可視で魔力、マナのどちらかを感じることしかできなかった
魔法の完全上位互換である天使の権能であれば納得だった
「なるほどな……まあ結果的に一位でゴールできたんだ。感謝だな」
「ふふっ、ですね」
もちろん、その行為は褒められたものではなく、その発言も確実に悪い印象をもたらすものだ
……あいつ、結構な人に反感買ってたんだな
まぁ………納得か
「あっ、この辺りからは先ほどの地下が見えやすぜ」
「おぉ〜!!こんなふうに見えてたのか!」
「ど、どう言う技術でしょう……私たちからは見えないのにここからははっきり地下が見えます……」
さながらそういう博物館に来たようなハイテンションで第一会場の観光をする二人。
まだ全員がゴールしていないため次の競技までの時間はあった
「モニターの魔道具と同じ類のものですねぇ。地下の映像をさながら本当に見えるように貼り付けてるんです」
「ほぉ………!」
結構その話って裏の事情では……?
と思ったもののセラノアは目を輝かせて楽しそうなので気にしないことにした
苦笑するアマネを察したのか、スタッフは近づいて耳打ちしてくる
「そういえば、この地下にはお土産屋もあるんですよ。天使さん、魔道具に興味がおありでしたらそこに行ってみやせんか?」
「へぇ、ってことはそこに魔道具も売ってるの?」
「はい!」
魔道具には俺も興味がある
発想の引き出しを増やすことにも繋がるしな……
行ってみるか
「ノア、ちょっとお土産屋行ってみようぜ」
「えぇ……もう少し見ていてはダメですか?」
「後でまたこれるからさ」
少し名残惜しそうにしつつ、一同はスタッフに連れられて地下のお土産屋に向かった
◆◆◆
「おぉ〜!!お菓子に魔道具に……服」
アマネがそのラインナップの多さに驚くと、嫌な予感のするものが目に入った
「アマネっ!あれ──」
「はいはいノアは何も見てない!見てないからな〜!」
「やですよ服がありました!アマネの服も見てあげますよ!」
結構なラインナップあるから休憩時間削れるでしょーが!
セラノアの目をアマネは手で覆って捕獲する
話せば今にも服エリアに向かいそうだった
「ふふふっ、天使さんは服に興味があるのですねぇ」
「いやぁ……はは、お恥ずかしいところを」
「恥ずかしくなんてありませんよアマネ!普段地味な格好をしているのです。多少いい服を見ておくだけでもいい経験ですよ!?」
どんっだけ服好きなんだ!
笑いながら呆れて捕縛を強める。
「かーいーまーせーんーかーらーーー!」と捕縛されながら呻くが無視した
スタッフさんに笑われて少し恥ずかしそうにアマネは笑った
「おや、こんなメガネなどいかがですか?」
「はは、そんなパリピメガネあるんだ……」
「へぇ、そんなものがあるのですね」
「天使さんはご興味が?ぜひつけてみては?」
スタッフがどこからともなく星型の蓋をしたなんとも陽気なパーティー用サングラスを持ってくる。
それに苦笑するアマネだが、ふと気づいた
「あっ」
「ん?……っあ」
どうやらセラノアも気づいたようだ
少しメガネを外しかけたところで急いでやめる。
セラノアのメガネは「黒い天輪」を隠すためのもの
外せばその正体がバレてしまうのだった
「おや?つけないのですか?ぜひぜひ」
「い、いえやめておきます」
「ふむ?そうですか」
少し、スタッフが妙な空気を纏った気がしたが特に気にしないことにした
「………すいやせん、少し呼ばれているようで失礼しやすね」
「え?あぁ、はい!ありがとうございました」
「楽屋へはここの階段を登ってすぐです。どうぞごゆっくり」
突如、スタッフは恭しく礼をして笑顔で持ち場に戻ったようだった
少し違和感を覚えたものの、特に気にしなかった
──特に気にしなかった
「あっ、こっちにもいい服がありますよ!アマネ!」
「なぁ、セラノア、そろそろみんな帰ってくるだろうし上に行こう」
結局、しばらく服を見た後二人は自分たちの楽屋に向かうことにした
ただ、ふとアマネがつぶやく
「あれ?そういえば……どうやってここに来たんだっけ?」
「それは………あれ?どうしてなんでしたっけ?」
◆◆◆
???
「やあ、おかえり」
「ただいま戻りやした」
そこは、とある楽屋の一室
誰も使わない、使う人のいなくなった楽屋で一人の少年が一人の男に跪かれていた。
「それで?どうだった?」
「ええ──彼とその天使は……」
跪くその男──そのスタッフは顔を上げて顔を愉悦に歪ませた
「──拙者らと同類でしょう♪」




