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砂海に落ちた一行
そこでアマネはアニスとその天使、ネメシアに出会うのだった
◆
「砂漠なのに不思議……空気中が湿っててあんまり喉が渇かないですね」
「ほんとだ、気づかなかった」
しばらく砂漠を歩くとふとアニスが呟いた
確かに、この砂漠は妙に空気中が湿っており、喉の渇きが本物の砂漠と比べてかなり抑えられているようだった
学園の試験だからか、環境だけは少し優しい。
体力は奪うくせに、死ぬほどではないよう調整されているらしい。
「体力は消費されるけどな……あとは火の魔法はシケそうだ……」
「シアちゃんもいつもよりも落ち着いてるのはその影響だと思います……」
「はっ!この俺様が環境程度で変わるか!」
そう強がるネメシアだが、どうやら確かにアニスの言う通りのようで、一歩後ろを歩いて話しかけられた時以外は静かにしていた。
敵がいなかったり、特に大きな事件がないというのもあるだろうが、それでもその強気な言葉とは裏腹に、湿った空気のせいかいつもの勢いは少しだけ鳴りを潜めていた。
「ってつまり火属性の天使なんすね」
「あっ……え、ええとっ、忘れてください……!」
一応、ここを抜けてゴールでき、最後まで勝ち抜けば個人戦が待っている。
敵同士になるため情報は大事なものだった
どうもこのふわふわした小動物のような少女は警戒心が足りないらしい
「すごいですね……アマネくんは天使の……えっと、セラノアさん?に権能を一切使わせてないまま来てて」
「あはは……」
その実使えないのだがそう言うことにしておいた方が都合がいい。特に訂正することもなくアマネは誤魔化した
「──ん!?」
「きゃっ!?」
瞬間、地響きが砂に響く
さらさらとした歩きにくい砂のはずだが、すべてが一体となって揺れているようだった
そして、その後すぐに奥の方に何かの光が煌めいたのが見えた
「危ない!!」
「えっ?きゃぁっ!?」
咄嗟にネメシアを押し、アニスごと地面に倒れ伏せる。
その瞬間、アマネたちの頭上には一本の光線が飛んできていた。
「この魔法は………」
「たぶんアイツだ……けど威力が段違いだな……!?」
さっきまでは全力を出していなかったのか?
そんな考えが浮かぶものの、彼が何かと戦っていることは確かだった
「何かと戦ってる!急ごう!」
頬に汗を伝わせ、アマネたちは音のする方へ向かった
◆◆◆
落ちた直後──セラノア方面
「っ………ここは……」
起き上がったセラノアは手に触れたさらさらとした砂の感触を確かめ、周囲にアマネがいないことを確認した
……っ……アマネは無事でしょうか
………よかった、まだ魔力を受け渡せる。
生きてるんですね……
他に人は……
セラノアはアマネに魔力を供給してみて、安否を確認する
教科書にも載っている天使側からの安否確認の方法だった。
もちろん、本人はこの時気絶しており送られてきたことに気づきもしないのだが……
アマネ以外の人間や天使がいないか、セラノアが周りを見始めるとふと後ろから声がした
「……契約者を探しているのか」
「ひゃぁっ!?な、ななっ、なんっ、誰ですか!?」
後ろから響いたプライドの高そうな声に驚き後退する
しかし、顔を見れば見慣れたものだった
「あぁ……小物ですか」
「誰が小物だ。チッ……主人も主人なら天使も天使だな。無礼な奴等め」
後ろにいたのはダーナ、そして鏡の天使だった。
「はぁ……しかし一体なにがあってこんなことに……」
「どうやら吹き飛ばされたようです」
「吹き飛ばされた?」
セラノアは崩れる瞬間、その術を見ていた
普通、一般的な魔法の風は少し緑がかった色が見える。
しかし、セラノアたちの吹き飛ばされたあの風は完全な透明。
人間と比べてマナに敏感な天使たちはその風を感知できたのだ
説明を終えると、ダーナはあぐらをかいて座り、考え込んでいた
「あれだけの暗闇でよく見えたものだな……それに、敵も通れなくなったはずだろう」
「そうですね。貴方に恨みでもあったのではないですか?」
「はっ、この俺に?心当たりがないな」
セラノアの言い分に軽口で答えるダーナ。
鏡の天使はただ後ろで佇んでいた
「仕方がない。鏡の。蝋燭を出せ」
「………」
「やはり便利ですね。それ」
セラノアが感心するそれとは、ダーナが鏡から取り出した蝋燭だった
鏡の能力を持つ天使の鏡の天使。
反射する能力は基本だが、鏡に保存する能力もあったのだ。
これは走り出す前に収納しておいたものだった
「……ふむ」
「おや?火が上へ向きませんね」
ダーナとセラノアの両方が、火の粉の向きは上へ向くと思っていた。
なぜなら橋の先にはゴールがあると思っていたからだ。
これは休憩中に検証していたもので、座標を高くするとしっかりと火の粉は下に向いていたのだ
「──つまり、この砂漠にもゴールがあると言うことか」
「ですね。まずは合流しましょう。それから──」
そこまで言い終わった後、セラノアはダーナに手で制されていることに気づいた。
ふと、ダーナの表情を見ると、額に汗を滲ませ、焦りを見せていた
「なにを──っ」
「気をつけろ。主人がいないからと言って戦えないわけでもないだろ。っ……悪いが俺にとっては……」
ズッ、と体がなにかに押し潰されたかのような錯覚を覚える。
プレッシャーが空気を重く、重力を感じられるほどに重く錯覚させていた
3人の目の前に暗闇から現れたのは──
一つの、鉄のゴーレムだった
「──相性、最悪だ」




