Link.29 裏の茶会
なんとか先輩の「試験」を突破し、森を抜けてゴールに辿り着いたアマネたち。
しかしどうやら「先輩」の思惑は別にあるようで──
◆
「はぁっ……はぁっ……つ、疲れた………」
「お疲れ様……です」
二人とも土の地面にしゃがみ込んで肩で息をする。
会場の入場口は天井が低く、後半は全力で走るしかなかったのだ
「けど……っしゃあ!合格!」
「やりましたね……!」
少し後ろで自分よりも後に来た人が止められている。
どうやら2人はギリギリ間に合った最後の合格者のようだった。
アマネは地面に座って楽な体制をとっていた。
周りを見ると何人かは同じようにして体の疲れを緩和させていた
『さぁて!合格者は揃った!!ここから1時間、昼休憩とするぜ!!その後は第一競技……『地下対抗チーム戦』をお送りするぜェ!!』
森にいた間は聞こえていなかった司会は聞けば少し安心感を覚える。
………本当に、予選を突破できた………のか
目の前の景色が少し、現実味がないな………
「………」
「……ふふっ」
「な、なに?」
「ニヤけてますよ。そんなに嬉しいのですか」
そうセラノアに指摘されて、口を片手で覆う。
それをじっと見られていたことに恥じらいが生まれてセラノアから目線を逸らした
「いやっ……仕方ないだろ、嬉しいもんは嬉しいだろ……」
「別にダメとは言いませんよ?しかし……案外可愛いところもあるじゃないですか」
「うっせーよ!」
セラノアはぴょこぴょことアマネの眼前へと移動して悪戯っぽく笑う。
アマネは限界に達して顔を赤くしながら、自分の顔が見えないよう、セラノアの頭をぐいっと押さえた。
昼休憩が入り、第二会場の中にある食堂に向かう生徒たち。
二人も人の流れに紛れ、食堂へ向かうのだった
◆◆◆
「いやぁ楽しかった!!」
「どうやら満喫したようですね」
とある高級そうな一室。
ドアに入ってソファにがさつに座る女生徒。
ゲート前で門番のようなことをしていた女生徒であり、四年生の彼女は第二会場ではない場所にいた
「主催側は初めてだったけどいい経験ができたよ!」
「それで、どうですか?見込みのある生徒はいましたか?」
「いたよいたいた」
長い金髪の女性は女生徒にその丁寧な口調で尋ねる。
緑髪の女生徒は嬉しそうにそう言うと指を一本立てて自慢げに語り始めた
「まずやっぱりアタシのバリアを破る子はいいね。権能がそもそも強い子は見てて楽しい」
「あの3人ですね」
「そうそう」
相手の女性は優しい微笑みでその女生徒の話の続きを促す。
その胸元には、銀色の樹のマークの紋章が輝いていた
「あ、あと!」
「?」
「最後の子。あれはすごいね!」
女生徒が楽しげに語る。
しかし、体をソファに預けてだらけながら話していた先ほどとは違い、体を起こして金髪の女性の目を見て話していた
「正攻法でクリアしたのもいいけれど……魔法で穴を開けられた」
「というと?」
「アタシの魔法、痺画と風撃と特に強度を高めた(・)障壁の合わせ技なんだが、それらを順々に解除して、挙句言霊も使って攻略されたんだ!」
自慢げに、かつ自信満々に自身の攻略された経緯を話す女生徒。
最後の言葉に、相手の女性はぴくりと反応を見せた
「言霊……ですか」
「そうそう。アタシは滅多に使わないけどね。あれは消費量が多すぎてカツカツになってしまう」
「私でも滅多に使いませんよ。その生徒の名は?」
あくまで優しげな笑顔を保ったまま、身だしなみの整った美しいその女性は目に興味を宿していた
「──アマネ。貴族でもなんでもない一生徒。かつ落ちこぼれだという」
「ふむ、あなたがそこまで評価するのです。覚えておきましょう」
秘密の茶会は、1時間の昼休憩の間に幕を閉じた。
部屋から出ようとする女生徒に、女性は最後に言葉を投げた
「27人。選定としては悪くない数字ですね。いい塩梅です」
「でしょう?あなた様に褒められるのは嬉しいものだね。──セフィロトの樹の『光冠』殿?」
「私こそ光栄ですよ。重複魔法の天才さん」
「肩書きの響きで負けてるね。それも当然ではあるが!あははっ、それでは失礼」
二人は目を見合わせて笑い合う。
女生徒が出て行った後、女性は薄く笑って独り言を漏らした
「………十分いいものは見れましたね。帰るとしましょうか」
誰に話しかけているのか。
そう呟いた女性は、椅子から立ち、一歩を踏み出すと少しのノイズを残して消えてしまった
天使のいない落ちこぼれだったからこそ、隠れていた特性
ゆるやかに、彼の幕は上がり始めていた
体育祭に、そもそもサポート系権能持ちは大体出ません
そしてそう言う人たちのために文化祭があります




