Link.26 ギブアップ
突如蜘蛛に襲われたアマネ達
セラノアは蜘蛛が苦手で気絶してしまう
なんとか抜け出したものの次に待つのは──
◆
「はぁっ……はぁっ……苦手なら、先に教えてくれよ……」
「きっ、聞かれなかったんですからしょうがないじゃないですか!!」
「じゃあ今聞くよ何が苦手……?」
風撃の直撃した背中をさすりつつ、ぜーぜーと肩で息をしてセラノアに質問するアマネ。
少し呆れつつも笑ってそう問うアマネにセラノアは目を逸らして答えた
「いっ、言いません」
「いや言ってくれよ!対策のしようがないだろ?」
「うっ……だ、だって……」
「俺は絶叫系とか虫とか辛いのとか!?パッと思いつくのはこんな感じ!さあほらセラノアの番!」
「うっ……ううぅ……」
今までになく申し訳なさそうにかつ恥ずかしそうに縮こまるセラノア。
それに若干疲れでテンションのおかしいアマネは投げやりにそう言って答えを促した
「………笑いませんか?」
「面倒」
「はぁ!?そんな言い方ないじゃないですか!」
「笑うわけないだろ?当たり前」
「あぅ…………ぉ……です」
アマネの投げやりな言葉に少し目を丸くしつつ、怒って怒鳴るセラノア。
しかしすぐに目を逸らしながら小さな声で言った
「なんだって?」
「ぉ……オバケ、です」
「あー、ゴースト系のが苦手なんだ。あとは……虫か」
「へ?」
「ん?」
セラノアが驚いたのは反応が柔らかいものだからではない。
驚かなかったことでも、笑わなかったことでもなく──
「オバケの悪魔がいるのですか!?」
「え?いるでしょ?ゴースト系」
「なっ………」
レミニセンスの時代には悪魔の種類はまだ少なかった。
それこそあの廃墟から出た猪の様な動物系ばかりだったのだ
進化を、遂げているのですか……!?
「………泣きたくなってきました」
「大丈夫。苦手なら俺が相手する。だから気絶はしないでくれ」
「………アマネ、疲れている時の方がかっ……んせいが達観しているのではないですか?……ずっと疲れててください」
「やだわ!?」
ジト目で指摘しようとしたセラノアは自分の言う言葉がどんなものか認識して初めて言葉を止め、目を逸らしながら毒を吐いた
それに対してアマネは余裕が出てきたのかハッと笑って答えた
「ちょっと休憩しよう……それが終わったらもうここから脱出しよう」
「わかりました」
二人はひとまず近くの木に背を預け、休むことにした
◆◆◆
「うはぁっ!?ここらへんすごいな!?」
「ゴールが近いんじゃないですか?」
休憩後、ある程度歩くと獣型の魔物が多く現れるようになってきた
セラノアは基礎魔法の球系の魔法で応戦する。
ただ倒すまではいかず、なんとか逃げている状態だった
「──愚図が!!!テメェなんぞの手を借りなくても───」
ふと怒号が聞こえた。
そちらの方にゆっくりと歩んで行くと、人間が3人、天使が3人いてそのうちの一人が尻餅をついていた
「なにをしているので──むぐっ!?」
「しっ……あ、ごめん……ちょっと聞こう」
茂みで話を聞こうとしたアマネの後ろから普通に歩いてこようとするセラノアの口を塞いで一緒にしゃがませた
「──てめぇがポイントを取ってどうすんだよ!!」
「いやだって今取っていいって──」
「言ってねぇだろうがよ!!」
「そ、そんなぁ……」
どうやらいじめられているのかパシリの様にされているのか、弱い一人のやらかしを2人で、否天使含む4人で2人を攻めている様だった
『助けますか?』
(…………正直助け……たくはないな。戦えない俺たちが出る幕はあんまない。厄介なことになるだけだ)
『わかりました』
(死にはしない……はずだから)
ふと、セラノアからすれば意外な選択をするアマネ。
アマネ的には、他人を見ることは、チャンスを探ることと同義だった
証は一度誰のものでもない状態でドロップされるのが特徴であり、相手が何かを倒せばその時だけは奪うことができる
(それを奪えたなら、ヘイトを俺に向けることもできるか)
『……ふっ、言っていることとしようとしていることが無茶苦茶ですね。いわゆるツンデレというやつですか』
(………どの口が)
助ける気こそないが、横取りをした結果怒りがこちらにだけ向くのは構わないと思っていた
……根本的に助けられなくてごめんな
でも、他人を気遣えるほど今余裕はない
成したいことがはっきりしているアマネは少し冷酷だ。セラノアはその様子に驚きを感じつつも自分もその性質なので黙認した
胸糞の悪いなにかを感じつつ行動に移そうとすると、ふと異変に気づいた
「こんのっ……あぇ……?」
「ぁ……へ?かん、かくが……」
「………ひっ………!?」
突然、前方の3人全員がまるで何もない場所で転んだ様に後ろに落ちた
否、落ちたと錯覚する様な倒れ方をしたのだ
「ぉ……おい、なに……が……うおぇっ……」
平衡感覚が狂っているのか、立ちあがろうとして失敗するリーダーらしき男。
その時だった。
倒れた三人の背後で、霧がゆっくりと揺れる
「っ……っ……リーダーっ……やばい……!!」
「ま……て……なんっで……立ち上がれないんだよ……!?」
全員がその影を見る。
まるで大岩のような巨躯が視界を覆い、その上に光る虹色の目が感覚を狂わせていた
その「影」はゆっくりと大きな翼を広げた
「蝙……蝠………!?」
あたりが妙に静かになり、注意して聞いてみると耳障りな高い音が聞こえる。
アマネは急いでセラノアの耳を塞ぎ、全力で走り出した
「『軽量』ッ!」
「にゃっ!?ちょっ!?アマネ!?」
突然顔をアマネの胸に埋める形で耳を塞がれたためなにが起こっているのかも分かり切っておらずただ混乱していた
「た、助けっ……」
「ぎ、ギブアップ!!!」
背後で声が聞こえる。遠くなる声でも、一際宣言は大きく聞こえた
瞬間、背後で轟!と強い音が響き、蝙蝠が一瞬で炎に包まれる
「──ほいほーい。大丈夫か?」
「は、はい………」
「でも君らはギブアップだからね。大丈夫?」
「はい………」
空から現れた先生の一人がそう言うと、3人を抱えて一瞬で消えてしまった
ギブアップを宣言すると、どうやら先生の救助がすぐに入るらしい
「………助かった?」
少し遠くまで走り、振り返るとアマネは背後の森が燃えていることに気づいた。
すぐに火は消えたものの、悲鳴も音波も聞こえない。つまり危機は去ったということだった
「んー!!んーーー!!っぷはっ……強く押し付けすぎです!!殺す気ですか!」
「あ、ご、ごめんノア」
勝手に軽くされて耳も目も塞がれたまま運搬されたセラノアはご立腹な様子。
しかし、アマネとしてはあれほどゾッとした相手は初めてだったのだ
きっとあいつだけじゃない
証は大事だが……
あれがボスモンスターだとするなら
「そろそろ潮時だな」
「はぁ……それは認めますが走る時念話で答えるくらいしてください……」
「はは……ごめんごめん」
しかし、最悪が起こるよりは良い。
アマネとセラノアは証集めを切り上げ、ゴールを目指すことにした。
残り時間は、あと1時間




