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エンゲージ・リンク  作者: 花酔
第2章 巡る思惑のカノン編

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22/92

Link.21 大会前夜

魔法実践学にて、火球の習得に苦戦するアマネ

アマネは魔法の感覚をエルツから教えてもらい、だんだんとその感覚を掴んでいくのだった


◆


〜十数日後〜

大会前夜


「よし、準備はできたな」

「はい」


夜、アマネは一通りの準備を済ませ、目覚まし時計をセットする。

絶対に止めるなよ!とセラノアに釘を刺し、お風呂に入る準備を始めた


「今日は先後どっちがいい?」

「ではいつも通り先に」

「はいはい」


そう言うとセラノアに廊下の道を譲り、アマネはまた準備に抜けがないかを確認しにリビングへ戻った。


1ヶ月と数十日。

温度はすっかり半袖に適した気温になり、アマネとセラノアは二人分の服を買いに行くこともあった


「……あれはなかなか驚いたな」


なんてったってあのノアが目を輝かせてとんでもなく長い時間居座るんだから……


結局、いつの間にやら両手は紙袋でいっぱいになった。

バイトはゼミにも部活にも入ってなかった分多く入っていたので多少なりともお金はあるのだ

もちろん、生活の大半は……


ふと棚にある通帳が目に入る。


「はぁ……生きてんならどこにいるんだか」


アマネは一人暮らしである

否、前まで一人暮らしだった


理由は両親が契約者(エンゲージ)としてどこかに行ってしまったからだ

行方不明で目撃情報すらない。

資産は引き継がれていて特にお金には困っていない。


「まあそれでも無駄に、無闇に使うのは気が引けるからな」


そっと引き出しを閉じるとアマネは考えるのをやめた


考えたとしても悲しい気持ちが増える上、すでにある程度は受け入れていた

それに今は──


「上がりましたよ……ってなんですかその顔」

「へ?変な顔してたか?」

「……まぁなんだって構いませんが。無理は禁物ですからね」


お風呂上がりで湯気立つ髪を拭きながらリビングに来るセラノア。

目のやり場に困ると思いつつできる限り見ないようにして言葉に応じる


「心配してるのか?」

「はぁ?そんなわけないでしょう。死なれては困るのです」

「はいはい」

「くだらないことを言っていないで、早く入ってきてください」


まるで相手に言い聞かせるように伝えるセラノア。

その様子に仕方ないなと笑ってお風呂へ向かった


「………もう、目の前で失いたくないのですよ」


◆◆◆

「ふぅ……」


お風呂を出たアマネは部屋に戻ろうとすると、一本の電話で足を止めた


相手はルピナスだった


「ん?珍しい」


特に何も考えず、友人からかかってきた電話に気軽に出た


『あ、繋がった?こんばんは、アマネ』

「こんばんは。どうしたんだ?」


繋がったと同時に緊張するようなそれでいて落ち着こうと見せることが伺える声が聞こえてきた

アマネはそれを察しつつも笑って挨拶(こんばんは)をした


『いや、明日って体育祭でしょ?』

「もしかして……!」

『あっ、いや僕は出ないよ!?』

「そっかぁ……去年は一緒に出て惨敗だったもんな……」

『あはは……流石に落ちこぼれ二人じゃどうしようもなかったね』


ふと電話の向こうから水音が聞こえてきた


「ん?風呂いんの?上がってからかければいいのに」

『あはは、恥ずかしい話君が出るって聞いたから緊張しちゃって』


彼の家は知らないが木々の掠れる音が電話越しに聞こえる。

自然の近い風呂場なのだろうか


「はは、気にするなよ。優勝を目指すけど、できるとは……はぁ、思えないな」

『弱気だね、珍しい気がする』

「そりゃぁな。去年のもあるし、せめて優勝を目指すって言わなきゃ自信すら無くすんだ」

『自己暗示ってやつ?』

「だな」


言われて初めてアマネは思っていたよりも弱気でいる自分に驚く。

それでも違和感はなかった。

当たり前だ。条件は最悪。

権能と経験のデバフのかかったまま大会に挑むのだから


『……僕、どうしたらいいんだろうね』

「……俺は知らない。天使のことは俺も偶然だから」

『はは、正直。そう言うところはほんと清々しい』

「下手な慰めなんか一番しんどいのは知ってるからな」

『………そうだね』


アマネは電話をしつつリビングに移動する。

セラノアは一瞬こちらに話しかけようとしたが電話をしていることを察して部屋から出ていった。

歯磨きでもしにいったのだろう


「ルピナス、なんていうか……偉そうに言うつもりはないけど……待ってるからな」

『………はは、それ結構危険(フラグ)じゃない?』

「だから保険かけたろって……はは」


窓を開け、柵に手をかけて月を見上げる。

恥ずかしさで熱くなった体が夜風で冷やされていく


「明日は勝……がんばるよ」

『ふふ……君は本当に保険が好きだねぇ』

「はは、うるせ!勝つ自信ないから勝つとは言えないんだよ」


シリアスな雰囲気が一転、笑い合う二人は明日をそれぞれ見据えていた

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